2004年11月第4週

12月だというのに小春日和。いえ、小夏日和といったほうがいいかもしれませんね。暮れだからって、それ相応の服装で外出すると、汗をかいて風邪をひきかねない。どうなってるの?今週あたり、ちっとは冬らしくなってくれるんでしょうか。

身を切るような冷たい風が好きというのでは、けっしてないのですが、こうもあたたかいとなんだか不安。木枯らしが吹かなくても樹木は枯れ、例年通り落ち葉は舞い散っているのですが、それでは安手の舞台装置みたいでしょ。自然が奥行きのない背景画 みたいになってしまうから、イノシシもクマもキツネ・タヌキも居場所がなくて、ぞろぞろ出て来ざるをえなくなる。ヒトだって、そんな書き割りみたいな世界では、実体のない影のようになってしまいそうです。

みずからの実体が不確かになればなるほど、さらなる幻影を求めて悪あがきするのがヒトですから、ますます貨幣みたいなものに重きが置かれ、その結果、侵略だの内線だの、血なまぐさい 事件がますます増える。破壊こそ最大の経済活動ですものね。でも、なにが起ころうとたいしたことはないのです。実体のない世界で、実体のない人々が死ぬだけですから・・・。

暖冬のこわさは、そういう怖さに繋がるのではないでしょうか。

生きものの悲しいところは、実体などなくても腹が空くことで、ヒトも例外ではありません。異常気象で野生動物の食糧が枯渇するのを、まるで他人事みたいに眺めていますが、飢餓の足音はすぐそこまで来ているのではないでしょうか。

世の中がどんなに不景気でも、なんとか暮らすことはできるけれども、食糧だけは十日も途絶えたら、それでおしまい。生きてゆくことができないのです。食べものが豊富にあるようでも、供給が途絶えればそんなものはすぐになくなる。飢餓に陥るのって、じつはとても簡単で、特殊な地域の特殊な事情だけが作り出す状況だと思ったら大まちがいなんですね。赤子の手をひねるように、気象しだいでどうとでもなるのです。

もしもこの冬、このまま気温が下がらず、雪も降らずに春を迎えてしまったらどうなるか。雪解け水がなかったら田植えもできない。そればかりか飲料水すら確保できない地方も出てくるでしょう。さいわい日本は縦に長い地形ですから、北から南まで気候が一律ということはありませんが、主食である米の収穫量が半減しただけでも、十分パニックになりそうです。輸入に頼るといっても、異常気象は世界規模の問題ですしね。

十億もの人口を抱えた中国が食糧輸入国に転じたあたりから、そんな悪夢が現実味を帯びてきたのです。今日のクマは明日の人類。冬眠のできない人類は、どうやってそれを乗り切るんでしょうね。

枯渇に直面したとき、わたしたちははたして自分のペットを食うことができるか。これは究極の選択。犬と猫と山羊の顔を代わる代わる見比べながら、できないなあ、とは思いつつ、そういうことも絵空事ではないんだぞ、とペットにも自分自身にもいいきかせるのって、緊張感があってなかなかいいです。背骨がしゃんとして、なあなあで、べったりで、いいかげんなつきあい方にスパイシーな節度が加わるという感じ。

ヒトと動物の理想的な関係って、いつか食ってやる、というのと同時に、いつかこいつに食われるかもしれない、という緊張感があったほうがノーマルなのかも。おたがい、その気にさえなれば、いつでもおまえを殺せるんだぜ、というぐらいの気迫があれば、もうペットなどというものではないかもしれないけど、書き割りの風景には確実に奥行きが生じ、ヒトも動物も今よりはるかに生きやすくなるかもしれない、とも思ったしだいです。

今週の野菜とレシピ

里芋の煮っころがしにもそろそろ飽きてきたな、と思ったらコロッケにしてみましょう。里芋は湯がいてから皮をむいてつぶしておきます。にんじんはみじん切りにして挽肉とともに炒め、にんじん葉も加えて溶き卵といっしょに里芋に混ぜこみます。小麦粉もパン粉もつけず、そのまま揚げるからコロッケというより揚げ団子。 残った団子は味醂と醤油でさっと煮ると、お弁当のおかずになります。

お弁当といえば、ネギを使った常備菜もおすすめ。ちりめんじゃこを胡麻油でよく炒め、小口切りにしたネギを加えますが、ネギは加熱すると甘くなります。ぴりっとした辛みを味わう向きは、ネギを加えたらすぐに火を止めて、一味とうがらしと醤油で調味。仕上がりに煎り胡麻をたっぷり加えてください。

小松菜もちょっと目先を変えて、湯がいたものに香味ソースをかけてみませんか。ニンニク、生姜のみじん切りを各小さじ1杯、ネギのみじん切り大さじ1杯、フライパンに胡麻油を熱して炒め、火から降ろして酢・砂糖を小さじ1杯、醤油:大さじ1杯強で調味。それを熱いうちにまわしかけます。この香味ソースは肉や魚料理とも相性がいいので、いろいろ使ってみてください。

来週はお待ちかね、ほうれん草が入りそうです。