2004年2月第3週

週末のポカポカ陽気。春一番も吹きました。でも、また寒さがぶり返し、三寒四温を繰り返しながらほんものの春にむかって行くんでしょうね。

植物たちもそれがわかっているのか、こんな陽気が数日続いたぐらいでは動き出しません。木の芽は米粒みたいにかたいまま。しっかり布団をかぶって寝ているみたいです。それがゆるゆると解けはじめると、布団のすきまから生気が立ちのぼります。米粒みたいな芽のひとつひとつから、まっすぐ天まで届きそうな光が立つのです。それはまるで樹木の身体を借りて、大地が天空に祝砲をあげているみたい。

犬といっしょに山の中を歩いていると、そんな予感にドキドキ、ワクワク。落ち葉の敷物もまわりの風景も、なにひとつ変わっていないのに、空気がちがうみたいなんです。植物たちも眠っているように見えて、じつはもう根っこのあたりは目をさましているのかもしれません。そう思って、会員の方から毎年いただいている太陽太陰暦を見ると、ちょうど雨水の第三候:草木萌動。このころ天地の気が豊かになって交わり、陽気にめぐまれ、草木が芽をふきはじめる、とありました。

米粒みたいにみえて、木の芽ももう動きはじめていたんですね。だからあんなに山の中がエネルギッシュだったんだ。毎朝、寝ぼけた顔で山に入って、1時間も徘徊すると妙にすっきりしてくるのは、ただ単に運動のせいではなかったようです。そういえば林の中を上ったり下りたり、茂みに入ってゴミを拾ったりしていると、いつの間にか身体の不調もなくなっている。朝は光合成のもっとも盛んな時間ですから、生まれたてのきれいな酸素とマイナスイオン、それに加えて大地や植物たちのエネルギーまでもらっていたんですね。

朝の散歩が一日を左右する。それぐらい大きいことがわかっていても、ひとりだとつい億劫になりがちです。それが欠かさずできるのは犬のおかげ。犬に健康をもらっているようなもので、それがドン平の恩返しかもしれません。

ドン平はオス。推定年齢8歳。わが家へ来てまだ半年あまりですが、すっかりわたしの犬になってくれました。引き取った当初はヒモを外すとどこへ行くかわからない犬でしたが、今はもう散歩もヒモなし。お手やお座りといった芸はないけど、ゴミ拾いに手間取ってもイヤな顔ひとつせず、ちゃんと待っているし、猫も追いかけない。一度叱られたことは二度としないお利口さんです。

山羊のブラッシングをしているとき、やきもちでヒャンヒャン鳴くのが欠点でしたが、それをやられると山羊が落ち着かないので、一発コツンとやってからいいふくめました。ユーリはおまえより年上で、ここでは大先輩。だからスキンシップもユーリが一番。今度うるさくしたら、おまえは外に出すからね。──以来、吠えることはなくなりましたが、部屋の中をドタバタ駆け回るので、それも禁止すると今度は座布団をかじるようになりました。まあ、これなら静かですけどね。

ユーリが優先されるのは年齢のせいだけではありません。同じブラッシングをしていても、気持ちのいいとウフーッと声が出たり、うっとりと目を閉じたり、山羊は犬や猫よりリアクションが派手というか、人に近いのでやりがいがあるのです。それが済んだら小さな椅子に腰かけて、おでこを合わせて押しくらまんじゅう。これは山羊の遊びなのですが、やりすぎると首や背中が痛くなります。最近はユーリも年なのか、遊びの最中にそのままこちらの胸元に顔を埋め、まどろむようにしていることが多くなりました。そんなときは白内障が進んできた目のまわりを指圧したりさすったり・・・。それはとてもおだやかなスキンシップで、そのまま何時間でもユーリを抱いていたいのですが、やっぱり山羊というのはやんちゃ坊主で、あっちこっち打撲したり首のスジをちがえたりしていたほうがわたしは安心。

山羊の恩返しは長生きしてくれることかもしれません。まあ、みんなそうなんですけどね。犬も猫も家族も友人も、なんということのない関係なんだけど、できればそのままずっといてほしい。愛ってそういうものかもしれない。求めたり押しつけたりするものではないし、ことさら口にするものでもないのでしょう。ありのままを認め、存在を許すこと、とバレンタインチョコを食べながら思ったのでした。

今週の野菜とレシピ

ミツバのような外観の、細長い葉ものがスープセロリです。これはスープの浮き実にするところからそんな名前になったのですが、香りはほんとにセロリそのもの。蒸し鶏を薄く切ってスープセロリを散らし、玉葱のみじん切りをたっぷり入れたドレッシングをかけると美味でした。フレンチドレッシングに醤油を加えたものでも、擦り胡麻入りのドレッシングでも・・・。

かき菜は寒さで葉先がちぢれていますが、あぶら菜の仲間なので炒めもの向き。しめじとかき菜を油炒めして塩、胡椒、香りづけにナンプラーか醤油を少々。そこにオーブントースターでカリカリに焼いた油揚げを砕いて散らします。これはトーストにのせてもおいしいですよ。

残りのしめじも胡麻油で炒め、一味とうがらしと醤油で濃いめに味つけ。隠し味に酢少々を加えます。これは豆腐ステーキのソースですが、そのままご飯にかけても・・・。豆腐は1センチ弱、なるべく薄めに切って小麦粉をまぶし、多めの油でこんがり焼きます。よく焼ける前にひっくりかえすと豆腐が崩れやすいので、強火で焦げ目がつくぐらいまで焼くのがコツ。しめじのソースをかけたら、彩りにスープセロリも散らしてください。

甘みのあるメイクィーン。青菜といっしょに味噌汁に入れると美味ですが、長ネギといっしょにスープにしても・・・。ネギは小口切り、じゃが芋は3ミリ前後の薄切りにしておきます。まずネギをバターで炒め、しんなりしてきたらじゃが芋と水を加え、沸騰したらアクをとって弱火にします。じゃが芋はすぐに火が通りますから、塩、胡椒、オイスターソース少々で調味。夜のうちに作っておくと、朝、あたためるだけでOK。これにもスープセロリ、忘れずに浮かべてくださいね。