年寄りになってゆくペットたち

2005年11月第2週

秋も深まってきました。日に日に暮れるのが早くなって、家に帰るころにはあたりはもう真っ暗。犬の散歩にも懐中電灯を持参するようになりました。

なにもかも溶かしてしまいそうな夕闇を、ときおり車のライトが切り裂いて通り過ぎます。焦げ茶色の犬は闇に溶けこんで、どこにいるのかわからなくなってしまいますが、まるで発光するかのように、暗がりにぼんやりと浮かびあがる大きな白いもの。地面に残る青草を食べる山羊の姿は、遠くからでもそれとわかります。

冬毛も生えそろってきたようです。犬や猫はそれほど目立たないのですが、山羊の内毛は真っ白なので、汚れた外毛とは対照的。そのグラデーションをブラッシングで解消するのも、この時期の楽しみのひとつです。ブラシをかけただけでこんなにきれいになるのか、とびっくりするほど艶やかな被毛に生まれ変わります。

当の本人も気持ちがいいらしく、目を細めて身じろぎひとつせず、ときどきクフーッとため息をついたりします。このクフーッを聞くのがたまらなく、こちらも微に入り細に入り、あらんかぎりのテクニックを駆使するんですね。かたわらにいる犬がヤキモチを妬きますが、犬猫のブラッシングはこんなに楽しくありません。喜怒哀楽の表現力は、やっぱり山羊が一等賞。表情が人に近いせいかもしれません。

高齢化が進み、刑務所が介護施設と化しつつあるという話を聞いたことがありますが、わが家のペット事情も例外ではありません。動物たちの高齢化は、人間より早いですからね。アラレちゃんのところでも、介護の必要な猫が一匹二匹と出はじめました。

上述の山羊のユーリも白内障のため、数年前から山歩きができなくなり、そのせいか加齢のせいかわかりませんが、足腰がすっかり弱くなりました。ユーリの柵は南向きのいちばんいい場所に、かなり広くとっていて、その中には急な斜面もあるので運動にはなっていると思うのですが、山羊はもともと不精な性質。猫とおなじで、必要がなければあえて運動しようなどとは思わないようです。おいしいものが生えてなきゃ、だれがあんな斜面を登るかという感じ。

それでも夏場はけっこう走りまわります。アブに追われるからですが、寒くなるとそれもいない。以前は山羊を追いまわす大きなアブを、わたしも目の敵にしていましたが、今では運動指南役として必要なのかもしれない、と思うようになりました。せいぜい斜面の上方に、寒さに強い牧草の種を蒔いておくぐらいの冬場対策。散歩に連れ出すのがいちばんなのですが、視力が弱くなっているので、外には出たがらないんですね。

耳も遠くなっているので、大声を出さないと振り返りません。草食動物は気配に敏感で、山羊も例外ではないのですが、こちらの足音にも気がつかず、ぽんと背中を叩かれると飛び上がって驚くしまつ。オオカミなどがいたら、とっくに食われているにちがいありません。毎朝、朝日にお尻を向けて日光浴をしている姿を見ると、10年前、ぬいぐるみのように愛らしかった子山羊が、つくづく爺さんになったなあ、と思います。

猫も一匹が爺さんになり、排便が困難になっています。拾ったときから後脚がわるかったので、交通事故の後遺症かもしれません。とにかく毎日、特殊な油を飲ませておかないと、獣医にうんこを掻き出してもらう羽目になるのですが、これがまた、人がスポイドを手にすると姿をくらましてしまうんですね。

もう一匹のオスはまだ若いのですが、交通事故で前脚がねじ曲がり、胸部の傷から血膿を垂らしているところを強制捕獲。家に連れ帰りましたが、脱走して近所の林の中を飲まず食わずで1週間。ふたたび捕獲に成功したときには、真綿のように軽くなっていました。その飢餓体験のせいだと思うんですが、わが家に慣れてくると同時に食べること、食べること。またたく間に9キロまで体重が増えてしまいました。抱きあげるにもひと苦労するしまつで、数年前からダイエット用の特別食を与えていますが、いっこうに功を奏さないまま現在にいたっています。

犬も爺さん。拾ったときの推定年齢が、獣医によると7~8歳でしたから、もう10歳を越えています。鼻面が白くなって、耳もいくぶん遠いようです。いちばん若いのは、この夏生まれたウサギのモモですが、これも10年後にはまちがいなく婆さんになる。ウサギが年を取るとどうなるか、それがちょっと楽しみでもあるのですが、そのころにはわたしのほうが婆さんになっているのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

雹にあたって弱っていたサニーレタスが、持ち直してきたようです。葉っぱも穴のあるものは取り除いてありますので、サラダやスープにご利用ください。

カブは厚めに皮をむいてスライスし、塩で揉みます。しんなりしてきたら軽く水洗いしてしぼり、レモンスライスと和え、オリーブ油と醤油をまわしかけます。サラダとお漬け物の中間みたいな料理ですが、和洋中いずれのおかずにもマッチします。愛媛の野口さんからレモンが届きましたので、カブ用にひとつずつプレゼントしますからね。

ター菜は小松菜に似た中国原産の青ものですが、小松菜よりやわらかく、味も濃厚。寒さに強い野菜で、今はおとなしく袋の中におさまっていますが、霜が降りるころには座布団みたいに広がります。株の根元の泥をよく落としてから、炒めものやスープにお使いください。

先週の春菊のサラダはいかがでしたか?わが家では、葉っぱをサラダやおひたしに使った残り、つまり茎の部分をアスパラガスのように利用しています。3~4センチに切りそろえ、数本ずつ豚肉で巻いてから焼いたり、衣をつけて揚げたり・・・。さっと湯がいて、バター炒めにしてもおいしいのでお試しください。

大根もだんだん太ってきました。先週は待ちかねたようにおでんを作りましたが、これを輪切りにして胡麻油を敷いたフライパンでじっくり焼いた大根ステーキ。すっと箸が通るようになったら、七味唐辛子と醤油をからめていただきます。少人数の家庭では、大根を煮たら余ってしまうし、かといって少量を煮たのではおいしくない。そんなとき、この大根ステーキは便利です。時間も短かくてすみますしね。

ようやく北海道は旭川から玉葱じゃが芋が届きました。来週はほくほくの男爵芋が入りますよ。