2004年5月第2週

初夏のような陽気があるかと思ったら、早春に逆もどりしてしまったり・・・。

もともと5月というのは変動が激しくて、八十八夜を迎えた茶畑が遅霜にやられたり、夏野菜の新芽が枯れたりと、農家にとっては油断のならない時期なのですが、それにしても不安定。毎日、天気予報とにらめっこをするように対策を講じますが、その予報がまたアテにはなりませんからねえ。農家も八百屋も右往左往。ふりまわされています。身体もふりまわされるのか、風邪をひいている人がけっこういるようです。季節の変わり目がこうも長引くと、いろいろ不調が出てきます。ご自愛ください。

それでも季節の担い手たちは、忠実に暦どおり動いているようです。わが家の軒下にツバメが巣作り。しばらくなかったことなので、ちょっとハラハラしながら見ています。それというのも十数年前、はじめてわが家にツバメがやってきたときのこと。下から見上げる猫どもを低空飛行で追い払い、ああでもない、こうでもないと軒下を移動しながら土を運び、数日かけてようやく完成。メスが卵をあたためはじめると、オスは餌運びに専念します。みごとなまでの連携プレー。

ところが、そこへスズメがやって来たのです。それも連隊で・・・。ずらりと電線の上にとまってツバメを監視。そしてオスが餌とりに飛び立つと、どっと押しかけてくるのです。メスが巣を出て闘いますが、その隙にほかのスズメが巣を攻撃。追っても払ってもスズメはやって来て、あたかも地元民がよそ者をいびり出すような執拗さ。スズメがそんなヤツだとは思わなかった。もう許さん!親子していきり立ちましたが、ツバメたちがちょっと留守にした隙に、巣は落とされてしまいました。

その中には数個の卵。ほとんどヒナになりかけたのが潰されていました。以来、春が来るたびにツバメが電線に勢揃いして、大惨事の跡を見ながら、無言の抗議。連日、いろんなグループがやって来てそれをやります。もちろん、だれも巣作りなどしようとしない。その肩身の狭いことといったら・・・。非難の目が集中する中で洗濯物を干し、外出し、帰ってくるのです。イヤなもんですよォ。

十数年でかつての惨事を知る世代がいなくなったのか、まったく別のところから来たグループなのかわかりませんけど、とにかくまたツバメがやって来た。巣ができあがったころ、板切れかバスケットで補強でもして、今度こそ無事にヒナを巣立たせてやりたいものです。今回成功すれば、これからは毎年来てくれる。そうなれば不思議なもので、地元民もさほど気にはならなくなるようです。

夏になると、貸家は大繁盛。家賃がタダなので、無数のクモが巣を張りますし、薪小屋には常連の青大将とガマガエル。アシナガバチも山羊の柵に巣を作りはじめました。それに今年はツバメも参入。ご贔屓(ひいき)さんになってくれるといいんですけどね。

暗いニュースもあります。 卵を提供してくれている寺内さんのところで、ポニーの子供が生まれました。おめでとう!と、勢いよく走っていったら、生まれたばかりの子供はよろよろ。それはまあしかたがないとして、お母さんのほうに元気がありません。子供に背を向けたまま俯いて、名前を呼んでも反応がないのです。

翌朝、行ってみたらお母さんは地面に横たわっていました。いくら人に慣れたポニーでも、お腹を出して横になるなんてよほどのこと。寺内さんも心配そうで、子馬用の哺乳瓶を持ってうろうろしています。子供が思うようにミルクを飲んでくれないので、頻繁に授乳してやらなければならないうえ、母親の介抱もありますから仕事などそっちのけ。ポニーとはいえ200キロもある身体を動かすわけにはゆかないので、急遽日よけを作ったり、獣医に付き添ったり・・・。

しかし今朝、わたしたちが訪れたとき、母親のアミはもう息を引き取った後でした。高齢出産に加えて難産がこたえたようです。アミはもともと寺内さんのお嬢さんの馬でしたが、今ではほとんど寺内さんの娘代わり。愛情のかけかたも特別でしたから、慰めようにも言葉がありません。忘れ形見の子馬のほうも今ひとつ元気がなくて、すぐに座りこんでしまうのですが、母親に死なれたショックが大きいのかも。喘ぎはじめた母親のそばに来て、しきりにお乳を探していた姿が焼きついています。

生命というのは強靭であると同時に儚いもの。それは綱渡りのように絶妙なバランスの上に成り立っているもので、第三者がいかに手をつくしても、どうにもならない部分があるんでしょう。アミが死んだのは周囲の努力が足りなかったからではなく、彼女自身がそれを選択したから。魂がほんのちょっと里帰りをしてみたかった。そのうち、その生命を引き継いだ子馬が元気に駆けまわり、ああ、生命って循環しているんだなあ、と実感できる日が来ます。

わが家の山羊も二代目ですが、だんだん父親そっくりになってきました。折にふれ、亡くなった一代目の面影が蘇り、そのたびにジーンと来るんですね。幸福な瞬間で、当の本人が目の前にいるときより、濃密で身近な存在に感じられます。ほんとに不思議で、奥の深い世界にいるんだな、と思います。

今週の野菜とレシピ

今週は中里さんのトマト・桃太郎が入りますが、これはアスパラガスの生育が遅れているため・・・。季節外れではありますが、中里さんのトマトには定評があり、ファンも多いのです。ただし、苗の時期には消毒散布をしています。年々、気温が高くなると、輸入野菜について密入国した虫が繁殖。それにつれて農薬もどんどん強くなり、虫は虫でどんどん耐性をつけているのが現状。今年からは福田さんのトマトも苗の時期だけ、消毒散布するそうです。

そのトマトとルッコラとモッツァレラチーズのサラダ。フレンチドレッシングに隠し味程度の醤油を落として・・・。ルッコラは胡麻のような香りのある、生食用の葉ものです。サラダだけでなく、肉料理のつけ合わせなどにもご利用ください。

今週は雨模様。フキの葉が濡れたり汚れたりしていると、傷みの原因になりますので葉っぱは落としてしまいました。そのまま湯がいて皮をむき、先週煮物にした方は、今度はきんぴらというのはどうでしょう。作り方はゴボウ同様、油炒めしてミリンと醤油で味をつけ、トウガラシを効かせてください。

京菜も油炒めにすると意外においしいもの。ニンニクひとかけと豚バラ肉を炒め、オイスターソースと塩、胡椒でしっかり味をつけてから、京菜を茎のほうから加え、葉先を入れたら火を止めてあとは余熱で・・・。塩加減を調整してできあがり。さっぱりした仕上がりになります。