カラスの子

2005年5月第3週

早春に逆もどりしたかのような肌寒さ。先週末には遅霜も降り、定植して間もない夏野菜が被害を受けた模様です。

ただでさえ、今年は地温の上昇が遅く、タケノコは不作。野菜もすべて遅れ気味でした。タケノコの不作は米の凶作、という方程式を見つけてしまいましたからねえ。ちょっと気が重いのですが、視点を変えれば定期的な米不足は消費者の意識を変えてくれるかもしれません。というより2~3年、そういう状況が続いたら、消費者ばかりか政府の意識も変わるかも・・・。減反政策などというものも姿を消してくれるかもしれません。

減反、減反で田圃が減少。それが温暖化に拍車をかけているばかりか、山間の不便なところは真っ先に放置されるでしょう。日本中から棚田が姿を消して、その分土砂災害が急増しているのです。棚田の保水力、地震による揺れも吸収してしまうような底力を考えたら、補助金を出したところで大規模な土木工事にくらべたら、はるかに安上がりだと思うんですが・・・。

未だに、雑木林を潰して杉や檜に転換すると補助金が出ているぐらいですから、旧態依然のお役所にそんなこと、望めるわけがないんですけどね。

バードウィークは終わりましたが、あちこちで巣から落ちたヒナを見かける季節。わが家の軒下では、巣そのものが落ちてしまいました。

この春、帰ってきたツバメのつがい。去年の巣をそのまま使うか、新築するか、しばらく迷っていたようですが、結局新築はせず、古巣をリフォームすることになったんですね。けっこう横着なカップルみたい。それが先週、卵もろとも落ちてしまいました。

あーあ。いわんこっちゃない、と家人の反応も、今回はあまり同情的ではありません。カマボコの板に、急がば回れ、とでも書いて貼っておいたらどうだろう。いや、どうせカマボコ板を使うんなら、巣の支えにしてやったほうがいいんじゃない?

今、せっせと新居を作っているところ。また、洗濯物を干す場所が狭くなりそうです。

同じく先週、アラレちゃんが拾ってきたスズメのヒナが死にました。わたしと交代で、注射器のポンプを使ってエサを与えていたのですが、ろくに羽根も生えそろっていないヒナでしたから、無理があったんでしょうね。山鳩のヒナを育てたという自信が、脆くも崩れ去ってしまったしだい。

それから間もなく、今度はカラスのヒナ。好子さんの田圃のすぐわきの街路樹から落ちたんでしょう。車に撥ね飛ばされて失神しているところを好子さんが発見。道路わきの植え込みの上に避難させておいたそうです。

現場に行ってみると、意識を回復したヒナが路上を羽ばたきながら、よたよたと移動中。交通量が多いところですから、あわてて保護してきましたが、すぐにはそれがヒナだとは気づきませんでした。小ぶりのカラス、若いメスかな、と思ったぐらい大きくなっていたからです。よちよち歩きは事故のせい。ちゃんと飛べないのは翼に支障があるのかも・・・。

ところが子細に観察してみると、顔つきが妙に幼いのです。目も青みがかっているし、尾羽もオトナにくらべて短いみたい。そして決定的だったのが、酵素を飲ませるのに嘴をこじあけたとき、口の中が真っ赤だったこと。まだ子供だったんです。その瞬間、喜びと興奮で身体が震えましたね。

それというのも長い間、カラスを育ててみたくてしようがなかったからで、人生の幸・不幸はカラスのヒナに遭遇できるか否かにかかっている、とまあ、そんな極端なことを公言していたぐらいですから、周囲もみんな、おめでとう、よかったねえ、ついにやったねえ、と祝福してくれます。しかし、それが現実になったとたん、喜びと同時に大きな不安に襲われたのでした。

果たして、わたしがこの子を育てていいのだろうか。野生のものは野生に返してやるのがいちばんですが、そのとき、この子は学習不足で苦労するんじゃないだろうか。野生に返すといっても、いいかげんなやりかたでは殺すにひとしいわけですから、こちらの自己満足に終わらせてはけっしてならない、となると責任重大。どーんと重たいものがのしかかります。

オトナのカラスだったら、なついてはくれないかわり、傷が癒えたら元の場所に返してやるだけでいいんですけどね。ともあれ、身体は大きくなっていても、当分エサは自力では食べられないので給餌が続きます。8畳大の物置スペースと、それよりもう少し広いサンルーム。わたしの寝室を開放するとさらに広くなりますが、それがヒナのケージなので、飛行も歩行も訓練可能。だいぶ足取りがしっかりしてきました。隣室に犬がいますが、それは気にならないようで、猫が来ないかぎり動揺することもなさそうです。

でも、東南の壁一面が窓ガラス。にわかごしらえの手すりにとまって、食い入るように外の景色に見入っている姿を見ると、こちらまで切ない気分になってきます。テリトリーはちがうけど、このあたりのカラスたちとうまくやっていけそうなら、このケージを出入りしながら少しずつ自立できるかも・・・。

そんなわけで、ただいま育児に専念中です。

今週の野菜とレシピ

今週は絹さや、ハウスきゅうりが予定されていましたが、低温のため、出荷が遅れそうです。そのかわり、同じく温度不足で遅れていた山形のエリンギが、今週入ることになりました。

エリンギは底の部分を少し落としたら、あとは全部食べられます。切るというより縦に裂いて、油炒めして・・・。取り立てていうほどの味や香りはありませんが、食感のよさと、骨粗鬆症の予防になる点で近年、人気があるようです。パスタにからめてもいいですし、チンゲン菜といっしょに炒めてもおいしいですよ。

間引き玉葱。このあたりでは油炒めして、味醂と味噌をからめるのが一般的ですが、牛肉、または豚肉といっしょに炒め、生姜醤油で調味してもさっぱりして美味。肉類がダメな方は、厚揚げを1センチぐらいの厚さに切って、両面をこんがり炒め、いったん取り出して、3センチ前後のザク切りにした間引き玉葱を油炒め。八部通り火が通ったら厚揚げをもどし、豆板醤、オイスターソース、味醂と味噌で調味して、仕上げに粉山椒をたっぷりふります。ちょっぴり四川料理風。肌寒い日はこれがおすすめです。

山東菜、別名しろ菜。これはクセがないので、葉先をリーフレタスの代用にして、茎の白い部分は味噌汁に使ったり、茹でて胡麻和えにしたり、どうにでもなる万人向けの葉ものです。わが家では煮魚のとき、残った煮汁でこれをさっと煮て、つけあわせにもしています。

かぶもまたオールマイテイー。即席漬け、煮物、スープなどなど、なんにしても甘みがあっておいしいものですが、これを炒めたことってある?スライスしたかぶをバターでも胡麻油でも、お好みで油炒めして、塩、胡椒に醤油を少々。仕上げに葉っぱを加えて、余熱で調理します。ご飯にもパンにも合って、すぐに作れるので朝食にいいですよ。

小松菜の邪道和えというのが、今、うちで流行っているのですが、どういうものかというと、小松菜を湯がいてお湯を切ったら弱火で水分を飛ばし、火を止めてからバターを入れてからめるだけ。かぶと同様、塩、胡椒、醤油少々で調味します。うちの野菜ぎらいの寝たきり老人が、これなら食べてくれるんですね。しょうがないなあ、などといいつつ、けっこう気に入って作っています。

来週はいよいよ絹さや、きゅうりが出てきそう。今週も少量ずつになりそうですが、入荷できればお分けしますね。