2004年1月第2週

年が明けて、早くも半月。心なしか日も長くなりました。

隔週の方には、あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。

おだやかな三が日が終わると、寒波の襲来。畑は毎朝、一面霜に覆われています。野菜も表土も砂糖をまぶしたように白くなって、ホウレン草や小松菜も凍りついていますから、葉先に触れるとガラス細工のように崩れてしまいそう。でも、日が高くなるにつれ復活し、また青々とした姿になるのですから、その生命力には敬服。しかも霜にあたるごとに、野菜はやわらかく、甘みを増してくるんですからね。

一方、日の射さないところは一日中凍ったままで、土を踏めばバリバリと音が立つぐらい。そんなところにもハコベやタンポポといった雑草がへばりついて、何週間も何カ月も冷凍状態で春を待っているのです。そして、あたたかくなると同時に頭をもたげて花をつけ、勢いよく葉を茂らせるのですね。繁茂されると厄介なのですが、寒い、暗い地面にちぢこまりながらしがみついているかれらの姿はちょっと感動的。その頑張りは驚異的でもあります。

ふつう、野菜は冷凍状態で収穫されると、解凍したときにぐったり、しなびたようになるものですが、有機野菜はちがうんです。大地に根を下ろしているように、元通り青々と復活します。雑草みたいな生命力。──野菜の善し悪しなどというのは、いろいろいわれているようだけど、ほんとうのところは雑草・野草にどれだけ近いか。さまざまに改良された野菜を栽培していても、どれだけそれが自然に還り、野生の記憶にたどり着けるか、その一点にかかっているような気がするんですね。

そんなわけで今年も理屈は抜きにして、ワイルドな青ものたちをお送りしたいと思っています。

地面が凍っているときは、当然屋根も凍っています。カラスの餌を屋根の上に放り投げても、スーッ、ポトンと落ちて来るのです。カラスは朝が早いので、夜のうちに用意しておくのですが、スーッ、ポトンなので日が高くなるのを待つようになりました。カラスたちもわかっているのか、遅くなっても催促しません。

アラレちゃんも同様に、餌やりを夕刻から朝に変更しているのですが、ある朝、屋根の上に降り立ったカラスが、そのままスーッと足を滑らせて視界から消えてしまった。向こう側に落ちてしまったのです。落ちたといってもカラスのことですから、怪我などはないんでしょうけど、おかしいような気の毒なような。

その点、事務局ではお食事タイムが日中なので、そういうトラブルとは無縁。親子3羽が仲良く餌をついばむようになりました。親子といっても、去年のヒナはとっくに巣立ってしまいましたから、今いるのは一昨年の子供です。カラスの世界では、一度巣立った子供が親元にもどって来ることはありません。もどって来ても親が追い返すのです。たいていの子はそれであきらめてしまいます。

この子も数度、追い返されました。それでももどって来るのは、片足を傷めているので仲間外れにされるのか、配偶者に恵まれないのか。お父さんは頭の羽根を総立ちにして追いまわし、お母さんはお母さんでけたたましく鳴き立てますから、ちょっとご飯を失敬すると姿を消してしまうのですが、暮れにもどって来たときはちがっていました。とことん粘ったのです。きっと行き場がないんでしょうね。

子供が不具になったのは親の監督不行き届き。自分の責任なんだから、テリトリーに入れてやってもいいんじゃないか、というのが第三者の意見でした。ご飯はたっぷりあるんだし・・・。それが通じたのか、根負けしたのか、正月明けには3羽そろって姿を見せるようになりました。よかった、よかった。いくらカラス界の掟が厳しいといっても、わが子の窮状は放っておけませんものね。

ご飯を食べに来るのが同じ時間帯ということは、たぶん巣も同じ。大きな息子と狭い寝所で押し合いへし合いしてるのか、それとも若造は実家付近でアパート住まい?それはともかく、春になって親鳥が抱卵をはじめたら、また追い出される可能性もなきにしもあらずでして・・・。でも、先のことを心配してもはじまりませんものね。今しばらくは、ほほえましい親子の姿を楽しませてもらいましょう。あの頼りなげな山鳩のピイちゃんだって、ついに意を決して飛び立ったのですから、彼もいつか自発的に出て行くときが来るんでしょうからね。

今週の野菜とレシピ

今週もかぶが入ります。かぶはスライス、ニンニクひとかけもスライスしてボウルに入れ、醤油をまわしかけます。彩りにかぶの葉を加えてもいいですね。かぶはすぐにしんなりしますから、そのまま食卓に・・・。サラダと漬物の中間という感じですが、ご飯によく合います。

淡い緑の山東菜は、味も淡泊でこれといった特徴がありません。いろいろやってみましたが、これはやっぱり芥子醤油で和えるのがいちばんですね。さっと湯がいて包丁を入れ、油揚げといっしょに和えるのですが、かなり多めに芥子を入れます。鼻にツーンとくるぐらい芥子を入れても、油揚げがそれを緩和してくれるみたい。

春菊のやわらかい葉はサラダに最適です。白身魚の刺し身、真ダコ、ホタテの貝柱、生きがよければなんでもいいですから薄切りにして、その上に春菊の葉を盛ります。小鍋を火にかけて煙が立つぐらいまで熱したら、胡麻油を大匙約2杯。入れるとすぐに火を止めて、鍋をゆすりながら油を熱し、春菊にまわしかけます。ジュッという音がすればOK。あとは適当に醤油をかけて・・・。これは手抜き海鮮サラダ。もっと手をかけてゴージャスにしたい向きは、アーモンドスライスをじっくり揚げて、サラダの上に散らしてください。

ター菜は寒さに強いというか、寒さでおいしくなる野菜です。それもそのはず、中国原産。大きな花のような外観です。これはもう炒めものでも、スープでも・・・。ラーメンに入れてもおいしいですよ。

椎茸は今回、急な寒さにあたって生育が遅れているため、いつもより少し量を減らして120グラムとなりました。来週には復活すると思います。

※ときどき会員の方から、葉ものが多くて食べきれない、というご意見が寄せられることがあります。旬の野菜セットという性格上、秋・冬は葉ものが主体になりがちですが、益子GEFでは意識的に菜っ葉類を中心にセット作りをしています。

一般に青菜は敬遠されがちですが、この青菜不足が昨今の子供たちの骨が脆くなっている一因でもあるからです。昔からこのあたりでは、実の少ない味噌汁を作る嫁は年になると腰が曲がる、といわれていました。味噌汁に青菜をたっぷり入れる家では、いくつになっても女性の姿勢がいいのです。それは青菜にたっぷり含まれるカリウムが、体内でカルシウムに変換されるから。カルシウムを補うのはカルシウムそのものではないというのは、カルシウムをたっぷり含んだ牛乳を作り出す牛たちの食生活を考えればわかりますよね。彼女たちの頑強な骨格や蹄や角を作っているのは牧草なんです。

子供の骨折が急増し、女性の骨粗鬆症が憂慮されるようになったのは、日本人の食生活から青菜が減少しはじめたのと同時です。牛乳など滅多と口にすることなかった昔の人のほうが、骨折は少なかった。それが、わたしたちが青菜にこだわる一番の理由です。スーパーでは青菜を敬遠していても、野菜セットに入ってきたら、イヤでも口にしてくれるでしょう。それで青菜のおいしさに気づいてもらえたら、いうことありませんものね。

もし食べきれない青菜があったら、それは味噌汁やスープにしてください。青菜がきらいな子供には、青菜からカリウムがたっぷり溶け出したスープを飲ませても効果的です。風邪もひきにくくなりますから、たくさん青菜をご利用ください。