常温動物の夏

2005年8月第1週

心配されていた大型台風が海上にそれたおかげで、雨もたいしたことはありませんでした。しかし、台風が通り過ぎた翌日から、光の色ががらりと変わって、青い空、白い雲、植物たちが地上に落とす濃い影と、絵に描いたような夏景色が広がっています。あれは夏を運ぶ台風だったんですね。

暑い。でも、この夏の光を浴びた植物と、灼けた土の上の黒い影のコントラストが強烈すぎて、生命が満ちあふれているにもかかわらず、廃墟にも似た冷たさが漂いはじめます。晩秋の落ち葉より、むしろこの時期の光と影のほうが、移ろいやすい生の儚さを感じさせるのかもしれません。ことに真昼の町中は人影がなくなって、まるでゴーストタウンのよう。強すぎる光は、逆に深い闇を生み出すのかもしれません。

急に暑くなったものですから、人も犬猫も食欲不振でバテ気味ですが、ひとり年老いた山羊だけがせっせと草を食んでいます。

でもね、山羊もほんとうは暑さは苦手なんです。冬には強いんですけどね。夏の日中は、高床式の縁の下でうつらうつら。犬も土間を掘って、トンネルを完成させたらしく、風通しのいい縁の下にもぐりこんだきり。散歩に出るのも不承不承という感じになりました。まあ、あんな毛皮をまとっているのですから、わからないでもないのですが・・・。

一般に常温動物は、わたしたちも含めて暑さには弱いようです。暑さばかりか、虫も多くなってきますから、絶えず痛痒感に悩まされることになりますしね。山羊が昼間、動きたがらないのには虫の活動も関係しているようで、アブが出てくると室内や縁の下に逃げ帰ります。近所に牧場があるせいか、牛アブと呼ばれる巨大なヤツがいて、これに刺されるとほんとうに痛いんです。わたしも経験がありますが、まるで注射でも打たれたみたい。

鳥類も常温動物ですから、暑さは苦手。とくに体の大きいニワトリやカラスなどは、気温が上がると口を開け、ハアハアとあえぐように呼吸します。キョロちゃんが室内にいた頃、不自然な物音がするのでなにかと思ったら、暑さにあえいでいたんですね。外で見かけるカラスたちも、大きく口を開いています。それに反して活発なのが変温動物。カエル、ヘビ、トカゲに加えて、昆虫類が元気になります。

でね、思ったのです。夏はいさぎよく、爬虫類、両生類に世界を明け渡し、わたしたち常温動物はひっそり呼吸だけしていればいいんじゃないか。冬の間、かれらがそうしているようにです。冷房まで入れてあくせくしても、ますます気温を上げるだけですしね。昼間はそれこそ犬みたいに縁の下でごろごろして過ごし、日が暮れて涼しくなったこ

ろ、畑から野菜を取ってきて食べて寝る。それが正しい夏の過ごしかたではないだろうか、とうだるような暑さの中で考えたのですが、夏休み中の子供がふと目覚めたら、あたりがミニ・ジェラシックパークになっていた、なんて楽しそうじゃない?それに人類の活動が半減したら、世界はかなりクリーンになりそうですしね。

夏休みを利用して、愛知県で開催されている「愛・地球博」にお出かけの方もいらっしゃるかもしれません。その会場近くにお住まいの会員のMさんから、ぜひみなさんに伝えてほしいと、こんなお電話をいただきました。

会場の設営中、オオタカの巣が発見され、急遽工事が中断されたことがニュースになりましたが、そのときすでに自然林はほとんど破壊されつくしていたんだとか。あれだけの会場ができるのですから、ある程度のことは予想していたとはいえ、近隣の住民は大反発。だれがあんなところに行くものか、と示し合わせているんだそうです。

博覧会の開催後も、会場内のミツバチの巣が強制撤去されたり、ツバメが営巣すれば糞が落ちると、それも撤去。いってることとやってることが大ちがい。まちがっても暑いさなか、そんなところに足を運んで無駄骨を折られませんように、ということでしたので、参考にしていただければさいわいです。

ま、わたしなどは博覧会と聞いた時点で、眉に唾をつけるタイプの人間なので、はなから出かけて行く気も、余裕もないのですが、要するに暑いときは人混みなど避けて、ひっそり暮らせということなのでしょう。でも、子供たちには、なかなかわかってもらえないかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

好子さんのトウモロコシが再登場。前回のトウモロコシは、かなりアワノメイガの幼虫にやられたようですが、今回は夏の光に力を得たのか、虫も少なく、ひとまわり大きくなったみたいです。

オクラもようやく実をつけはじめました。さっと湯通しして小口切り。鰹節と梅醤油で和え、ご飯にのせると食欲不振もなんのその。活力がわいてきます。

モロヘイアも同様、ぬるぬるパワーで夏バテに対抗。ぬるぬるが苦手な向きはかき揚げにして、サクサクした食感をお楽しみください。また、揚げると湯がいたり、スープにしたときには感じられない、お茶の葉のようないい香りがします。

お手頃サイズのミニかぼちゃは、揚げても、煮ても、蒸してサラダにしてもよし。実をくり抜いて、皮の部分を容器にしてもかわいいですよ。