2004年9月第3週

秋の気配が濃厚になってきました。熱帯性低気圧が残暑をもたらすことがあっても、もう蝉しぐれではなく、草むらから立ち上がるのはコオロギの羽音。リイリイリイと、残暑の中にもの悲しさを漂わせます。

ケッケッケッケッとけたたましく鳴き立てるカエルもいます。本来、夏の到来とともに活発になるのが、今年はあまりの暑さと旱魃に鳴りをひそめていたのでしょうか。今ごろになってうるさくなってきました。はじめてこれを聞いたときは、熱帯のジャングルにでも迷いこんだかと思ったぐらい。しかも声の主は極楽鳥みたいにカラフルな鳥類だとばかり思っていましたから、それが聞こえると外へ飛び出してキョロキョロしたものです。それがこんな小さなカエルだったとは・・・。

ふしぎなカエルで、みんなこの奇声のことはよく知っているのに、名前などはだれに聞いてもわからない。子供のころから耳にしていても、姿形を知らない人のほうが多いんです。いつか図鑑で調べてやろうと思いながら、わたしもまだ生態どころか名前も知らない。カエルというより、薮や草むらの存在を主張する広報係。もしかしたら自然が生み出した警報装置みたいなものかもしれません。

ケッケッケッケッ、ここから先は立ち入り禁止。ケッケッケッケッ、それでも来るなら保証はしない。好きなだけ野山を潰していいけれど、やりたい放題なにをやってもいいけれど、その分ツケは払ってもらう。ツケは身体で払ってもらう。──こんな風に聞こえるんですが・・・。

今回はそういうツケを、あたかも人類を代表するかのように払っている人々。さまざまな病気をわが身に引き受けた人はもちろん、それを介護する家族、またそういった病の影におびえて暮らす人々に、朗報をお届けすることができそうです。

兵庫県芦屋市の“生駒屋”さんは、関西にお住まいの方ならご存じかもしれません。酒屋として自然酒や調味料を置くかたわら、10年ぐらい前からは八百屋になって、安全な野菜を地元に紹介しています。はじめは小さな試みでしたが着々と信頼の輪を広げ、益子GEFでも数日おきに、野菜の入った大きな箱をふたつ、みっつと出荷するようになりました。今ではいちばんのお得意さんです。

でも、八百屋というのは儲かりません。芦屋の一等地にある酒屋がなぜ、そんな酔狂に身を投じたかというと、“生駒屋”の若旦那・井上一夫さんの病気がきっかけだったそうです。クローン病──たまに耳にはするけれど、実際にはどんな病気かわからない。そこで直接ご本人に伺ったら、口から肛門にいたる身体中の粘膜がとろける奇病で、若い人に多いそうです。多くの場合、小腸がやられ、開腹手術でその部分を切除しては繋ぎ合わせるのですが、最終的には小腸がなくなってしまうというのです。

現在、発症率ナンバー1の難病ですが、もちろん治療法などは確立されておらず、井上さんもそれを宣告されたときにはガーン!目の前が真っ暗になったといいます。しかし、よくよく考えてみれば酒は飲み放題、美食に加えて不摂生。こら病気にならんほうがおかしい、と思うようになったそうで、まず食生活から玄米と雑穀を中心に菜食をしながら、東城百合子さんの“自然療法”という本を頼りに、身体にいいといわれることは全部やってみたそうです。中でもめざましい効力を発したのがビワの種。種の堅い殻の中にある仁と呼ばれる部分を粉末にして、それを朝晩飲んでいたら、いつの間にかクローン病が消えてしまっていた。

ついに健康を取り戻したのですが、彼はそうは考えず、健康をいただいた、と思ったそうです。いただいた以上は恩返しをしなければなりません。それが酒屋を八百屋にする動機だったんですね。しかもビワの種を微粉末にする技術も開発。非過熱のビワ種を同じ難病に苦しんでいる人たちに分けることもはじめました。つい先日も夫がリンパ腺癌を宣告された女性に泣きつかれ、ビワ種を差し上げたところ、3日で呼吸が楽になったと感謝されました。

癌はある日突然発生し、大きくなるものですから、解消されるのも早いといいます。それとは対照的なのがアレルギー性の喘息や皮膚炎、花粉症などで、これは時間をかけて蓄積された症状ですから、治癒にも時間がかかります。部屋の真ん中にどんと置かれたゴミをかたづけるのは短時間ですみますが、部屋中にたまった埃をきれいにするには手間暇かかるのと同じ理屈なんでしょう。

とのあれ、そのビワ種の微粉末が今年から益子GEFにも分けていただけます。数量に限りはありますが、100グラムのパックで2600円(税込:2730円)──朝晩、軽く小匙1杯ずつ飲んで、1ケ月半ぐらいの分量です。皮膚の炎症には馬油(尊馬油)に混ぜて使います。が、これはクスリではありません。わたしたちが本来もっている自然治癒力をめざめさせるもので、そういう意味では特効薬。口にすると杏仁の香りとほのかな甘みが広がります。

こういうもので金儲けをしてはいけない、というのが井上さんの身上ですので、益子GEFもそれに従わせていただきました。ご希望の方は早めにご連絡ください。

井上さんとお話していて思うのは、病気がある種のメッセージであるということ。病気を忌み嫌い、どんどん切除しながら“闘病”なんかしていると、たいていそれに負けてしまいます。ですが最終的に病気を受け入れ、その意味を問いながら生活そのものを変えてゆくと、どんな難病・奇病も解消されることになるようです。そして感謝の念。これがすべてを変えるキイになった、と井上さんはふり返ります。

病気は自然と置き換えて考えることもできそうです。人間が肩肘張って自然と闘ったところで、勝てるものではありません。野菜も同様。病気や虫を自然と考え、逆らわず、土壌を変えることでのみ健康な野菜が育つのです。それともうひとつ、すべてをありのままに受け入れることのできるおおらかさ。身土不二、という言葉がありますが、心身土不二がほんとうなんでしょうね。

今週の野菜とレシピ

今週の野菜セットには、トマトが再登場。これは台風18号がもたらした残暑で復活したもの。きゅうりがもみくちゃにされ、茄子は傷だらけになりましたが、ハウス内のトマトには幸運だったようです。

問題の茄子も、今週は傷のないきれいな体になりました。秋茄子がおいしいのは、生育に時間がかかるため、その分味が濃くなるから。焼き茄子がおすすめです。

そして待望の小松菜です。まだ小さくて、葉っぱの一部が虫に食われていますけど、秋風が立つと無性にお味噌汁が恋しくなる。そこに小松菜などが入ると、もういうことなしですね。