2004年8月第2週

台風10号、11号と続けさまに中国・四国地方が直撃されました。が、愛媛県の野口さんのところはさいわい風による被害はなく、大雨も乾ききった大地には慈雨になったとか。十数年ぶりの旱魃が心配されていただけに、よかった、よかった。

思えば台風などというのも、人間界にはいろいろ支障はあるものの、もっと大きな視野に立てば自然界の大掃除。雨と風に洗われて、空も大地もまるで風呂あがりのようにさっぱりします。台風一過の青空のきれいなことといったらありませんものね。 この大掃除を前にしては、アリも人間もなんら差のない同じ土俵に蠢く生きもの。人が何万年もかけて作りあげた砦や垣根が一瞬にして崩れ去り、生あるものはことごとく手荒い洗礼を受けることになるんですね。この痛快なまでの平等感。まさに箒のひとかきで、それが“災害”といわれているものの本質かもしれません。

そして人は“災害”そのものより、みずから作りあげた砦や垣根の下敷きになって命を落とす。いや、それともそういうこと自体が“災害”なんでしょうか。どこからが“災害”で、どこまでが“浄化”なのか。それもこれも全部ひっくるめて“浄化”になってしまうのか・・・。そんなことを考えていたら、暑さでボーッとなった頭がますますふやけてしまいそう。それもこれも台風が残していった蒸し暑さのせいですが、これも大掃除のおまけと思って我慢しますか。

ちなみに世界遺産になっている建造物なども、人が築いたアリ塚みたいなものじゃない?その保存や修復がものすごく大事なことみたいにいわれていますが、形あるものはいつか壊れるというのが定石。そんなものに躍起になって逆らってどうするんだ、というのが正直なところです。まあ、異論はあると思いますけど・・・。

それよりも賢明なのは、手つかずに近い自然を世界遺産として登録したことです。とくに今回、熊野の森がそれに加わったのがうれしかった。これは南方熊楠が生涯をかけて保護のため奔走したところだからです。全国にあまたある神社を統合、小さな神社をことごとく潰すというのが当時の国策でした。狙いはこの国の中央集権化と、鎮守の森に生える大木を軍事用に利用すること。軍国化もさることながら、森がなくなってしまうことに熊楠は危機感を抱いたのでした。

人がどんな馬鹿騒ぎをしても、国土の大半が焦土と化しても、森があればなんとかなる。それはシェルターにもなりうるし、飢餓対策にも、国土を再生する原動力にもなるからです。未だに文化というと、バカでかい建物を作ることと勘違いしてるみたいなところがありますけど、真の文化というのはモニュメントらしきものなど残さないのではないでしょうか。ネイティブアメリカンや、この国のネイティブであるアイヌなどがいい例です。共存の文化と、そこから脱してバベルの塔を築き、周囲を砂漠化してゆく文化のちがい。それはもしかしたら自然の大掃除を“浄化”と見るか“災難”と見るか、そんなところから生じた差異なのかもしれません。

世界遺産に森林が選ばれるようになったのも、砂漠化文化に危機感をつのらせはじめたからでしょうが、どうせならこのまま放っておけば消えてしまいそうな熱帯樹林や、危機的な状況にあるマングローブ林など、景観などに関係なく先手を打ってくれたらいいのにね。でも、その審議がビルの一室でおこなわれているようじゃ、多くは望めないのかもしれませんが・・・。

うだるようなこの暑さも、わたしたちのアリ塚文化がもたらしたものなんですから、しかたがありませんよね。

今週の野菜とレシピ

今週はニガウリが入ります。すこし前まではなじみの少ない野菜でしたが、今や亜熱帯と化した日本の夏には不可欠に・・・。わたしも去年あたりからよく食べるようになり、今年はもう大好物。ある日突然、おいしさがわかるというか、身体が求めるようになる不思議な野菜です。

ゴーヤチャンプルーが有名ですが、特有の苦みがどうもという方は、ニガウリを縦半分に割り、種を除いてからスライスしたものをさっと塩もみ。塩分を洗い流してから使うと苦みが消えますが、こちらで栽培されているものは沖縄のニガウリよりかなり苦みはマイルドです。

ニガウリは卵と相性がいいようなので、オムレツにしてみました。ニガウリ1本に対してじゃが芋2個、ベーコン少々、卵3~4個。じゃが芋はあらかじめ茹でておいて、2~3ミリ厚さにスライス。ニガウリも薄めに切っておきます。フライパンに油を熱してベーコンをよく炒め、カリカリに近くなってきたらニガウリを加えて、これもよく炒めます。次いでじゃが芋を加えて、炒めるというより全体をよくなじませたら塩、胡椒で調味。最後に溶き卵をまわし入れたら、もうかきまぜないで火を弱め、表面が半熟になってきたらそのまま大皿に移動させます。底はパリッと、表面半熟のジャンボオムレツ。そのまま軽食にもなりますよ。

チャンプルーにするときは豆腐の上に厚めの皿をのせて、水きりをしっかりしておくこと。そうすれば炒めものが水っぽくならず、おいしくきれいに仕上がります。ニガウリのスライスをかき揚げにしてもおいしいですよ。

モロヘイヤはさっと湯がいてから、包丁で切るというより叩く感じでトロトロにして醤油で調味。とろろの感覚でご飯にかけたり、蕎麦つゆに入れたりしますが、このヌルヌル感がどうもという方は天麩羅にしてみてください。揚げるとヌルヌル感が消え、無味無臭に近い葉っぱから香ばしい匂いが立ちます。これもいつの間にか、亜熱帯と化した夏の食卓にすっかり定着してしまいましたね。

 南方の野菜の力を借りて、今少しの暑さを乗り切るとしましょうか。早く気持ちのいい季節になればいいのにね。


※Bセットには冬瓜が入ります。冬瓜は身体を冷やし、夏を過ごしやすくしてくれる野菜ですが、中国ではあつあつのスープにして食べています。香港あたりの喫茶店が寒いぐらいに冷房を効かせているのは、この冬瓜スープのためだそうです。

和風冬瓜スープもおいしいものです。濃いめのカツオ出しをたっぷり用意。冬瓜は中の種を取り、皮をむいてサイコロでも薄切りでも、食べやすいように切り、出しで煮ます。白い果肉がすぐに透明になってきますから、塩と醤油少々で調味。片栗粉でとろみをつけ、椀に盛ってから生姜のしぼり汁をたらします。冷たくしてもおいしいですよ。

干し椎茸や干しエビ、干し貝柱などいっしょに煮て、スープは少なめ。塩、胡椒、オイスターソース少々で濃いめに味をつけ、片栗粉でとろみをつけたお総菜風も美味。これは仕上げに胡麻油をたらしてください。