2004年4月第5週

初夏のような陽気が続きましたが、週末には気温が低下。寒暖の差がはげしくてあたふたしますが、衣服をもたない植物たちはもっとたいへんなんでしょう。

ちょっと気温が高くなると、山の中ではブユが発生。散歩中でも、草むしりをしていても、それが顔の前を舞うのです。目ブユという別名があるように、人や動物の目のまわりをクルクル旋回するのでうっとうしく、食われたところが赤く腫れます。薮蚊に刺されても腫れはすぐに引きますが、こちらは数日残るうえ、動きが早くて捕まらない。それが寒さに出会うと消えてしまいます。死んでしまうのか、草むらに身をひそめて震えているのか、どっちにしてもこちらのほうはザマアミロ。野菜のことは心配なんですけどね。

勝手なもので遅霜は困るけど、先週みたいに急激に気温が上がると、箱詰めされた野菜が窒息するんじゃないかと、これまた心配。今週はどうなりますか。野菜がぐったりしていたら、すぐに広げて水をふってくださいね。それでもダメなら連絡ください。些細なことでも、いわれなければわかりません。参考のためと思ってお願いします。

イラクから帰還した人質やその家族に、誹謗や中傷が寄せられているとのこと。外務大臣が会見を開くぐらいですから、これは相当ひどいものなんでしょう。びっくりしますが、それ以上に暗澹とした気持ちにさせられます。この国はいつの間に、戦前に立ちもどってしまったのか。思ったこともうかつには口にできない、行動に移すなんてもってのほか。そんな空気がたちこめはじめているんじゃないでしょうか。

国民総背番号制、個人情報管理、言論統制が着々と進められている。目立たないようにですが、ひたひたと足元に迫ってきています。言論はたしかに自由ですが、それを掲載する雑誌類は取り締まられ、いずれメディアもその対象に・・・。有事の際にはNHKが政府機関の一部になるとか、有事に備えて地方自治体に避難訓練をさせるとか。そういや、わたしの家にも役場から依頼された電気屋が、有線の受信機を取りつけに来ましたね。電源は抜いたままになってますけど・・・。

有事、有事って、いったいなんだ?なにをおっぱじめようっていうんでしょう。とおちゃんもかあちゃんも、にいちゃんもねえちゃんも平和ボケ、そしてわたしも平和ボケ。まさかそんな、と高をくくっているうちにずるずると流されて、はたと気がついたときには最悪の事態に突入。暗雲がたちこめていたなんて・・・。これが夢なら覚めてほしい、とすべての戦争体験者が思ったことを、性懲りもなく繰り返すことになるんでしょうか。

それとも、ツケがまわってきただけなのか。世界中で火柱が立つたびに見て見ぬふり。対岸の火事とばかりにうまいものを食い、食べすぎてダイエットが必要になってきたものだから、強硬手段に出ようっていうのかな。思えばこの国は、お隣の朝鮮戦争で戦後復興をなしとげ、ベトナム戦争で経済成長、南米やアフリカで大虐殺が繰り広げられているさなか、バブル景気に浮かれていたんですものね。こうして挙げてみると、わたしたちはまるで吸血鬼。今になって、その血を返せ、といわれているのかもしれません。でも、いったいだれに返すの?

宇都宮に航空自衛隊の基地があるので、このあたりでも輸送機の重低音が響きわたります。米軍がイラクに侵攻してからその頻度が増し、自衛隊がイラク入りしてからはますます・・・。夜遅くなって聞く重低音は、はるか上空でも地の底から湧いてくるように響きます。家族は黙って顔を見合わせるだけ。その瞬間、娘は生まれたばかりの子供の未来を案じ、わたしは息子の身を案じます。暗い夜空にはイスラムの新月。

なあんて、少しおおげさかもしれませんが、ああいう音を耳にするとその昔、まだ東京に住んでいたころ、生後間もない息子を抱いて飛び出したことがよみがえるのです。家がガタガタ揺れるような重量級の響きの主は、工事用のクレーンを運搬する巨大なトラック。それがゆっくりと遠ざかるのを見送りながら、これと同じ振動であたりを震わせながら、この道をいつか戦車が通ることがあるんだろうか。そしてふと、今も昔もたくさんの女たちが、よりによってこんな時代に生まれてきた子供のために涙を流してきたんだろうな、と思ったものです。

そんなことを思い出しながら新月の闇の中に出てみると、ホウホウ、ホロスケホウとフクロウの声。春以来、このホロスケホウが夕刻にも聞こえるようになりました。それを聞くと、やさしく“バカだなあ”といわれているような、ほっとした気分になるのです。さんざん痛めつけられているはずの野生から、いざとなると慰められる。人間って、ほんとうに愚かで弱い生きもの。でも、それだけにいとおしくもある、とフクロウ先生はおっしゃっているようでした。

今週の野菜とレシピ

今週もタケノコが入りますが、先週お送りした方には椎茸と玉葱が入ります。

タケノコが届いた方は、その日のうちに添付のヌカといっしょに煮てください。竹串がすっと通るぐらいになったら、そのまま冷まし、きれいな水に移し変えます。毎日水を取り替えていたら、4~5日は常温でも大丈夫。煮物や炒めものにご利用ください。ニンジンが葉つきになりました。葉っぱがやわらかいうちは、これも利用したいですね。ちりめんじゃこといっしょに炒めて、煎り胡麻もたっぷり加えてふりかけにしたり、さっと湯がいて胡麻和えにしたり・・・。意外な食感が楽しみたかったら、かき揚げがおすすめ。ニンジン葉はてんぷらにすると、もちっとした食感になるんです。そこで同様に、揚げるとモチモチ感の出る竹輪といっしょにかき揚げにしてみたら、これがけっこうイケました。細切りのニンジンと葉っぱをいっしょに揚げにしてもいいかもしれませんね。

やわらかい春葱は薬味向き。斜めに包丁を入れ、炒めものに加えてもおいしいですよ。カブは薄切りにして一夜漬け。葉っぱもいっしょに味噌汁にしても、香りがいいですよ。カブの葉は目にいいんだそうです。青菜としてもお使いください。


※Bセットの方にはアスパラガスが入ります。今年はタケノコが掘りきれないぐらい大量に出たのに反して、アスパラガスのほうはさっぱりだとか。とても全セットをまかなうだけの量が採れないそうなので、Bセットのみとなりました。

アスパラガスは根元のほうを指ではさんで、折れたところから上を使います。これは日がたつにつれ甘みや香りが抜けてしまいますので、お早めにお召しあがりください。