2004年4月第4週

イラクで人質になっていた3人が解放されました。次いで2人のジャーナリストも誘拐されましたが、めでたく無事解放。しかし、政府は迷惑そうな面持ちを隠せません。信じがたいことですが、世論までが一般人のイラク入りを不見識とみなしているみたい。覚悟の上で行ったんだから放っておけとか、救出費用を家族に負担させろだとか・・・。日本人がイラクに行ってはいけないのなら、自衛隊はどうなってるの?かれらの存在がそういう事件を誘発しているのだとしたら、まったくもって本末転倒。誘拐は卑劣な行為にちがいないけど、招かれざる軍隊が復興支援なんて身勝手な名目で乗り込むのはもっと卑劣じゃないでしょうか。アメリカはもちろん、それに加担した国が復興支援など口にするのはもってのほか。賠償、もしくは罪滅ぼしというべきで、それには軍備など必要ないはずです。

目には目を、がイスラムの法則ならなおのこと、こちらは丸腰でなければなりません。ほんとうにイラクの復興を願っているのなら、すべての軍隊が撤去して、代わりに民間のボランティアが入らなくっちゃ。経費だってうんと安上がり。そんな素人でもわかることが実行されないのですから、春になっても、暑い夏がやって来ても、うすら寒さがつきまとうんですね。

動物行動学を研究していたローレンツは“ソロモンの指環”の中で、人間のそういうところを憂慮していました。

殺傷武器や能力を持った肉食獣は、縄張り争いにしてもメスをめぐる争いでも、闘いを儀礼化して、相手を死に至らしめることがないといいます。それぞれの種を存続させるため、本能的にブレーキがはたらいているのです。それが武器を持たない草食獣などは、ときに相手を死に至らしめてしまうのですね。そういう装置が不要だからです。

だから鶏やウサギのいじめなんて壮絶ですよ。鶏は相手の肛門をつついて、ついには腸をひきずり出してしまうし、ウサギもあんなかわいい顔で、しかも草食だというのに食い殺してしまいます。で、問題の人類ですが、裸の人間はウサギよりも脆弱で無防備にできていますから、衣服をまとい、武器を持ちます。石やりぐらいの武器だったら問題はなかったでしょうが、人類はそれをどんどん発達させてきた。地球を何回も壊滅させられるほどの武器を持つに至りましたが、制御装置のほうは丸裸だったときのままなんですね。理性がそれに代わるはずでしたが、武器と同時に貨幣などというものを作ったからいけません。

いってみればブレーキのないスポーツカー。それがわたしたちなんですね。欲望にもキリがないみたい。衣食足りて礼節を知るはずが、どこまでいっても欲求不満。満ち足りて、与えられたものに感謝するということがないばかりか、他人のものまでほしくなるのです。ノーム・チョムスキーがインタビューに答えていってましたけど、合衆国政府は南北アメリカ大陸の石油に関して、それがどの国のものであれ、自分のものだと勘違いしてるって・・・。だからチリでもベネズエラでも、国防省がひそかに介入。軍事クーデターで何万という市民が殺され、拷問され、行方不明になったところで、そんなの関係ないもんね。それどころか、アラブの石油にまで手を出す始末。そんな大国のおこぼれ頂戴を狙うようなどこかの政府も、さもしいというか、情けないかぎりでして・・・。

日本って、食料自給率が低いでしょ。とても先進国とは思えないような数字なのに、政府がそれに危機感をつのらせないのはなぜなのか。ずっと不思議に思っていましたが、知人の話を聞いて納得がゆきました。この国の政府って、石油のことしか考えてないんだそうです。食料自給率も低いけど、石油のそれはもっと低い。ゼロなわけでしょ。だからそっちが優先される。あんた、石油がなかったら農機具だって動かせないでしょってわけ。

万が一、食料が不足する事態になっても大丈夫。第二次大戦直後がそうだったように、食料配給制度を復活させれば乗り切れる。日本人は比較的おとなしいから、暴動も起こらない。なんとかなっちゃうんだそうです。へぇー、そうだったのか。お国は先の先まで、ちゃんと考えてくれてたんだ、と感涙にむせびましたね。おかげで冷めた気持ちで、農林水産庁のやることを黙認できるようになりましたし・・・。農地改良という名の田圃潰しも、河川の工事も無知や誤解などでなく、意図的なものだったんですからね。

今、農水省がせっせと補助金を出している水耕栽培。トマトもきゅうりもホウレン草も、何千万という施設を作らせ、石油を使わせているのですが、温度管理も施肥もすべてオートマティック。便利だから、若者の農業離れがなくなるというのです。しかし、そこから大量の化学肥料が垂れ流しになっています。河川と海の富栄養化が問題になって、そのうち環境庁が動きだします。マスコミも騒ぎ立てるでしょうから、農家は巨額の借金をかかえたまま撤退せざるを得なくなります。そうしてまた農家がひとり、またひとりといなくなり、輸入野菜のワクを広げることができるのです。

国民ひとりひとりが自衛しなければならないような国に、なぜ自衛隊など必要なのか、それだけが謎のまま残ります。もしかしたらわたしたちが造反したとき、その武器がこちらに向けられるのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

タケノコの登場です。例年より半月も早く、しかも昨年の不作を補わんばかりの勢いといいますから、今年の夏は暑くなりそうです。海老原さんの広大な竹林では、早朝から盗掘が絶えず、業者がごっそり持ち去ってしまうことも・・・。それでも全部は採りきれないからかまわないそうですが、困るのが置き土産。ジュースやビールの空き缶を放置されるのには腹が立つというより、気が滅入りますものね。今年は海老原さんの妹であるアラレちゃんが主力となって、タケノコを掘ってくれるそうです。

タケノコはその日のうちに、添付のヌカといっしょに湯がいてください。竹串がすっと通るぐらいになったら火を止めて、そのまま冷まし、きれいな水に移してください。水に浸けておけば数日は大丈夫。いつでも調理に取りかかれます。根っこに近いところは細かくきざんで、干し椎茸といっしょに煮てからご飯に混ぜるとタケノコご飯。先の方のやわらかいところはワカメといっしょに若竹汁。真ん中あたりは濃いめの出しで煮てもいいですし、薄切りにして豚肉といっしょに炒め、山椒の若芽を散らしてもおいしいですよ。

青山さんのウドも入ります。これは山ウドですが、畑で栽培されたもの。天然の山ウドは来月に入ってから、タラの芽などいっしょに岩手の山奥からお届けします。これはてんぷらもいいですけど、きんぴらがおすすめ。食べやすい大きさに包丁を入れてから胡麻油で炒め、醤油とみりんで調味します。葉っぱの部分を加えるのは調味してから。仕上げに化粧胡麻をふってください。

サラダ菜は肉料理やサラダの添え物に使われますが、そんなことをしていたら食べ切れません。そこで炒めものにしてみました。まず、春雨50グラムを熱湯でもどし、水にさらしてから包丁を入れておきます。それから肉でも椎茸でも、サクラエビ、ちめんじゃこといった乾物でも、出しが出るものならなんでもけっこうですから、フライパンに胡麻油を熱して炒め、とうがらし少々と醤油をまわしかけます。次いで適当に包丁を入れたさらだ菜を加え、また醤油。最後に春雨を加えて炒め、味をみながら醤油を足します。サラダ菜のほろ苦さがおいしいですよ。

あたたかくなって、まるで初夏のような日もあります。地域や配達時間を考慮して、それなりの手は打っているつもりですが、もしも野菜が傷んだり、くたびれたりしていたら、些細なことと思わず、かならずご一報くださいね。