2004年7月第5週

全国的な猛暑。とはいっても身体が慣れてきたせいか、今月はじめのように顎を出すことはなくなりました。人間の順応力ってすごいですね。

それとも朝夕、涼風が立つようになったからでしょうか。今年がすべてが前倒し。秋の訪れも早いのかもしれません。猛暑というわりには、夏が短い感じがします。

それより深刻なのが水不足。記録的な豪雨に見舞われたところがあるかと思えば、空梅雨に喘いでいるところも・・・。愛媛県の野口さんのところでは、十数年ぶりの旱魃になりそうだといいます。こちらも大地は乾燥しきって、よくこれで野菜が育つと感心するぐらい。いつも思うことですが、植物の順応力は人間などよりはるかにすごく、別次元の生きものではないかと思うほど。慈愛の力というものがあるとすれば、植物こそそれを体現するものかもしれません。苛酷な条件下で、みずみずしい果実を提供してくれる野菜に感謝です。

暑くて雨の少ない年は、蜂やアブが大発生。犬猫のノミも繁殖しやすくなります。わが家では犬と山羊が出入りする土間には粘土クズを撒いていますが、ゼオライトでも代用できます。園芸用品を扱っているところにはたいていありますから、犬小屋周辺に撒いておくとノミやダニが近寄りません。象が泥浴びをして、体についた虫を落としますよね。あれがヒント。ゼオライトは20キロの大袋しか入手できないのが難点ですが、利用法はほかにもあります。身体についたノミ・ダニは、ひとつかみのゼオライトをひと晩水に浸け、その上澄みをスプレーしてやると効果的。小学生がプールなどでもらってくる毛ジラミも、シャンプー後、この上澄み液でリンスするといなくなります。

また、麦飯石といっしょに水瓶に入れておくとボウフラがわきにくくなります。わが家では夏になると睡蓮鉢、風呂桶を埋めこんだ山羊の水飲み場にそれを使用。この水飲み場はカラスたちも使っていますが、岩石や粘土成分の溶け出した水を飲むことでも虫がつきにくくなるのかもしれません。雨上がりなど、犬や猫が好んで水たまりの水を飲むでしょう。あれもそういう理由なのかもしれませんね。

これは虫とは関係ありませんが、先日“伊藤家の食卓”というテレビ番組で、牛蒡のアク抜きをした水をスプレーすると生ゴミの臭いが消える、という“裏ワザ”が紹介されたそうです。それを聞いてさっそくやってみたら、ほんとうに瞬時にポリバケツを開けるたびにあがってくる臭いが消えるんです。うれしくなって裏庭のゴミ用ポットにも、猫のトイレにもスプレーしまくりました。体臭の強い犬の体にもかけてやりたい・・・。木搾酢より経済的だし、ペットボトルで冷蔵すれば保存もできる。この夏、最高のヒット商品(?)かもしれません。みなさんも大いに宣伝してくださいね。

虫に話をもどすと、京都の寺院で観光客がキイロスズメバチに刺されるという事件がありました。おそらくかれらの巣は殺虫剤の洗礼を受けたんでしょうが、この殺虫剤というのがじつはクセモノ。キイロスズメバチが大繁殖している背景には、オオスズメバチの減少という事情があるからです。オオスズメバチはキイロスズメバチよりひとまわり大きいので、見るからに危険そう。というわけで殺虫剤が撒かれるのですが、天敵を失ったキイロスズメバチがやたらと増えて、今度は同種間の競争というストレスから八つ当たりをするようになってしまった。もとはといえば人が作り出した状況ですから、人が襲われてもしかたがないのかもしれませんが・・・。

でも、いちばん被害を被っているのが養蜂家と野生のミツバチだといいます。アブが異常繁殖しているのもオオスズメバチの減少と関係がありそう。アブのウジが捕食されないので、いやでも増えてしまうんですね。こいつが人や家畜に襲いかかる。蜂はストレスがたまったときか、身に危険を感じたときしか襲ってこないけど、アブは血を吸うのが目的なので執拗につきまとうのです。うちでも山羊のユーリが駆け足になるのは、たいていこれに追われているとき。近所に牧場があるので、ウシアブという巨大なヤツが飛んできます。ノミや蚊はなんとかなっても、こればっかりは打つ手がありません。室内に逃げこむと、いっしょに入ってきたアブはあわてて窓際にへばりつきます。陽光を求める習性があるみたい。その隙に山羊はまた戸外に出るのですが、また追われてきて、夜になるころには土間のある部屋はアブでいっぱい。電光に集まってくるアブをひとつひとつ握りつぶすのが、夏の間、小気味のいい仕事になります。アブは“虻”と書きますが、ほんとうに体の中は空洞なんです。内臓もなければ、吸ったはずの血も出てこない。機能だってハエみたいに小回りはきかないし、蚊のようなホバーリングができるわけでもない。めったやたらと飛びまわるだけ。

創造主はなぜ、こんなものを作りたもうたのか。デザインはそっくりそのままハエを盗用しているし、これといった工夫の後も見られない。どうでもいい、という感じで、そんなにイヤなら作ってくれなくてもよかったのに・・・。どんな小さな虫にも存在理由があるというのに、アブだけは謎だらけ。それとも人知を越えたなにかがあるのかなあ。あったところで、そんなことにはおかまいなし。今夜もひとしきり、アブをつぶしまくります。

今週の野菜とレシピ

つるむらさき空芯菜と夏の青ものが揃いました。つるむらさきは特有の匂いがダメ、という人がいますけど、それも調理法しだい。まず葉っぱと茎を切り離し、湯がくときは茎のほうから、炒める場合は茎に包丁を入れておきます。おひたしにするときは、醤油といっしょに胡麻油を少し加えると匂いが気になりません。炒める場合も胡麻油がおすすめ。サクラエビといっしょに炒めると色合いもきれいです。

空芯菜は炒めものが主流ですが、ニンニクと相性がいいので、かならずいっしょに。パリッとした茎の食感が身上ですから、強火で手早く仕上げてください。空芯菜を加えた焼きそばもおいしいのですが、ここでもニンニクをお忘れなく。ソースではなく塩で味つけしてくださいね。

オクラはさっと湯通ししてから小口切り。それに鰹節と醤油、または梅醤油をかけるとすっきりさっぱり夏の味。納豆と合わせてもおいしいですよ。

きゅうりは塩もみして青トウガラシとシソ、あるいはミョウガといっしょに即席漬けにすると手間いらず。しかも食欲増進剤になりますが、もっと簡単な即席漬けもあるんです。きゅうりは斜め薄切り、ニンニクひとかけもスライスして、そのまま涼しげな容器に入れ、醤油をからめるだけ。きゅうりがニンニクと相性がいいなんて、ちょっと意外ですが、これは生ニンニクが苦手な人でも食べられます。

相性といえば、ピーマンミョウガもじつは仲良し。ピーマンは半割りにして、種をつけたまま素揚げして、鰹節とたっぷりのミョウガをのせ、醤油をかけます。これはご飯が進みますよ。ピーマンを揚げるのがめんどうなら、油炒めでもOK。ただ、揚げるほうが時間が短縮されるので、火のそばにいる時間が短くてすむんです。いっしょに茄子を揚げてもいいですしね。茄子は茄子で素揚げして、醤油とたっぷりのおろし生姜で食べてみてください。

どんなに暑くても、水がなくても次々と実をつける野菜たち。そのパワーをもらって、この夏も溌剌としていましょうね。