人と新型インフルエンザの関係

2005年12月第1週

寒くなりました。毎朝のように霜が降りるようになり、畑の作物も草も地面も、シュガーコーテイングでもしたように真っ白。日が高くなるにつれ、地面が湯気をたて、植物はゆるゆると頭をもたげはじめます。毎朝、冷凍と解凍を繰り返しながら、冬野菜は甘く、やわらかくなってゆくのです。

でも、凍ったまま収穫すると、根っこという生命維持装置をなくした野菜は、解凍時、ぐにゃぐにゃになってしまいます。そのため、収穫時間は早朝から夕刻に切り替えられています。早朝も寒いけど、夕方の畑というのは、冷たい風をさえぎるものがなにもありませんから、ほんとに寒く、指の感覚がなくなってくるんだそうです。日暮れが早いから、すぐに手もとが見えなくなってしまいますしね。

農家がそんな苦労をしているおかげで、わたしたちは野菜で身体をあたためることができる。しみじみ、ありがたいと思います。そんな青菜をたくさん食べて、今年も風邪をひかないようにしてくださいね。

新型のインフルエンザが流行の兆しを見せているとか。それが猛威をふるいはじめると、かつて大流行したスペイン風邪より犠牲が大きくなるという見通しもあるぐらい・・・。鳥インフルエンザも、不気味な動きを見せていますしね。

スペイン風邪というのは、1918年から翌年にかけて流行したインフルエンザで、マルセーユで発生した風邪がまたたく間に世界中に広がったもの。それをなぜスペイン風邪と呼んだのかは不明ですが、2000万から6000万の死者が出たそうです。2000万と6000万では数字の開きが大きすぎますが、これは第一次大戦中だったため、フランスとドイツが軍事上の理由から、犠牲者の公表を避けていたため。風邪で全滅する大隊もあったといいます。

いずれにしても、当時の世界人口が12億にすぎなかったこと。また、第一次大戦による死者がヨーロッパ全土で300万人ぐらいだったことを考えると、桁はずれの数字であったことがわかります。日本でも大流行したらしく、わたしの祖父の兄弟もそれで亡くなっているのですが、それをこの百年ほどで5倍ちかくまで膨れあがった世界人口にスケールアップしてみると、おそろしい数字がはじき出されるわけでして・・・。

だから各国とも、対応に四苦八苦しているのですが、唯一の手段がタミフルという問題のある薬というのでは、お手上げも同然。これも自然災害とおなじように、浄化作用とでも考えたほうがいいのかもしれません。

うすうす感じていたことですが、環境に対応できなくなった動植物が地上から姿を消すごとに、一方で新しいウイルスが誕生している、なんてことはないでしょうか。種が減少するばかりでは、自然界のバランスが保てない。と同時に、特定の一種のみが異常繁殖することも許されないのです。だから、小さな生命が姿を消すと、なにものかによって種が蒔かれるように、極北の地にウイルスが舞い降り、それが天使のような翼を持った渡り鳥たちによって、世界中に伝播される。そんな気がしてならないんです。

世界中からおびただしい種類の動植物が姿を消しました。つい最近、日本でもメダカが絶滅危惧種に指定され、みんなショックを受けましたよね。百年前には、年間30種の動植物が姿を消しているといわれましたが、今では毎日およそ8種が絶滅しているという報告もあるぐらい。たとえばアマゾン流域などでは、発見されると同時に絶滅、というケースもあるようです。

それに比例するように、病気も増えています。医療技術がどれだけ進歩しても手に負えないくらい、前例のない病気が次から次と・・・。アフリカ大陸の開発が、もともと猿の病気だったエイズを世界中に蔓延させたことでもわかるように、伝染病などというのは人自身が開発しているものにほかならなかったのでは?

それにつけても思い出されるのが、動植物がひとつ地上から姿を消すごとに、人類は破滅に向かって一歩踏み出している、というメイテイブ・アメリカンの言葉。地上からも海からも生き物が姿を消したとき、はじめて人は貨幣は食べられない、ということに気がつくのだろうか、というアボリジニの言葉です。

わたしたちの生命が、単独では存在しえないこと。すべての生命と繋がることによってしか維持できないことに、いいかげん気がつかなくてはね。風邪の予防もたいせつですが、インフルエンザはそんなことにはおかまいなし。しかし、それを外敵と見なすのではなく、行き場を失った小さな生命体と捉えてみてはどうでしょう。そういう意識の置きどころこそ、罹患率を左右する基準になるような気がしてなりません。

今週の野菜とレシピ

先週に引き続き、キャベツが入ります。小ぶりなのでロールキャベツには不向きですが、ベーコンなどといっしょに煮ると、甘くて美味。芯までおいしく食べられます。

大根ター菜も大きくなりました。ター菜が登場してくると、わが家では小松菜の人気が落ちてきます。それぐらいおいしい青菜。株の根元も土を落とすのが、ちょっと面倒ですけどね。魚介類といっしょに炒めても、スープにしてもやわらかく、甘みがあります。

里芋と大根をいっしょに煮るのが田舎風。お好みで鶏のもも肉、もしくは筒切りにしたイカを油炒めし、あればニンジン、大きめの乱切りにした大根も加えて炒め、里芋とさっと茹でておいたコンニャクを入れたら、ひたひたまで出しを注ぎます。砂糖と酒と醤油で調味したら、落としぶたをして大根に箸がすっと通るぐらいまで・・・。だいたい30分ぐらいでしょうか。仕上げに七味唐辛子をふりますが、これもお好みで・・・。冬の定番のひとつです。

寒くなってくると、京菜もサラダより、スープ仕立てにすることが多くなりました。ちなみに夕べは鰹節の出しに、湯葉と京菜。塩だけの味つけですが、滋味のあるお吸い物になりました。ベーコンやキノコ類と合わせてもおいしいスープになりますよ。

今週はBセットのみですが、来週から馬田さんの椎茸が全セットに復活します。キノコの贈答用セットも受けつけていますので、暮れの贈り物にご利用くださいね。