2004年4月第1週

なたね梅雨。

乾ききっていた大地が潤うと、またたく間に緑色の絨毯が広がります。白茶けた地面にへばりついていた春の草が、待ってましたとばかり繁茂して、畑は雑草園に早変わり。それに加えてレンゲのピンク、オオイヌノフグリのブルー、タネツケソウとペンペングサの白、タンポポの黄色などなど、色とりどりの花が咲きます。畑の準備にかかりたいけど、花模様の絨毯もきれい。抜いてしまうのがもったいないような光景ですが、そのままにしておくわけにもゆきません。

カモミールやヒナゲシも顔を出して、いつの間にか大きくなっている。道端ではレンギョウが、そしてその足元ではスイセンが花盛り。ムスカリも青い花をたわわにつけて庭先を飾っています。春がうれしいのは、植物たちが冬眠から覚め、次々と顔を出してくれるから。いたるところ、再会のよろこびに満ちているからかもしれませんね。

花冷えでちぢこまっていたサクラもそろそろ満開に・・・。このあたりも、週末あたりには見頃になりそうです。

新緑にはまだ間がある木々の梢でも、電柱やテレビのアンテナみたいなところでも、野鳥のアベックがやたらと目につきはじめます。カラスはぴったり寄り添って、コゲラはせわしなく鳴きかわしながら枝から枝へ、そして名前のわからないのやら見知らぬ小鳥やら、みんなこの世の春を謳歌するように繁殖時期を迎えました。

スズメは集団見合いをするのかな?いやいや、かれらだって配偶者は毎年決まってて、この時期はつがいで巣作りに精を出しているんでしょう。春になると山羊のユーリのたてがみがなくなるのは、カラスがベッド作りに持ち去ってしまうから。昼寝中の犬の毛がなくなって、飼い主が円形脱毛症を疑うこともあるようで、マンションのベランダから針金ハンガーが消えてしまうのも同じ理由。でも、それにも流行があるようで、去年あたりからユーリの毛はふさふさしているし、ハンガーがなくなったという話もあまり聞かなくなりました。事務局前の立て看板の支えになっている杭の皮を一生懸命はがしていましたから、今は杉皮みたいなものが受けているのかなあ。カラスのマイホームも自然回帰がニューファッションなのかもしれません。

そんな呑気なことをいっていたら、東京の友人から電話があって、カラスが迫害されてるんだよォ。まるでナチスのユダヤ人狩りみたいなんだよォ、という悲鳴。都知事のべらんめえオヤジの号令下、あちこちに捕獲用の金網が作られているんだそうです。中には囮(おとり)のカラスとエサが入っていて、連日大量に捕獲されているのですが、それをどう処分するのか。やっぱりガス室送りなのかなあ。わたしたちの耳に入るのは、都心でカラスが減少傾向というきれいごとだけ。でも、実態はかなりえげつなく、そんな天に唾するようなことをしていたら首都はあぶないんじゃないでしょうか。大国がテロリストを生み出す方法にかぎりなく近いんじゃない?

たしかに東京にはカラスが多い。多すぎる、と友人もいうのです。でもね、それは人の側にも責任があることで、ゴミの出しかたを大阪方式に変えてみるとか、それなりの対策を講じてからのこと。夜間にゴミを収集すれば、明け方にカラスが来てもなにもないわけで、そうなれば共食いも起きるでしょうが、産児制限で自然とカラスの数は減ってくるはず。ゴミ袋を黒くして、中身を見せなくするだけでも効果的だというのですが、人間はゴミを出し放題。職員の勤務時間も変更したくない。ただやみくもに捕らえて殺すというのでは、一時的にカラスの数は減少しても、郊外から新参者が流れこめば元の木阿弥なんですね。

