最近の事件と太陽活動

2005年2月第1週

立春大吉。皮肉なことに、ここへ来て寒さが本格的になってきました。

山羊のユーリがこのところ、なんとなく元気がありません。山羊は寒さに強いのですが、やっぱり寄る年波には勝てないのかなあ、と思っていたらそうではなく、水が飲めなくなっていたのでした。古くなった風呂桶が水飲み場になっているのですが、例年になく厚い氷が張っているため、日が高くなってもそのままなんです。

10年以上使っていますが、水飲み場の氷を毎朝バールでたたき割るなんてはじめてのこと。ユーリが朝日にお尻を向けて、じっとひなたぼっこをしていることが多くなったのも、年のせいばかりではなかったのかもしれません。

でも、太陽活動は年々活発になっているようです。朝日も夕日も、まぶしさが半端じゃないでしょう?去年の秋口あたりから、それが顕著になってきたような気がします。日が傾きはじめると、車の運転に支障が出るほどです。

太陽がまぶしかったから、という理由で人を殺してしまったのが、かの有名な「異邦人」の主人公。名前は忘れてしまいましたが、太陽=まぶしいといったらすぐに思い浮かぶのがこの人物で、アルベール・カミユって時代を先取りしてたんだなあ、と今更ながら感心したして・・・。不条理をテーマにした作品を発表し続けた作家ですが、「ペスト」ではだれもが忘れかけていた伝染病を現代に再現してみせました。これも大いにありうることですが、今は太陽にこだわり続けたい。

アラン・ドロンのデビュー作「太陽がいっぱい」ひと昔前の映画になってしまいましたが、友人を殺してその男になりきっていた主人公の最後のセリフもまた、太陽がまぶしすぎる、でした。どうやら太陽のフレア活動は,前世紀半ばあたりから活発になっていたようです。ここ数年、それが肉眼でわかるほどになってきたから、かつてフィクションの世界で起こっていたことが日常茶飯事になりつつあるのかもしれません。

理由なき殺人が急増しています。理由があればいいというものでもありませんが、通り魔やら変態男が多すぎる。会員からのお便りにも、ニュースを見るのがいやになった、と書かれていることが多くなりました。中には、もうテレビは見ない、という人も・・・。

でも、こうは考えられないでしょうか。太陽が活発になり、光が強くなればなるほど影もまた濃くなる、と・・・。人も動植物も太陽の影響を受けていますから、フレア活動が盛んになれば当然それも強くなります。耐えられず、わるあがきするものも出てくるわけですが、だからといって太陽に非があるわけではありません。目の前に影があるということは、光に背を向けているからにほかならないからです。

だとするとほんとうの悪者はギラギラする太陽ではなく、紫外線による皮膚癌などを理由に、わたしたちを光から遠ざけようとする者ではないか。先週の続きになってしまうけど、政府べったりの国営放送、主たるスポンサーがサラ金とケータイ屋という民放あたりが諸悪の根元だったりしてね。良心的なアメリカ人の間でささやかれているニュースが犯罪を作っているという説も、案外的を得ていたのかもしれません。

ニュースなど見なくてもいい。むしろ見ないほうがいいのかもしれませんが、見ても見なくても、問われているのはこちらの姿勢で、わたしたちがなにを見ているか、目の前にあるのが光か影かということこそ問題なんだと思います。そこから意識をそらさなければ、なにがあっても受け入れられる。

カミユは今でも好きな作家のひとりですが、不条理などほんとうはこの世に存在しないのではないか、と最近思うようになりました。一見、不条理や理不尽に見えることにもちゃんと理由があって、わたしたちには窺い知れぬ規律にのっとっているんじゃないか。それが宇宙法則というものではないだろうか、と考えているしだいです。

要は現象に振りまわされないこと。「星の王子さま」じゃないけれど、たいせつなことは目には見えないのです。目に見えることの真意を知るのは、砂漠の真ん中で伏流水を探りあてるぐらい困難なことですが、よく考えてみたら農家はなに食わぬ顔でそれをやっていたのでした。野菜の病気や虫害といった表面的な現象から、かれらは土壌のバランスを計り、薬剤に頼るのではなく畑に手を加えていたのです。

これだ、と思いましたね。わたしたちはまず、畑の在処から探さねばなりませんが、わたしたちの畑は私たちの中にある。わたしたち自身のことではなかったでしょうか。

今週の野菜とレシピ

毎朝霜が降りるようになって、青ものの葉先が枯れてきました。野菜の収穫は早朝というのが原則ですが、土も野菜も凍っているため、昼過ぎにならないと収穫ができません。毎日が凍結と溶解の繰り返し。わたしたちが指先から凍傷になるように、葉先が枯れてしまうのです。

しかし、この寒さで野菜は甘くなります。風雪に耐えてこそ、人も野菜も丸く穏やかになるんですね。葉っぱのちぢれたビタミン菜は炒めもの、おひたし、スープの実となんでもOK。春菊はわが家では、さっと湯がいてポン酢で食べるおひたしに人気があります。切り胡麻をたっぷりかけるとさらに美味。

リーフレタスはサニーレタスによく似ています。椎茸を油炒めして塩、胡椒と醤油、レモン汁をかけ、熱いうちにレタスにからめたサラダがおいしかった。椎茸の熱でレタスの一部がしんなりしますが、その半加熱状態がこの季節にぴったりでした。

ネギと椎茸を網で焼き,麺つゆにひたしてもおいしいですよ。鴨南蛮ならぬ椎茸南蛮。ネギも椎茸も完全には火を通さず、芯が半生ぐらいに焼き上げるのかコツ。ご飯にもお酒にもよく合って、身体がぽかぽかしてきます。