2004年6月第2週

先週は初夏の陽気。洗濯日和が続きましたが、今週はどうでしょう。雨の予報が外れるのはうれしいもので、布団が干せる、冬物も今のうちに整理してクローゼットも箪笥もすっきり。犬や猫の敷物も洗ったり虫干ししたり、大掃除して家の中がすっきりしました。

でも、雨は雨で庭先に新入りの花を植えつけたり、畑に野菜の苗を定植したり、あるいはごろ寝で休息。たまにはこういうのもいいですよね。ふだん雑事に追われてないがしろになりがちな子供やペットと、じっくり向き合うことができるのもこういうとき。こちらの都合でお天気をどうこういうよりも、こちらがお天気に合わせて暮らしていればいいんだと、そんなあたりまえのことに今ごろ気づいているしだい。あたりまえのようなことでも、天啓でも受けたように実感すると、なんか得をした気分になるものです。

いよいよ梅雨入りしそうですが、それなりの楽しみ方をしなくちゃね。

雨が降ったらひさびさに山羊のブラッシングでもして、痒いところを掻いてやろうかな。高齢にもかかわらず精力的に草を食べ、犬が散歩に出ると帰ってくるまで山のほうを気にしているといいます。山から持ち帰るお土産を待ちながら、かつて自分もいっしょに歩きまわった山の中をなつかしんでいるんでしょうか。白内障になってからは、足元のわるい山歩きには参加しなくなっています。

視力が落ちたとはいえユーリは元気。わたしは毎朝、床下の柱に頭突きする音で目をさまします。寝室部分が高床式になっていて、ユーリはたいていその下で寝ています。夏になって蚊が出てくると土間の中に入ってきますが、それ以外は風通しのいい床下のほうが快適なんでしょう。柱と見るとおでこをぶつけたくなるのがオス山羊の習性で、朝のそれはラジオ体操みたいなものかもしれません。

ごーんごーんという轟音と振動が寝室を揺るがして、それがわたしの目覚まし時計。便利ですが、何カ所か柱がなくなっているので、年々戸の開閉がスムーズに行かなくなるのが難点で、あんまりやりすぎると家が壊れて下敷きになっちゃうよ、というんですけど、この音を立てているかぎりユーリは大丈夫。健康のバロメーターかもしれません。

地中深く埋めこまれ、なおかつ家の重みがかかった柱を何カ月もかけてですが倒してしまうほどの怪力の持ち主が、わたしと頭突きごっこをするときや、子供が遊ぶときにはちゃんと手加減してくれる。オトナです。そして年を追うごとに父親そっくりになってくる・・・。ふと、時間が止まったような不思議な気分になって、過去も未来もみんな現在の中にある。今この瞬間にすべてが凝縮されている、とここでまた、あたりまえなんだけど忘れられて久しいことに行き当たるのです。ささやかな幸福感。

こういう小さな幸福が毎日どこかで得られれば、先のことなど心配する必要などないのかもしれません。子供の将来など案じなくても、子供はちゃんと育ってくれるし、先の見えない年金や老後の問題もなくなるわけです。どんな猛暑でも、反対に冷夏でも植物がちゃんと花をつけ、実らせるように、今という季節にちゃんと対応しておけば、放っておいても次の季節に対応できる。それが自然の摂理だったんですね。

水中では不安にかられてむだに手足をばたつかせると、逆に溺れてしまいます。地上でも同じように日々の営みに溺れてしまうのかもしれません。そこからふっと顔を持ち上げて呼吸する。雨の中に咲く花を見つけたとたん、身体がふわっと軽くなるように・・・。その気になれば家の中だって、感動の種はいっぱいこぼれてますものね。

今週の野菜とレシピ

今年は春先、台風なみの大風に見舞われたため、スナップエンドウをはじめ、グリーンピース、きゅうりといった蔓性の野菜が大打撃を受けました。小さいうちに強い風にやられると、根元が捻じられ、枯死してしまうのです。そんなわけで豆類、きゅうりともに十分な量が確保できませんでした。

きゅうり、もしくはグリーンピースが入る予定ですが、天候しだいではインゲンも加わりそう。お日さまが出てくれないと、いずれも生育が遅れそうなので、寄せ集めの協力態勢というわけです。インゲンは上記の豆類より種蒔きが遅かったので、風による被害がなかったようです。──でも、できることなら今週はみんなで豆ご飯を炊きたかった。塩味のご飯にしみたグリーンピースの甘みと香り、これは梅雨の憂さをはらい、初夏の到来を告げる風物詩みたいなものですから・・・。

山形から援軍としてオカヒジキにも来てもらいました。毎年、この時期には入っているので、楽しみにしている方も多いかもしれません。さっと湯がいて芥子醤油やマヨネーズで和え、しゃりしゃりした食感をお楽しみください。炒めてもおいしいですよ。

スイスチャードはカラフルな茎がきれいですが、味にクセがないのでおひたしにもなります。さっと塩をして一夜漬けにしてもさっぱりして美味でした。

オカノリもたまには油炒めというのはどうでしょう。湯葉といっしょに炒め、塩と一味とうがらし、ミリンと醤油少々で調味、仕上げにもみ海苔を散らします。生湯葉が手に入らなければ油揚げでも代用できそう。お味噌汁も気に入ってます。

季節の変わり目は身体もまた変わり目ですから、しっかり温野菜をとってくださいね。