それともうひとつわたしが驚いたのは、カラスみたいに頭がいい鳥がそんな幼稚な罠にまんまとひっかかってしまうこと。都会のカラスがこれまでいかに迫害とは無縁だったか、警戒心をなくしてしまったかがわかります。田舎のカラスなら、ぜったいそんなところには入らない。養鶏場の周囲にヒモを1本めぐらせただけで、霞網と勘違いして警戒するぐらいですから・・・。虎バサミ(罠の一種)も霞網も法律では禁止されていますが、 いまだにそれを使う人がいるんですね。霞網はクモの巣同様、逆光では見えませんからスズメもハトもカラスもみんな一網打尽。“害鳥”対策に農家がこっそりやる場合と、密猟者がメジロやウグイス目当てにやる場合があるみたい。

都会での迫害ははじまったばかり。カラスだってバカではありませんから、金網の内側にどんなおいしいものがあっても、そのうちだれも入ったりはしなくなるでしょう。1年もたたないうちに効果がなくなる。そしてまたカラスの天下。こちらが変わらないかぎり、なにも変わらないのです。それどころか力づくでカラスを敵にまわしてしまったら、かれらはもっと厄介な存在になる。カラスの大きな嘴と爪、それが人に向けられることがなかったのは、ひとえにかれらの寛容さのおかげだったかもしれません。

虫を敵にまわしてしまったら無農薬野菜は作れません。逆説めいて聞こえるかもしれませんが、ほんとうにそうなんです。害虫や有害鳥獣といった概念こそ、人の暮らしをむしばむ元凶。わるいものは人の心の中にしか存在しないのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

春の使者田ゼリが出ました。これはよく洗って水を切り、かき揚げにするかセリご飯。かき揚げにするときは、セリに薄く粉をまぶしてから衣の中に入れると、油がはねません。衣は少なめにしたほうが、おいしく仕上がります。

セリご飯にするときは、根も葉もいっしょにきざんで油で炒め、醤油を少し多めにからめて煎り胡麻といっしょにご飯に混ぜます。セリ1パックに対して、ご飯は2合ぐらい。セリの根と葉の境目がゴロゴロするかもしれませんので、大きいものは包丁を入れ、食べやすくしてくださいね。

エシャロットもかき揚げにすると、びっくりするほど甘くなります。ネギがきらい、という子供でもこれは食べてくれます。もちろん生のまま、味噌をつけて食べてもいいですよ。

甘くて香りのいいニンジンが好評です。これは生食用のタイプなので、大きくてなったものでもみずみずしく、やわらかいのです。細切りにして塩少々で揉んでから蜂蜜とレモンで和えておくと日もちもよく、ジャムのようにパンにのせて食べています。また大阪にお住まいのYさんはこれをピーラーで薄く削ぎ、素揚げにして食べているそうです。名づけてニンジンのひらひら揚げ。二度揚げするとかりっとしますから、スナック感覚で・・・。

極度の乾燥で葉先が枯れていたあぶら菜も、青々と背丈をのばし、みずみずしくなってきました。これはさっと湯がいて芥子醤油で下味をつけ、すり胡麻を加えたマヨネーズで食べてみませんか。あぶら菜を湯がくときには、塩ひとつまみと油を少々加えます。茹であがった緑がとても鮮やか。

春大根が遅れていますが、来週には登場します。また、ヤーコンも出てきますが、これは薬用だけでなく、食べてもおいしいのでお楽しみに・・・。


※Bセットには塩漬けのワラビが入ります。これも青山さんが去年の春、安比高原で採集、加工したもの。

ワラビは半日ぐらい水につけて塩を抜きます。鰹節か煮干しで出しを取って、さっと煮ふくめるか、細かく切ってニンジン、油揚げといっしょに炊きこみご飯にすると美味。付け根の堅い部分は切ってからお使いください。

ひと足早くヤーコンも入りますが、見かけは芋みたいでも、生で食べると梨みたい。甘みもあります。サラダにしたり、濃いめの出しでさっと煮て、サクサクした食感をお楽しみください。