2004年8月第4週

熱帯性低気圧が運んでくる、この世のものとは思えないような暑さがおさまったかと思うと、いきなり秋の風。この急激な温度差に身体があたふたしています。

蝉しぐれにまじって秋の虫のコロコロ、リーンリーン、チンチロという羽音が昼間でも聞こえるようになりました。夕刻ともなれば、それがオーケストラ級の響きになります。やっと夏が終わったんだなあ、という感慨が今年はとくに強いみたい。

台風15号の吹きもどしで散らばったバケツやジョウロを拾い歩き、倒木や折れた枝をかたづけなから畑の中をぐるりと一周していると、青いまま振り落とされたイガ栗がいっぱい・・・。福田さんの畑では、トマトときゅうりが風にもまれて出荷不能になりました。酷暑でしたから、木が疲れていたのかもしれません。わが家のズッキーニも大半がダメになりましたが、好子さんの茄子とオクラが同じ目に合いながら、めげずにどんどん花をつけているのはなぜなんでしょう。作物は生産者に似るといいますが、それを実感するのがこういうとき。

 無農薬野菜というのは、生産者の側が心身ともに健康体であることがいちばんで、資材だの技術だの、みんながとやかくいうことは二の次なのかもしれません。ま、野菜にかぎらずなんでもそうなんでしょう。つまるところは人間性。いいものを作るのも人なら、それをわるいものにしてしまうのも人。悪天候などというのも、じつは人が作っているのかもしませんね。

テレビをつけるとオリンピック。人の話題もオリンピック。オリンピック景気などというのもあるそうです。人類の歴史を背負ったような祭典で、出場する選手も応援する側もさわやかな汗を流しながら一喜一憂するという、絵に描いたように平和で公正なスポーツショー。それがさわやかであればあるほど、華やかであればあるほど、カーテンの向こう側に広がっているドロドロが気になってしようがないのは、こちらのヘソが曲がっているせいでしょうか。

まず選び抜かれた選手たち。その選手たちの陰には、相当数の選ばれなかったアスリートたちが存在するはずで、選ばれたところでメダルを獲得するかしないかで、また明暗が分かれます。が、オリンピック報道はあくまでも晴れやか、かつさわやかですから、アスリートたちの暗部にはけっして触れない。映し出すのはメダリストたちの足跡といいますか、特訓に次ぐ特訓の日々。それのどこがさわやかなのかわかりませんけど。

それと、やたらとメダルの数に固執するのもイヤじゃない?そういうのを一枚めくると、すぐ裏側に得体の知れないナショナリズムが張りついていそうな気配。それのどこが平和の祭典なんじゃ、とわたしなどは思うわけです。いっそのことドーピングありの代理戦争とでも呼んだほうがすっきりするんじゃないか、ってね。

かなりヘソが曲がっているみたい。

曲がりついでにいわせてもらうと、エスカレートする大会規模もさることながら、知らないうちにどんどん競技が増えているのにも驚きました。それもあまりポピュラーとは思えないような競技ばかり・・・。例えば野球なんか、ほんのひと握りの国が熱狂しているだけで、知らない人のほうが多いんじゃない?ヨーロッパでは、ケッ野球なんか、という反応が強いだろうし、それならクリケットやら、わたしたちがゲートボールと呼んでいる競技のほうが歴史も古く、はるかに裾野が広いわけでして・・・。

 人類の祭典というわりには、競技の選択も送りこまれる選手の数字もアンバランスで、そこここに政治がぷんと匂うのもヤな感じ。しかも五輪の大陸中、お祭り騒ぎに興じているのはいわゆる金と食糧に不自由しない国だけで、少なめに見積もっても60パーセント以上の国々はそれどころではないのでは・・・。わたしたちがスーパーリッチの自家ジェット機でも見るように、横目にしながら通り過ぎてゆく大多数の地球人。通り過ぎるだけならともかく、降りかかる火の粉の中を逃げまどう人々もいるわけです。

汗と涙と偽善の祭典。スポーツというと健康的なイメージがあるけれど、過剰な練習は運動不足とおなじくらい不健康。でも、競ったり争ったりすることも人の本能なんですね。オリンピックを支えている思想があるかぎり、戦争などというのもなくなりようがないのかもしれません。

今週の野菜とレシピ

好子さんの茄子。風にもまれたため、傷になっているものもありますが、表面だけで中は大丈夫。だいぶ涼しくなってきたので生育がゆるやかになり、その分、味も濃厚になりつつあります。そうなってくると焼き茄子が美味。

焼き茄子は好きだけど、皮をむくのがちょっと・・・。焼きあがった茄子をまな板の上などに数分放置しておくと、それほど熱くありません。ボウルに冷水を用意して、そこに指をひたしながらやるともっと楽。鰹節とおろし生姜で食べるのが一般的ですが、わが家では茄子があたたかいうちに麺つゆに浸け、冷めたところできざみミョウガを山盛りにして食べています。毎日食べても飽きが来ないので、まわりから茄子中毒といわれるぐらい。

日光とうがらしは辛みがまろやか。香りもいいので、小口切りにしたものを冷凍保存しておきます。今、新鮮なイカが比較的安価ですから、とうがらしといっしょに炒めてみましょう。大きめのスルメイカ1抔に対してセロリ2~3本、とうがらしも2~3本分、ニンニクひとかけ。セロリはどうも、という方は玉葱を使ってください。

イカはワタと軟骨を抜いて5~6ミリ厚さの輪切り。足は1本ずつ切り離しておいてください。ワタも使いますから、細長いスミの入った袋を取っておきます。セロリは斜め薄切りにしておきます。フライパンに油を熱してみじん切りにしたニンニクを炒め、香りが立ってきたらイカを入れます。イカが半透明になってきたらセロリととうがらしを加え、それがしんなりしてきたらイカのワタを袋ごと入れ、箸で袋を破りながら全体に広げます。塩とオイスターソース少々で調味。青シソがあれば仕上げに散らすときれいです。これはご飯にのせても、パスタにからめてもイケますよ。

空芯菜はホウレンソウに似た葉っぱですが、茎が空洞になっていて、これが歯切れのいい食感の元。ニンニクといっしょに強火でさっと炒めますが、牛肉と相性がいいのでお好みで加えても・・・。これも青とうがらしと塩、オイスターソース少々で調味します。ミネラルの豊富な野菜なので、バテ気味の方にとくにおすすめ。

つるむらさきは特有の匂いが苦手という方がいますが、胡麻油をうまく使えば気になりません。まず茎と葉に分けて、茎のほうから先に湯がき、沸騰したら葉っぱを加えて火を止めます。冷水にとってから包丁を入れ、おひたしにしますが、鰹節と醤油、それに胡麻油を加えてみてください。炒めものにするときも胡麻油を使うといいですよ。