6月のホトトギス

2005年6月第2週

こちらは先週から、早くも梅雨入り。肌寒い日と、蒸し暑い日が交互にやって来ます。 そのせいか、季節はずれの風邪をひいている人もいたりして、この番狂わせに人も野菜も四苦八苦。稲の生育状況よくありません。

番狂わせといえば、関東が南西地方より早く梅雨入りする、なんていうのも常識外。なぜなら雨雲というのは、西のほうから北上してくるものだからです。迷走する人間界。気圧配置よ、おまえもか、とだれかの台詞が口をついて出てきそう・・・。上空の大気も、じつは内心おろおろしているのかもしれません。

ともあれ、太陽の顔が見えるとほっとするというのが、こちらの現状。今週はどうなるでしようね。目に青葉山ほととぎす初鰹、といいますが、このあたりでは6月に入ったあたりから、ホトトギスが盛んに鳴きはじめます。なにをそんなに、というぐらい息せき切って、昼間はともかく、この鳥は夜間も鳴いていますから、深夜それが聞こえると、寝入ってしまうのがわるいように思えるぐらいです。

特許許可局は夜間も営業中。ホトトギスの鳴き声が特許許可局と聞こえるからですが、この鳥はいつ眠るんだろう、などとついつい余計な心配までしたりして・・・。だって朝は朝で、特許許可局と鳴き立てているんですからね。昔から昼夜を分かたず、喉から血が出るまで鳴き続ける、などといわれてきたのもこれで納得。なにやら悲壮感の漂う声ではあります。

そのせいか、ホトトギスにはいろんな言い伝えがありますが、わたしが子供のころ、亡くなったおばあちやんから聞いた話はこうでした。昔々、山の中に貧しい兄弟がいたそうです。弟のほうは盲目だったので、兄は一日中働いて弟に食べ物を届けていましたが、いつもいつも食糧が豊富にあるわけではありません。かろうじて一人分の食ペ物を持ち帰ると、兄は自分はもう食べてしまったから、といって弟にだけ食べさせました。

ところが弟のほうは、毎日芋みたいなものばかり食べさせるので、逆に兄を恨むようになっていたのです。目が見えないからといってこんなものを食ペさせて、兄はもっとうまいものを食べているにちがいない、と・・・。ここからは昔話ですからちょっと残酷。

ある晩、弟は寝ている兄の腹を裂き、自分の口にはけっして入らない米粒を探そうとするのですね。ところが出てきたものといえば、雑草や芋のツルばかり。わーっと泣き伏した弟はそのまま鳥になり、昼も夜も許しを乞いながら鳴き続けるようになったんだとさ。こんな話を聞いたもんだから、よけい身につまされるようになったのかもしれません。

でも、わたしにとってホトトギスは、山根が実をつけたことを教えてくれるありがたい鳥でもあるのです。山根の実は小さいので、近くを通りかかってもなかなか目につきません。ホトトギスの声を聞いてはじめて、子細に観察。ああ、あった、あった、となるんですね。そして収穫が終わるころには、あのせわしない特許許可局も、しだいに間遠になってゆくから不思議です。

カラスのヒナのキョロちゃんは食欲が落ちてきました。どうもそういう時期みたいです。熱心にエサを運んでいたオトナのカラスたちも、最近、落ち着いてきたみたい。同時に、ヒナが親といっしょに飛びはじめるようになりました。とはいっても、ご飯はまだ親から口移しでもらっています。

キョロちやんはといえば、野生の子供たちよりひと足早く、ひとりでご飯が食べられるようになっています。お気に入りは牛乳にひたしたパンで、雑穀、犬猫のドライフード、挽肉、ゆで卵の黄身など、いろんなものを並ペてみるのですが、べトべトのパンの入った容器だけ、いつも空になっていました。

いたずらのほうはますます盛んで、部屋の中にはいろんなものが散らかっています。はじめのうちは小物が専門でしたが、最近では大きなバスケットや時計、花瓶といったものまで転がっているんです。時計は落ちたショックで電池が転がり出し、それがいくら探しても見つからない。と思ったら、ソファのほころびに隠してあったりね。まあ、いろいろやってくれます。

それはいいんだけど、ちよっと期待はずれだったのは、ご飯を自分で食べられるようになったとたん、人を敬遠するようになってしまったこと。このあたりのカラスは都会にいるカラスとは別種。いわゆるハシボソです。嘴が細く、目もハシブトにくらべたら鋭くて、警戒心が強いんです。うちのファミリーも、事務局に来るファミリーも、5年もご飯をもらっていながら、そばへ行くと逃げますからね。それだけ野性的なのかもしれませんが・・・。

環境の差もあるのかもしれません。最近の東京都は鳥獣保護怯に違反して、恥じるそぶりも見せませんが、それまで都会ではだれも野鳥を迫害しなかった。それに反して田舎では、カラスは作物を荒らす害鳥。カラスを寄せつけないため、死骸に見せかけたビニール製のカラスが園芸店には売られています。それを畑のあちこちに吊すのですが、中には本物を晒している農家もあるぐらい。使ってはいけないはずの霞網でカラスを一網打尽を狙う輩もいますしね。

そりゃあ、警戒心も強くなるはず。それに加えてもうひとつ。ハシブトは煮ても焼いても食えませんが、ハシボソのほうは肉がうまいんだそうです。日本ではあまり食う人はいませんが、韓国では食うのがあたりまえ。

そんなことももしかしたら人が警戒される理由のひとつなのかもしれません。ともあれ、キョロちゃんの巣立ちももうすぐ。外のカラスが子連れのうちは攻撃されるかもしれませんから、子供たちが巣立ち終えたら窓を解放し、出入りを自由にしてやろうと思っています。

今週の野菜とレシピ

好子さんの玉葱が入ります。スナップエンドウも今週は増量してもらいましたから、湯がいたり妙めたり、あるいは卵とじにしたり、たっぷりとお楽しみください。

ニンジンもよくやく大きくなりました。葉っばのほうもご利用くださいね。ちりめんじゃこを油でよく妙め、きざんだ葉っばも加えていためます。ちりめんじゃこの塩分を計算に入れながら醤油で調味。仕上げに煎り胡麻をたっぷり加えてふりかけに … 。梅雨時のお弁当にも重宝します。

おかのりはおひたしにするとぬめりがあって、まるで山菜のよう。かき揚げにすると、海苔のような香ばしさになります。そのあたりがおかのりという名前の由縁なのでしようか。かき揚げを多めに作っておいて、翌日、残りを麺っゆでさっと煮て、卵でとじてもおいしいですよ。

春菊のリゾット。意外かもしれませんが、なかなか美味なんです。玉葱を弱火でじっくりバター妙め。小エビとベーコン、両方でもどちらか一方でもいいですから加えて妙め、生米を入れ、全体とよくなじんだら鶏ガラのスープを入れて煮ます。鶏ガラのスープが面倒なら水でもけっこう。そのかわり調味の際、コクを出すため、塩、胡根にオイスターソースを加えてくださいね。米が煮えてきたら小口切りにした春菊をどさっと入れ、ひと混ぜしたら火を止めて、パルメザンチーズをたっぶり加えてできあがり。春菊の香りがさわやかで、梅雨憂さ晴らしになりそうです。