初冬のフクロウ・晩秋のカマキリ

2005年11月第3週

週末から気温が下がり、急に冬らしくなってきました。ずっとポカポカ陽気が続いていただけに、ふるえあがってしまいました。木枯らしも吹きましたしね。でも、これで冬野菜がおいしくなってくる。そう思うと、この寒さもありがたくなってきます。

木枯らしのせいか、木の葉も急に色づきはじめ、風に揺れる音も変わってきました。サワサワからカサコソという、乾いた音になるんですね。夜、布団の中でそんな音を聞いていると、うらさびしい気分になってきます。そういえば、虫の音もぱったり止んでしまいました。

春から秋にかけて、田舎の夜というのはけっこう賑やかなものなんです。カエルの大合唱にはじまって、夏の虫、秋の虫、それに混じってホトトギスやフクロウの鳴き声が闇の中から聞こえてきます。そういう息吹がぴたりと途絶えて、しんと静まりかえるのが冬の夜。

ときおり、そのしじまを引き裂くかのように聞こえてくるのが、世にもおぞましい叫び声。ギャーッともグエーッともつかない声の主はメスのフクロウで、子育てを終えたばかりの母親が、家族を遠ざけているのです。子供のみならず夫からも解放されて、ストレス発散。自由に夜空を飛びまわり、ネズミなどの小動物を捕まえて自活します。夫のほうもこの時期だけは、妻子を養わなくてすむというわけです。

わたしは自由、ギャーッという声は、これから暮れあたりまで続きます。年が明けるころにはまた静かになって、夫のもとに帰ったメスは巣穴で卵をあたためにかかるのですが、毎年、このギャーッにわたしはパワーをもらっています。今年も頑張っているんだな、と思うと、羨望まじりの勇気が湧きあがってくるんですね。わたしのあこがれの女性でもあります。

毎年、この声が聞こえるようになると、別の女性たちがやって来ます。産卵を終えたカマキリが、どういうわけかわたしの寝室に集まってくるんですね。寝室のあるところは、犬と山羊が自由に出入りできる土間があり、カラスのキョロちゃんが入れるように窓も開けてあるので、カマキリが入ってきても不思議はないのですが、寝室のドアは閉まっています。それなのに毎年、ベッドにカマキリがやって来るのです。たいてい翌朝には死んでしまいますが、翌日にはまた別のカマキリがいる。

一度など、わたしの枕の両側にオスとメスが一匹ずついて、その中間に頭を置いて寝たことがありますが、朝起きたらオスは食われてしまっているのでは、という予想に反して、どちらも仲良く死んでいました。産卵したメスは、もうオスを食べる必要がなかったのか、それともそこまでたどり着くのに体力を使い果たしてしまったのか・・・。それにしてもなぜ、彼女たちはわたしのベッドなんかを死に場所にしているんでしょう。

寝室はこれまでに二回、移動しています。でも状況は変わることなく、居間でも台所でも、家族のところでもなく、わざわざいちばん寝相のわるい住人のところにやって来る。これは謎です。たしかに夏の間、わたしは畑や庭先でかなりの数のカマキリと顔見知りにはなっています。虫を捕ってくれるので、感謝もしています。でも、だからってねえ。

もしかしたら、わたしの体臭がカマキリの嗜好に合っているとか・・・。草むしりをしているときなど、身体のどこかにくっついていたりしますからねえ。車の中にいることもありますから、要するにカマキリにもてるタイプということなんでしょうか。

なにはともあれ、もてるというのはわるい気がしないものです。死に場所にわたしのベッドを選んでくれたレデイたちは、丁重にもてなし、亡骸はわざわざ埋めないまでも、彼女たちの残した卵が地面に落ちたり、刈り取った草に混じっていると、あたたかく冬を越せるところに移してやるなど、彼女たちの苦労が水の泡にならないよう配慮しています。

その子供たちの一部が、来年また寝室にやって来る。生命の途切れることのない繋がりを教えてくれた彼女たちにも、わたし、ちょっぴりあこがれているんです。

今週の野菜とレシピ

白菜が入りました。ちょうど寒くなってきたので、鍋ものがいいですね。

ほうれん草のおひたし・ナムル風。ほうれん草は湯がいて食べやすい大きさに包丁を入れ、醤油と胡麻油で調味。切り胡麻をたっぷりかけると、目先が変わって売れ行きがよくなります。牡蠣もおいしくなってきましたから、ほうれん草といっしょにグラタンにしてもいいですね。

ごぼうといえばきんぴらですが、うちは年寄りがいるのでじっくり煮ふくめることが多く、その残りもので作るカツレツに人気があります。残ったごぼうに小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ、油で揚げますが、もともとやわらかく煮てあるので、強火で衣がカリッときつね色になればOK。梅干しを包丁で叩いてペースト状にしたものに、蜂蜜と水少々を加えたソースでいただきます。

サニーレタスといえば、サラダや焼き肉のつけ合わせ。でも使い切れないこともありますから、味噌汁やスープの青み、炒めものにもお使いください。チャーハンの仕上げに、細かくちぎったサニーレタスを散らして混ぜてもおいしいですよ。

来週は好子さんのキャベツが入ります。