スズメとツバメとカラスたち

2005年4月第4週

山間にもツバメが帰ってきました。

梢や電線に勢揃いしたツバメたちが、ペチャクチャおしゃべり。昨年の古巣をそのまま使うか、新築するか、議論を重ねていたのでしょうか。結局、新しくすることにしたらしく、軒下のあばら屋は解体され、巣作りがはじまりました。

タイムの茂みに身を隠し、日がな一日様子をうかがっているのがわが家の猫ですが、ちょっと姿を見せるとツバメたちの威嚇に合うみたい。営巣中のカップルだけでなく、隣近所まで加勢して、猫の顔面すれすれに低空飛行するのです。勇敢ですね。さすがのネズミ取り名人も、すごすご退散。ネズミどころか虫も殺さぬオスどもは、おしっこにも苦労するようなありさまです。当分、ひなたぼっこはガラス越しで我慢してもらわなくっちゃね。

以前ならツバメが巣作りをはじめると、スズメどもが集まっていやがらせをしたものですが、ここ数年はなくなりました。

スズメの気持ちもわからないではないのです。よそ者が自分たちのなわばりにやって来て、繁殖をはじめるわけですから・・・。しかも自分たちが営巣すればいやがるくせに、なぜか人間どもはツバメを歓迎するのです。そりゃあ面白くないでしょう。だから寄ってたかってツバメの巣を落としにかかる。

それが姿を見せなくなったのです。スズメがいなくなったわけでは、もちろんありません。カラスにご飯をあげるとき、スズメたちは屋根のふち数メートルにわたって勢揃いしているんですから・・・。カラスの食べ残しを頂戴するために、早朝からお行儀よく並んでいたんですね。その愛らしさに感動。それからスズメの喜びそうなもの、カラスが啄むには細かすぎるものをいっしょに撒くようになりました。

以来、わるさをしなくなったみたい。こういうの、もしかしたら賄賂っていうのかもしれませんが、贈賄に弱いのは人間だけじゃないみたい。スズメはそれほど目立ちませんが、カラスは身体が大きいだけに、敵にまわすと被害もそれだけ大きくなります。うちの畑から、細い道一本へだてたところにあるのが地主の畑。ほとんど地続きみたいなものですが、おなじようにトウモロコシの種を蒔いても、隣ではネットを張っておかないと種を食べられてしまいます。ようやく芽が出て生育。ところがトウモロコシに実が入ってくると、またしても隣が食害に遭うんですね。

なんでそっちは食われないんだろ。農薬のせいかなあ。なに撒いてんだか教えてくれないか、と毎年のように聞かれます。そんなもん、撒くわけないだろ。でも、地主の婆ちゃんにはそうとしか思えない。だって、うちのトウモロコシには虫もついてないのですから・・・。それはカラスが取ってくれる、などといっても信じてもらえるわけがなく、ほんと、返答に窮してしまいます。

トウモロコシだけでなく、婆ちゃんのところでは枝豆も落花生もアンズも柿も、ことごとくやられるのです。それは婆ちゃんがカラスの姿を見かけるたびに、箒や鎌をふりまわしながら、コンチクショ、コンチクショと叫んでいるからだと思うんですね。賄賂の是非はともかくとして、野生はぜったい敵にまわさないほうがいい。共生できるんだし、それができなければ結局自分の首をしめることになるんですから・・・。

益子GEFのメンバーではありませんが、やはり県内で有機農業をしている方に先日会って聞いた話。カボチャに穴を空けるコオロギに手を焼いていたら、お父さんが教えてくれたそうです。コオロギは米ヌカが大好き。だから米ヌカに農薬を混ぜて、カボチャのまわりに撒いておけばいい、と・・・。

米ヌカが好物なら、なにも農薬など混入しなくてもカボチャに害はないはずだ、と思い、その通りにしたら、コオロギは喜んで米ヌカだけを食べ、カボチャは被害を被らなかったそうです。いい話を聞いた、と思いました。わたしも数年前、カボチャを作ったことがあり、冬至用に300個ちかくを納屋に転がしておいたところ、半分以上コオロギにやられてしまった経験があるからです。米ヌカという手があったんだ。

ところがこの話には続きがあります。農薬抜きの米ヌカを畑に撒いた青年は、お父さんと大げんかになったというんです。バカモンが、コオロギなんか喜ばしてどうするんだ。コオロギだって喜ぶ権利があるはずだ、カボチャが無事だったんだからいいだろう。

バカモンが、それじゃコオロギが増えてしょうがないだろう。云々・・・・。彼はまじめな顔で続けます。有機農業の敵は虫などではありません。家族です。

苦笑しながら、地主の婆ちゃんのことを思い出してしまいました。あの婆ちゃんが家族じゃなくてよかったあ、ってね。

今週の野菜とレシピ

今週もタケノコが入ります。先週より大きくなっていると思います。タケノコは届いたら、その日のうちに添付の米ヌカといっしょに湯がき、竹串がすっと通るぐらいになったら火からおろし、そのまま冷ましてください。水を毎日取り替えると、2~3日は大丈夫。心配な向きは水を張った容器に入れ、冷蔵保存してください。

先週は若竹汁、煮物と定番を楽しまれたでしょうから、今週はちょっと変わったところでタケノコ餅。これは大根餅をヒントにしたもので、作ってみたら大ヒット。以来、わが家では欠かせないメニューになっています。

用意するものは茹でタケノコの底にちかい部分、干し椎茸、小麦粉と片栗粉。まず干し椎茸をぬるま湯でもどし、タケノコをスライス。さらにそれを細く切ります。干し椎茸も細かくきざみ、タケノコといっしょにもどし汁に酒、醤油、砂糖少々で煮ふくめます。これはたくさん用意して、半分はタケノコご飯にしてもいいですね。その間に、別の鍋に鰹節、または煮干しで濃いめの出しをとっておきます。

ボウルに小麦粉と片栗粉を同量ずつ入れ、天麩羅の衣より濃くなるように荒熱のとれた出しでのばし、煮ておいたタケノコを加えます。衣の多すぎるかき揚げみたいな状態になればOK。胡麻油をひいたフライパンにスプーンで落としながら弱火で焼きます。できたてを芥子醤油をつけてどうぞ。表面カリカリ、中はもちもち、タケノコさくさく・・・。おいしいですよ。

タケノコの上半分は、土佐煮か木の芽和え。添付の山椒の葉をすり鉢で擂りつぶし、味噌と味醂、砂糖を加えてのばし、タケノコに和えたのが木の芽和え。土佐煮は出し汁に酒、味醂、醤油を入れ、煮汁がなくなるまでタケノコを煮て、削り節をからめたもの。

木の芽和えはできたてしかおいしくありませんが、こちらのほうは日持ちがよく、お弁当にも入れられます。

山ウドも入りました。これは天麩羅が一般的ですが、炒め煮にしてもほろ苦くておいしいものです。山ウドを半分ぐらいの長さに切って油炒め。そこに出し汁をカップに半分ぐらい、醤油と味醂を加えて、汁気がなくなるまで煮ます。木の芽和え同様、味醂か砂糖で少し甘めにするのがコツ。ウドの香りが全身に広がって、いやでも身体が春に目覚めそうです。