ウサギのモモ

2005年9月第1週

台風11号。このあたりは雨雲の影響があっただけで、風もたいしたことはなく、台風というより梅雨に逆もどりしたかのような数日間でした。

おかげで芽を出したばかりのニンジンも元気になったよう・・・。今年は例年より早く、大根やほうれん草といった冬野菜の種蒔きもできそうです。この時期は乾燥が続きやすいため、蒔きたくてもなかなか種が蒔けなく、お天気とにらめっこ、なんてことが多かったんですけどね。

被害に遭った方には申しわけないのですが、今回の台風に感謝。できることならこの雨を、渇水に悩まされている四国の仲間たちにも分けてあげられたらなあ、とも思いました。

台風前夜、わが家にニューフェースがやって来ました。正確にはわたしが持ち帰ったので、キャリーバックをみつけるなり家人が、今度はなに?まあ、わたしもいろいろ持ち帰ってますからねえ、家人が「また?」というのも無理はないのかもしれませんが、子供時代の記憶がよみがえるのか、わたしもそういうときは挙動があやしくなるようです。

子犬や子猫を学校帰りに連れ帰っては、「またそんなもの連れてきて」と叱られ、泣く泣く元のところに置いてきた記憶。だれにでもありますよね。オトナになったら好き放題できる、と思っていたのに、オトナになったらなったでいろいろ制約があって、アパートで猫は飼えない、犬はダメ。ついに禁断症状が出そうになって、露天商からテーブル・ウサギなるものを買ってしまったことがあります。ウサギなら声を出さない、近所にバレない、と思ったんですね。

ところが、大きくならないはずのテーブル・ウサギはたちまち巨大化。おしっこで畳は腐る、電気コードはみんな噛み切る、布団はかじるで、とうとう手に負えなくなって、手放したことがあります。世田谷のはずれ、広い野原のあるところに放して,野生化させたつもりでしたが、今にして思えば殺したも同然。室内で飼われていたものが、そう易々と野生化などできるわけがなく、できたらできたで生態系を狂わしかねない。ウサギにしては警戒心が希薄でしたから、犬にでもやられていたかもしれません。

以来、ウサギは禁物。罪悪感が先立つからですが、寺内養鶏所では毎年ウサギが子供を産みます。だいたいもらい手がつくのですが、今回は1匹が残ってしまいました。いつもケージの隅にうずくまっていて、今日はいなくなってるといいな、と思いながら行くのですがいるんですね、おなじところにおなじ格好で・・・。ついにそれを引き取ってしまいました。

おそるそる家人がキャリーバッグの中をのぞきます。爬虫類系とでも思っていたのでしょうか。ウサギとわかるとホッとした顔になって、さっそく名前をつけなくちゃ・・・。牛みたいな色(黒毛和牛?)をしているからモーちゃん、モーモー、それがモモとなって落ち着きました。懐から時計を取り出して、お茶の時間に遅れる、と駆けだして行くウサギではなく、時間どろぼうと闘う少女・モモ。ミヒャエル・エンデが主人公につけたぐらいですから、わるい名前ではないはずです。

小さなケージの中しか知らなかった子ウサギは、室内に放たれたとたん、駆け出しては跳びはね、跳ねては駆けまわり、ちょっと興奮気味でした。家具の裏側に入りこんだと思ったら、わた埃をいっぱいつけて出てきたりして、掃除屋のダスキン・ウサギなんて異名をとるようになったりして・・・。フローリングの床は具合がわるそうなので、今は玄関先の娘の陶芸コーナー兼、観葉植物置き場。床が大谷石なので動きやすく、どこでおしっこをしても大丈夫。そこを住処に、鉢植えを次から次と坊主にしています。

鉢植え対策は霜が降りて、野外に置けないものが加わるようになったら真剣に考えるとして、当面はモモ姫がすくすくと成長し、万が一、夜中にうちのオス猫どもと遭遇したら、などという心配から解放されること。わが家に来てちょうど1週間になりますが、そういえばひとまわりぐらい体が大きくなったような気がします。

今週の野菜とレシピ

朝夕すずしくなってくると、茄子の生育に時間がかかるようになり、その分味が濃くなります。毎日のように食べても飽きないのは、茄子料理のレパートリーの広さもさることながら、口にするたび、味が濃厚になってくるからかもしれません。

というわけで、今週は茄子特集。思いつくままに挙げても、焼き茄子味噌炒め蒸し茄子鴫(しぎ)茄子てんぷらグラタンムサカなどなど・・・。和洋中いずれの料理でも、添えものではなく、主役クラスで登場します。わが家でも、いちばんよく食べている夏野菜がこれなんですね。

で、今週のレシピは茄子カレー。簡単でボリュームがあって、老人から子供まで人気のあるメニューです。まず、鶏肉を茄子1袋に対して400~500グラム用意します。もも肉なら大きめのぶつ切り、手羽やウイングステイックならそのまま、ニンニクと生姜のすりおろし、塩、カレー粉、植物油少々をからめておきます。塩はちょっと多すぎるかな、と思うぐらいまぶしてください。冷蔵庫で数時間寝かせますが、数日にわたっても大丈夫。

玉葱大1個は粗いみじん切りにして、厚手の鍋で炒めます。玉葱が透き通ってきたら鶏肉を入れ、表面が白くなってきたら茄子5~6個を太めの輪切りかぶつ切りにして加え、油と調味料をからめたらトマトジュース200㏄、トマトピューレなら100㏄入れ、蓋をします。弱火でおよそ30分。茄子がとろりとしていればOK。塩味を調整し、辛みが足りないと思ったらカレー粉か唐辛子を足し、醤油少々で全体をまろやかにまとめます。

茄子、ピーマン、オクラなど、夏野菜を素揚げして、唐辛子少々を加えた麺つゆに漬けた揚げびたしも、油を使っているわりにはさっぱりしておいしいですよ。