福知山線の事故

2005年5月第1週

山間ではもう田植えがはじまりました。平地に比べて水が冷たいので、ひと足早い田植えになるんだそうです。

ゴールデンウイーク中、益子の町中は陶器市でごったがえします。人口二万人余の小さな町に、それを上回る人が連日押し寄せるのですから、どこもかしこもラッシュ状態。最近はナビの普及のせいか、農道にも他府県ナンバーの車が入ってくるようになりました。品川ナンバーの田舎モンが、いつになく田植えでにぎわう農道銀座をわがもの顔で通り抜けて行くんです。

それだけでも感じわるいのに、急に徐行しはじめて、なにごとかと思ったらゴミをポイ。こちとら、てめえらが食う米を作ってるんだぜえ、この罰当たりが・・・。後ろの車内でわめいても、前の車には届きませんが、声を出さずにはいられない。イヤーな感じの朝でした。

先週後半は初夏どころか、いきなり真夏日。30度を超えたところもあるようで、人だけでなく野菜もびっくり、げんなりしたにちがいありません。わたしなども長袖のシャツを脱ぎ捨てて、なりふりかまわず下着姿になりましたが、脱ぎ捨てるシャツのない野菜はかわいそうですね。

ほんと、いつもいってることですが、暑いか寒いかの両極端。ほどほどの心地よい気候というのがなくなってしまいました。たぶんそれは、人がほどほどという匙加減を忘れてしまったから。気候が人の営みに大きく影響されていることは、前にもお話しましたよね。人の意識がほどほどの域を超え、きりきりと右巻きのネジとなって大気を締めつけると、それを修復するために左巻きの台風が発生する。台風の手に負えなくなると地震が発生。それでもダメなら火山の噴火、と・・・。

災害とわたしたちは称していますが、これは地球の自己防衛。やむを得ない手段だったことがわかってきたそうです。台風などというのは、いってみれば地球の風邪みたいなもので、それで身体調整していたわけです。人間同様、地球だって発熱するし、くしゃみや咳も出るというわけ。それを我慢して、平穏な気候ばかり続けていたら、地球はある日突然爆発し、わたしたちもろとも宇宙の塵と化してしまうというわけです。

それもこれも人類がほどほどで満足できず、もっと便利に、もっと豊かに、もっと快適に、とあくせくするから・・・。いい加減にせい、とはだれもいわない。いい加減の域はとうに超えているのに、それに気づいていないからです。諸悪の根元は、業績がつねに右肩上がりでないと成り立たない、という無理な仕組みに支えられた資本主義という経済構造。要らないものまで作って売るし、売れなくなれば人のものを壊してまで売るという、よく考えたらかなり滅茶苦茶なシステムですが、だれもそんなこと指摘しないでしょ。初期は有効だったかもしれませんが、もう通用しなくなっているんです。

ほどほと、適度、いい加減。それがもし許されていたら、JR西日本の事故だって起こらなかったのでは・・・。福知山線という赤字路線が、阪神淡路地震で私鉄の復興が遅れたため、にわかに脚光を浴びるようになり、今や私鉄と競合する路線にまでなった。

よかったじゃないですか。でも、そうなったらそうなったで、今度はなにがなんでも私鉄に勝たなければいけないようになるんです。そのためには一分一秒を争わなければならない。きりきりとネジが食いこむ音が聞こえてきそうです。

利用者のネジも巻かれていました。すこしでも早く目的地に着きたい、という願望です。そしてあの大惨事・・・。人災もまた、起こるべくして起こるものだったのかもしれません。天災も人災も、被害に遭われた方には気の毒ですが、バランスの維持のためには不可避だったのは・・・。

これを機に、万全の安全対策がとられるようになったとしても、右巻きのネジがゆるまないかぎり、おなじようなことがあちこちで起こるでしょう。ひとり経営者の意識だけでなく、わたしたちみんなの意識に隠れているもの。たとえば混み合ったスーパーのレジで、つい感じてしまうイライラとか、急いでもいないのにエスカレーターを駆け上がってしまう習性とか・・・。微力とはいえ、こういうのもネジを巻く力のひとつにちがいありません。わたし自身、思いあたることがいくつもあって、反省することしきりです。

あらためて犠牲者のご冥福をお祈りします。わたしもまた、小指程度の力とはいえ、あの事故に荷担するひとりだったんでしょうから・・・。

今週の野菜とレシピ

お待ちかね、春大根の登場です。季節柄、大根おろしがおいしそうですね。大根葉はさっと湯がいて、細かく刻んでから塩もみ。しらす干し、煎り胡麻といっしょにご飯に混ぜると、彩りもきれいな菜飯になります。

ルッコラは胡麻の香りがさわやかな、生食用の葉ものです。生ハムでくるんだり、モッツアレラチーズといっしょにドレッシングで和えるイタリア風サラダだけでなく、カリカリに炒めたちりめんじゃこや、スクランブルエッグやゆで卵と合わせても美味。オリジナルサラダができたら、わたしにも教えてください。

春ネギを斜めに包丁を入れ、いただきものの牛肉といっしょに炒め、生姜醤油で調味したら、さっぱりした仕上がりになりました。豚肉や、肉の代わりに油揚げを使ってもイケると思います。生姜はたっぷり使ってくださいね。

ネギの股の部分。白いところと葉の中間の部分ですが、ここがいちばん匂いが強いので、わたしは料理には使わず、ためておいてネギ油を作ることにしています。小鍋にネギを入れ、菜種油をひたひたまで入れて弱火にかけ、ネギがこんがり色づくまで20~30分。油が冷めてから小瓶に移します。これは炒めものや、魚介類の中華風サラダなどに使っています。

あぶら菜特有のほろ苦さがおいしいのが、葉先のちぢれたアートグリーン。炒めたり、スープにしたり、ほとんど毎日食べていますが、身体が求めているんでしょうか。これは飽きません。冬の間、高カロリーになりがちな食事で蓄積された毒素を抜くのが、あぶら菜や山菜のほろ苦さ。なんという成分なのかは知りませんが、せっせと毒抜きをして、初夏の陽気に備えてください。