巣立ち準備・カラスとツバメ

2005年6月第3週

いよいよ本格的な梅雨。

一日中降り続く雨をうっとうしいと思うか、人の気分を落ち着かせる鎮静剤みたいなものだと思うか・・・。日曜日に雨が降ると、ひさびさに農作業から解放されて、家の中をかたづけたり、犬や山羊にブラシをかけたり、日曜日がほんものの休息日になる場合もあれば、せっかくの日曜なのに洗濯物が乾かない、布団も干せない、なんてこともあるんですね。人はさまざま、暮らしもさまざまです。

一方、野菜はどうかというと、乾燥しはじめると虫が増え、葉っぱが穴だらけになってしまうので、雨が降るとひと安心。でも虫がいなくなるかわり、雨が続くと、今度は病気にやられやすくなるんですね。家の中にカビが発生するように、植物にもカビの仲間が寄生して、色によってウドンコ病、スス病、アカサビ病などと区別されます。人間に例えたら、手足にできる水虫みたいなものでしょうか。蒸れないように風通しをよくしたり、長雨のストレス解消にカルシウムの豊富な資材を与えたり、農家は雨の中でも忙しそうです。

ほどほどに雨が降り、ほどほどに気温が上がり、ほどほどに陽光が差すなんて、異常気象が平常化した今でなくても、大昔からそんな都合のいいものはなかったはず。毎年、気候の変化に対応しながら野菜を作っているわけですから、農業に関してベテランなどという言葉は存在しないのです。一生涯米を作り続けても、回数にしたらせいぜい50~60回。しかも毎年ちがった条件下。

そんなわけで、益子GEFの面々は新人揃い。だれよりも元気のいい野菜を作り続け、賞賛されてみずからもベテランを自認しはじめると、その瞬間から農家というのは転落するからです。ベテランだから、新人みたいな努力はしない。でも、自負は残っているので、作物の質が落ちてゆくのには気づかない。そういう例を、これまでいくつか目にしてきたので、わたしたちも農家もルーキーにこだわり続けます。

今年の梅雨ははじめての梅雨。夏もまた、生まれてはじめての夏になるでしょう。新鮮で、期待と不安の入り混じった気分。農家にかぎったことではなく、わたしたちもまた、はじめての季節を迎えることになるんでしょうね。

文字通り、はじめての季節を迎えているのがカラスの子供たち。うちにカラスがいるもんだから、外に出てもお仲間ばかり目についてしまうんですね。

冬の間、2羽でいちゃついていることが多かったカラスたちも4月の声を聞いたあたりからがっついて食料を集めはじめ、いよいよ今月、旺盛な食欲がおさまってきたと思ったら、子供が親といっしょに飛んでくるようになりました。道路わきの電線にも、カラスが3羽ずつとまっているのが目につきます。かならずといっていいぐらい、そのうちの1羽が親からエサをもらっていたりして・・・。

仲むつまじい光景ですが、そのうち子供にエサを与えなくなり、夏が終わるころには、テリトリーから子供を追い出しにかかります。子供が出て行くと、両親はほっとするのか、しばらくは単独行動が目立ちます。寝食は共にしていても、おたがいに好きなことをしているみたいな・・・。それが冬になると一変。また夫婦がべったり寄り添うようになり、あちらでもこちらでも濃厚なラブシーンを繰り広げるようになるんですね。

これがカラスの一年。そのいずれの時期にキョロちゃんを自立させるか、それが目下の課題ですが、真夏の日中、暑さに弱いカラスがあまり姿を見せなくなったころ、窓を開けて自由にさせてやろうかと思っています。うちのカラスたちのテリトリーに入るわけですから、いつでもOKというわけにはゆかないのです。かといって、元のテリトリーに放しても、いきなり自立は無理でしょうからね。

はい、そのキョロちゃん、先週は扇風機を器用に分解してくれました。キョロちゃんのいる部屋は、一部、物置にもなっているので、そういうものが並べてあるのですが、扇風機から布製のカバーを外し、留め金も外してしまって、金属カバーを下に落としてあったんです。それも1台だけではありません。わたしも掃除のときに外しますが、あの留め金、けっこうイライラするんですよね。

キョロちゃん、家電メーカーに就職内定。そういえば外にいるカラスも電気関係は好きなのか、子供はみんな電柱の金具をつついたりして遊んでいます。テレビのアンテナでも、若者はよく遊んでいますしね。ともあれ、一日中よく働いてくれるキョロちゃんですが、この蜜月も梅雨の終わりとともに終焉を迎えるわけでして、わたし個人としては、今年の梅雨がなかなか明けないことを祈っているしだいです。

ツバメの子供たちも親といっしょに飛びはじめました。今年は巣が居間の前になったので、はじめて巣立ちをするところを見ることができました。親鳥が巣の前でしつこく鳴いているので、何事かと思ったら、子供を促していたんですね。ほどなく1羽が飛び立って、あたりを一周。ネムの木でひと休みしている間に、親は巣にもどって来て、また呼びかけをはじめます。

もう1羽も飛び立って、次を待っていたのですが、もうもどって来なかったので、ヒナは2羽しかいなかったんですね。ツバメにしては少ない数ですが、途中で卵もろとも巣が落ちて、そのときの卵が6個。あわてて巣を作り直して産卵しましたから、それが精一杯だったのかもしれません。

ヒナが飛びはじめると、また猫がおしっこのたびに低空飛行で牽制されるようになり、みんな腰を落としてそそくさと茂みに隠れるようになりました。茂みに身を潜めながら、それでも隙あらば、と狙っている猫と、上空からそれを見つけて果敢に攻撃をしかける鳥。小さな猛獣・猫たちも、スズメには強いくせに、この小型戦闘機にはなかなか手が出せないようです。

今週の野菜とレシピ

エリンギは山形の大貫さんから・・・。捨てるところがほとんどなく、加熱しても目減りしないので、けっこうな量になります。大きいものは半分に切ってから、縦に裂きます。天麩羅、炒めもの向きですが、パスタにからめてもおいしいですよ。

きゅうりは失速気味なので、もうしわけありませんが、今週は2本ずつ。かぶや大根のサラダに、青みとして加えてください。

ニンジンの葉は、きざんでドライカレーやピラフに加えたり、スープの青みに・・・。これを混ぜこんだハンバーグも香りがよくて、人気があります。

おかのり。葉っぱのほうはかき揚げにして、ぬめりのある茎は湯がいてからきざみ、麺つゆに加えます。ワサビも添えて、これで蕎麦を食べてみてください。山かけ蕎麦も顔負けのおいしさです。

来週はいよいよ茄子ピーマンといった夏野菜が登場します。トマトも早く出てくるといいですね。