ヘビの脱皮

2005年6月第4週

紫陽花の色のように天気が変わります。梅雨寒が一転して蒸し風呂になったかと思うと、急に風が強くなって夕立のような雨が降ったり・・・。

農作業の予定が立てにくく、今週、じゃが芋を出荷する好子さんなど、四苦八苦している模様。根菜にかぎらず、野菜が濡れていると傷みやすくなりますから、収穫を早朝にするか、前日の夕方にすませておくか、なかなか判断がむずかしそうです。

箱詰めする側の判断もそう。クール便にするか、蓄冷材を入れて普通便で出すか・・・。全部クールにしておけばまちがいないのですが、できるだけ輸送経費は節約したいので、ついつい思い悩むことになるのです。天気予報とにらめっこの毎日ですが、これがまたアテにならないときています。あーあ、いっそ夏になってしまえば、しまった、クールになんかしなきゃよかった、なんて細かいことをいわなくてすむんですけどね。

世知辛い話になってしまいましたが、もうしばらく、この博打にも似たスリリングな駆け引きが続きそうです。

梅雨どきは、ヘビが脱皮をする季節でもあります。脱皮をするのは、たいてい深夜。蝶がサナギになったり、サナギから羽化するときも、変身という大事業がおこなわれるのは、環境が比較的安定する夜間にかぎられるようです。

脱皮に要する時間がどれぐらいかわかりませんが、脱皮後、鱗がかたくなるまでじっとしている時間もふくめたら、けっこう長時間。その間、無防備になってしまうので、天敵の目につきにくい夜間が選ばれるのかもしれません。

さてその脱皮ですが、命がけであるうえに、苦痛まで伴うんだそうです。痛いのか、苦しいのか、直接ヘビに聞いてみたんでしょうか?加えてなんの本か忘れましたが、ヘビがなぜ命がけで、そんな思いまでして脱皮をするのか。それは、今度脱皮をすれば足が生えて来るかもしれない、と期待しているからだというんですね。今度こそ、今度こそ、と思いながら脱皮を繰り返しているっていうんだけど、ホントかよー。足がそんなにいいもんかよー。

愚かな発想だと思いましたね。たいていの昔話はどこかに真実を秘めているものだけど、これはおそらく近世になってできた話。

なぜなら差別意識と、いやらしい優越感にみちみちているからです。西洋と関わりを持つ前の日本人は、けっしてそういうものの見方はしなかったと思うんですね。

それどころか、ヘビはみずから足を捨てたのです。無粋なものをすべてはぎ取って、洗練を極めた結果、ああいう形になってしまった。脱皮が苦しみを伴うものだとしても、そこまでスマートさにこだわってきたヘビのことです。去年とおなじ衣装で満足できるわけがないじゃないですか。だから命がけでお色直しをするんですね。

脱ぎ捨てられた衣装が、薪の山のあちこちにひっかかっています。小さな突起に衣装の端をひっかけて、するすると脱ぎ捨ててゆくんでしょうね。それが風に揺れている様は、ストリップダンサーが椅子の背にそっとかける、ストッキングか網タイツのように色っぽく、儚げで・・・。ヘビは足なんか手に入れなくても、全身、しなやかに動きまわる美女の脚そのものだったのです。

ああ、一度でいいから、ほんもののストリップショーが見てみたい。かぶりつきの席でなくてもいいんです。緞帳の隙間からそっと盗み見るだけで、ドキドキ、ワクワク。いい年したオバサンがその瞬間、少年に生まれ変わります。変身というのは、蝶やヘビの専売特許ではなかったのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

通信にもありましたように、好子さんの新じゃがが入ります。冬のほくほくしたじゃが芋もいいけれど、初夏にはこのみずみずしさがいいですね。皮つきのまま適当な大きさに切り、素揚げしてから煮ると、コクのある煮っころがしができます。揚げると皮の違和感もなくなるので、なるべく皮つきのまま。ただし、芽は有毒なので取り除いてくださいね。

グリーンピースとありますが、これはスナップエンドウの大きくなったもの。これで豆ご飯を作ると、ほんとうのグリーンピースよりもやわらかく、香りも甘みも濃厚に・・・。豆1袋分に対して、米は2合ぐらいが適量。塩味にしますが、酒少々を加えるとご飯につやが出てきます。

ズッキーニピーマンも入りました。ピーマンはまだ量が安定しないので、足りない分はきゅうりで代用させていただきます。出はじめのピーマンはやわらかいので、種をつけたまま炒めてみてください。種が甘いんです。半分に割ったピーマンを素揚げして、塩をふっただけでも甘みがよくわかります。

ズッキーニも輪切りにして素揚げ。塩だけで食べるという手があります。素材を味わうには、これが最高の調理法かもしれません。塩という調味料の偉大さもよくわかりますしね。

大根のサラダ。今、こちらで流行っているのが、ピーラーを使って大根をひらひらに切る方法。さっと塩をして水気を切ってから、オリーブ油をたらすとパスタみたいな感じになります。簡単なのでお昼によく作るのですが、見た目が涼しげ。塩とエキストラ・バージンオイルだけで食べるというのも新鮮で、素材の味がひきたちます。

塩は万能ですが、夏にはもうひとつ欠かせない調味料があります。おなじみの梅醤油。今年は梅が豊作で、思ったより収穫量があったので、みなさんにもお分けします。粒は不揃い、傷もあるかもしれませんが、そのあたりはお許しください。

を洗ったら水気を切って、よく乾かしてください。広口瓶に梅を入れ、梅がかぶるぐらいまで醤油を入れたらできあがり。2~3日で梅の香りとクエン酸入りの醤油になります。焼き魚、大根おろし、オニオンスライス、冷や奴などなど、あちらこちらで大活躍。上記の大根パスタにかけてもおいしいですよ。

梅雨が明けたら冷蔵保存。夏の終わりまで持ちそうにないと思ったら、途中で醤油を足してもけっこうです。でも、梅は最後まで容器に入れたまま・・・。梅を出してしまうと、ウソのように香りが消え、ただの酢醤油みたいになってしまいます。

秋風が立ちはじめたころ、残った梅醤油でイワシやサンマを煮ると、骨までやわらかくなります。ながーくお楽しみくださいね。