この国ではみんな大好き枯れ葉剤

2005年8月第3週

お盆のころになると、毎年ペルセウス流星群がよく見え、昔はそれをお盆に帰ってくる死者の魂かしら、などと思ったりしたものですが、先週は曇天続き。ほとんどお目にかかれませんでした。

厚い雲に太陽光がさえぎられても、暑いことに変わりはありません。蒸し風呂みたいな高温多湿。それに反して地面はひからび、地中もからからに乾いていたのですが、ようやく雨に恵まれました。とはいっても1回かぎり。県北ではけっこう降っているようなんですけどね。

乾ききった地面に水分が補給されると、それまで鳴りをひそめていた草の種がいっせいに芽を吹きはじます。無数の青い点が畑にひろがって、みるみるうちにそれが大きくなってゆく。そうなる前に農家は耕耘機を入れたり、鍬で土寄せをしたり、しょっちゅう土を動かしながら草を防除しているのですが、ちょっとでもそれが遅れると草はぼうぼう。

その草の中にいろんな虫がいて、それを補食するカエルやカマキリ、さらにそれを狙ってくるヘビや大ススメバチと、そこは小さなジャングルと化すのです。そういう小さな生態系をどうするか。きれいに草の刈られたところは空疎で貧しい、という意見の人もいるのですが、わたしたちはそういうところを農地にしたり、家を建てて住みついたりしているわけです。せめてもの罪滅ぼしにそういう空き地を残しておくか。でも、庭や農地はきれいになっていたほうが気持ちがいいし、あたりの空気も凛とします。

いけないのは除草剤が撒かれているところ。そういう場所、田舎にはけっこうあって、お婆さんがマスクもなしに薬剤を散布している光景もめずらしくありません。除草剤というのはとても高価なうえ、リスクも大きい。でも、不思議とみんな抵抗がないようで、あたりまえのように使っています。

そういうところがイヤなのは、草が不自然に枯れて醜いというだけでなく、動植物の阿鼻泣喚。苦痛や悲鳴が重苦しくたちこめているからです。強い酸に身体を灼かれる植物のみならず、虫やカエル、さらには地中のミミズ、バクテリア類が身をよじって死んでゆくという、まるで地獄絵図のような世界。知らずに迷いこんだ犬や猫、小さな子供にまで牙をむきかねません。

それにくらべたら,刈りこまれた草っ原は殺風景どころか、むしろ豊かな世界といえるかもしれません。虫もカエルも一時的に避難すればすむことですし、草はまたすぐに背丈を伸ばす・・・。でも、実際は農地といい、あぜ道といい、いたるところに除草剤が散布され、この事務局に近い空き地も一面、焼け野原のようになっています。文字通りの殺風景で、空気までが死んでるみたい。

ベトナム戦争時、アメリカ軍が使用した枯れ葉剤。非人道的、残虐、と世界中から非難されたものですが、その総量の数百倍にもなる枯れ葉剤がこの国では国民の手で、自国の大地にばらまかれています。ホームセンターへ行けば、かならず園芸コーナーには並んでいますしね。どんな劇薬も、日常化すれば無害になるとでもいうのでしょうか。

先週、行方不明とここに書いたわが家の猫は、除草剤を撒いたばかりの空き地を通過。それを発見してやれなかったばかりに、のたれ死にさせてしまいました。ああいう薬剤を吸引すると、はじめに神経がやられるらしく、歩けなくなってしまうのです。山の中ばかり探しまわって、意外に近いところにいたのには気づかなかった。後悔ばかりが残っています。

今週の野菜とレシピ

目新しいものはありませんが、夏野菜の味が濃厚になってきたような気がします。とくに茄子など、お盆を過ぎたあたりから味がのってくるので、焼き茄子がおいしくなります。焼き茄子は皮をむくのがたいへんですが、まな板にのせて荒熱をとってから、流水で手指を冷やしながら皮をむくと比較的簡単です。熱いからといって水に浸けてしまうと、せっかくの旨みが薄れてしまいますから、めんどうでも上記の要領で作ってくださいね。

本格的なゴーヤ・チャンプルーを作ろうと思ったら、豆腐の水切りがちょっとめんどう。沖縄のようなかたい豆腐は手に入らないので、重しをして1時間ぐらい置いた豆腐を使います。でも、豆腐を使わないゴーヤのオムレツ風なら、もっと簡単でおいしいですよ。

ゴーヤは縦半分に割って種を出し、スライスします。豚バラ肉も小さく切って炒め、焦げ色がついてきたらゴーヤも加えて炒めます。味つけは塩とオイスターソースのみ。最後に溶き卵でまとめるだけですが、チャンプルーよりマイルドな仕上がりで、子供たちにも人気があります。

ツルムラサキは調理の前に茎と葉を切り離しておくと、湯がきやすくなります。油炒めにするときは、茎に斜めに包丁を入れ、食べやすい大きさにしておきます。肉とも魚介類とも相性はいいですが、乾燥したサクラエビを胡麻油でよく炒めてから、ツルムラサキを加えても、ちょっぴりエスニック風で美味。塩、胡椒して、あれば仕上げにナンプラーをたらしてください。

空芯菜ニンニクとの相性が抜群ですから、かならず炒める際には使ってくださいね。

オクラは乾燥に強いものですが、それにしても雨が少なすぎたのか、一部スジっぽい、かたいものが混じることがあるようです。これは外見ではわかりづらいので、その分増量してあります、と好子さんから・・・。かたいものも小口切りにすれば、スープなどには使えます。

お知らせ

Bセットの方には冬瓜が入ります。びっくりするような大きさかもしれませんが、中綿と種を取り、厚めに皮をむくと、それほどでもなくなってしまいます。さらに加熱すると、とろけるようにスープと一体化しますから、多すぎるぐらいがちょうどいい感じになります。

冬瓜そのものは味も香りも淡泊なので、鶏でも鰹節でもけっこうですから、濃いめの出しをとってください。味つけは塩と、香りづけの醤油少々で・・・。中国ではこれにとろみをつけ、身体を冷やす冬瓜をあつあつで食べる習慣がありますが、これが避暑法なんだそうです。でも、わたしは日本人なので、冷たい冬瓜スープのほうが好きですが、冷たくしたかわり、おろし生姜を加えて、身体を冷やしすぎないようにしています。

中国式でも日本式でも、冬瓜スープで夏バテを予防してくださいね。