花粉症

2005年3月第1週

春一番が吹き荒れたかと思うと、先週は雪になりました。しかも、この冬いちばんの積雪量。事務局周辺は10センチ程度で、すぐになくなってしまいましたが、自宅のある山間部は27センチにもなりました。この10年ほどなかったことなので、測ってみたのです。

とはいっても春の雪。ずっしりと重みのある雪は、水分が多いため、溶けるのも早そうです。そのかわり、雪かきはたいへんでしたけどね。犬の散歩もスコップ片手。ところどころラッセルしながら歩いていると、頭上から雪がどさっと落ちてきたり、急な坂では足をとられて、雪だるまになりかけたり・・・。雪と汗でぐちゃぐちゃになりながら、でも気分は爽快で、10年ぐらい若返ることができました。

雨とは対照的に、雪は人を高揚させるのかもしれません。いや、一部の人といったほうがいいのかな。雪は農家の大敵ですし、野鳥たちも食べ物探しに右往左往しているようです。今週、出荷予定の野菜は雪が降り出す直前、農家がビニールシートで覆いをしてありますので、無事にお届けできると思います。

いったん晴れると、陽光はもう確実に春の明るさ。木々の枝から雪が落ちると、新芽がふくらみ、先端にはほのかな赤みがさしています。桜の蕾もふくらんでいるんでしょうね。

杉花粉に悩まされる時期でもあります。わたしは花粉症ではありませんが、こればっかりはいつ発症するかわからない。だれもが可能性を秘めているわけでして、春先にくしゃみが出ると、一瞬ドキッとして、ついに来たか・・・。刑の執行を待つ囚人の気分、といったらおおげさでしょうか。

ただの風邪なら、ほっと胸をなでおろしたりしてね。これが真冬なら、しまった、風邪なんかひいてしまった、となるところでしょうが、花粉症の脅威にくらべたらたいしたことではないのです。毎年、春の到来が喜べなくなるなんて、つらいことですもんね。

でも、これってほんとうに病気なんでしょうか。一般に病気と呼ばれているものを回避するために、わたしたちの身体は自己防衛するのですが、それが過剰になっっているのが花粉症でしょう?異物を排除するためにくしゃみが出る。鼻も出る、涙も出る・・・。異物に対して敏感すぎて、その異物が有害か否か、判断を下す前に拒否してしまうわけですから、これをあえて病気の範疇に入れるとすれば精神病。耳鼻咽喉科の手には負いかねるものだったのかもしれません。

過剰な防衛はろくなもんじゃない、という見本みたいな症状ですが、すでに花粉症に罹っている人だけが精神病というのではありません。わたしたちみんなの意識がそうなっているから、こういう変なものができあがる。現にわたしだっていつ発症するか、春が来るたび、ひっそりと恐れていたりするわけですから、世界的規模の心の闇をちゃんと共有していたわけです。

年々、奇病や難病が増えています。これは新薬の開発に呼応しているようですが、もっと根元的なところではわたしたち自身が関わっているのではないでしょうか。実際、農薬と病害虫のいたちごっこみたいなことが、医療と病気の間でも起こっていますが、それは農薬だけの問題なのか。もっと基本的なところで農家の姿勢が問われ、自然の摂理を無視した傲慢さが、しっぺ返しを受けているんじゃないでしょうか。もしそうだとしたら、医学は有機農業の現場から学ぶことが多いはずです。

除草剤を散布したところにかぎって、やたらと草が生い茂るのはなぜか。それも背丈のある、一度生えたらなかなか排除できないものばかり・・・。そして農薬をいくら撒いても、虫にやられるときは跡形もなくやられてしまうのです。農薬を散布しない畑でも、草は生えます。でも、手作業で除草していると、しだいに少なくなってきます。そして虫に対しても、ある程度はしかたがないと達観していると、壊滅的な打撃を被ることはないのです。

長年、畑にたずさわっていると、病害虫が農家の心理に敏感に反応するのがわかるといいます。つまり、ある程度は許すという寛容さが大事だというのです。虫でも草でも、マイナス要因だから根絶やしにしようなどと思うと、向こうも必死で立ち向かってくるからです。人も、虫も、野菜も、同じレベルの生きものなんですから・・・。

そしてもうひとつ。虫や草はほんとうにマイナス要因なのかというと、じつはそうじゃない。虫は作物の、草は土壌の問題、つまり栄養分の過不足を知るバロメーターでもあったのです。病気もしかり。病気とは本来、生あるものをを死にいたらしめないため、動植物の身体を調整するもので、健康を維持するために欠かせないのが、皮肉ではありますが病気だったんですね。

それを、病気イコール不健康としたところに、医学の躓きがあったのではないでしょうか。そしてそれを根絶することを目的に発達してきたわけですから、そりゃあ病気も怒るわ、拗ねるわ、ふてくされるわ。医者でない、ふつうの人までいっしょになって理不尽な恐怖心を抱くようになったから、もういけません。平凡で、子煩悩な父親でもあった男がある日突然、テロリストに変貌するように、次々と新しい病気が出てこざるを得なくなった。というのが案外、ほんとうのところかもしれませんよ。

ともあれ、花粉症の方はお大事に・・・。事務局のアラレちゃんもひどい花粉症でしたが、無駄な抵抗はせず、治療も薬もやめてから症状がずいぶん軽くなり、花粉が例年の10倍ちかくといわれているこの春も、思ったより平穏に乗り切ろうとしています。花粉症を病気と捉えるのをやめただけでも、これだけ効果があるんですね。

今週の野菜とレシピ

ニンジンが入ります。益子のニンジンがイノシシの食害に遭ったため、福田さんが急遽ハウスに種を蒔いてくれたもの。そんなわけで、この時期にはめずらしく、青々とした葉っぱがついてます。

この葉っぱも立派な野菜。ニンジン同様、食べ方はさまざまで、香草の一種としてご利用いただけます。シチューなどの煮込み料理にきざんで入れる。パセリのようにパン粉に混ぜる。ハンバーグにもこれを加えると、ぐっと香りがよくなります。

ニンジン葉のかき揚げもおすすめ。揚げると表面カリカリ、内部はモチモチという不思議な食感になりますから、細く切ったニンジンと合わせてみてはどうでしょう。

ちりめんじゃこをかりっとするまで油炒めして、ニンジン葉も加えていため、醤油少々で調味するとふりかけにもなります。これは仕上げに煎り胡麻をたっぷり加えてくださいね。

春菊も、もしかしたら香草の仲間なのかもしれません。わが家では肉料理には、かならず生葉をちぎって添えますし、オムレツやスープの青みにも利用しています。おひたしにするときは、ユズ酢と醤油を合わせたポン酢に味醂を少したらして・・・。そこに擦り胡麻をたっぷりかけます。煎り胡麻を包丁で叩いても濃厚に香りが立ちます。ユズと胡麻と春菊の香りがさわやかですよ。

舞茸は、今週はパスタにしてみましょうか。舞茸は捨てるところがありません。全部、細かくほぐしてください。パスタを鍋に放りこんだら、フライパンを弱火にかけ、ニンニクのスライスを鷹の爪といっしょにゆっくり加熱。香りが出てきたら、弱火のまま舞茸を加えます。味付けは塩と、隠し味の醤油だけ。パスタのゆで汁をスプーンにとって、数回フライパンにまわしかけ、パスタになじみやすくするのがコツ。櫛切りレモンを添えてどうぞ。