寝起きのヘビたち

2005年4月第3週

先週は花冷え。冷たい雨が降りましたが、おかげで桜は長持ちしました。今年は2週にわたって花見ができて、なんとなくトクをしたような気分です。

そのかわり、気温の変動がはげしいせいか、風邪をひいている人も多いようです。芽吹きどきは身体の変調も起こりやすくなりますから、春野菜や山菜、野草をしっかり食べて、微調整しておきましょうね。

早いところでは、もう田圃に水が入りました。それと同時に、夜になるとカエルの合唱が響きはじめ、その対応のよさに感心したり、しみじみと生命の循環に思いをはせたり・・・。この営みが何千年も繰り返されてきたんですよね。その声に吸い寄せられるように、ヘビも動きはじめます。うちの青大将は寝坊なのか、まだ姿を見かけませんが、たぶん布団の中でもう起きようか、起きまいか迷っているはず。わたしは1年365日、それをやっているんだぞ。とまあ、こんなことはあまり自慢にはなりませんが、寝起きのわるいのは家主に似たのかもしれません。

起きだして寒さに合うのはつらいものですから、ヤツの定位置には地面すれすれにトタン屋根を敷き、卵を転がしてあるんです。

これは年に一度のプレゼント。また会えてよかったね、というサインでもあります。

今年もそうやって、冬の間さびれていた裏庭が活気づき、それとともに植物も繁茂しはじめます。わたしも庭と畑に忙殺されるようになりますが、それがなんとかこなせるのも、草むらに潜んでいるかれらのおかげ。カエルやヘビやトカゲの活動と連動しているような気がするんですね。カエルは正確には両生類ですが、爬虫類の底力とでもいいますか、地球の先住民であるかれらには人智を越えたパワーがありそうです。

庭石やコンクリートブロックを動かすと、びっくりして飛び出してくるトカゲがいます。こちらもびっくりさせられますが、体長およそ20センチの黒っぽいヤツで、背中にあざやかなコバルトブルーのラインが数本。それが日光にあたるとキラキラ光って宝石みたいなのですが、恥ずかしがり屋なのか、すぐに姿をくらましてしまいます。名前はわかりませんが、あんなものが土中にいると思っただけで、畑を見る目が変わってきそう。

「星の王子様」流にいうと、畑がうつくしいのは、土の中に青いトカゲが隠れているからだよ、となるのかもしれません。砂漠がうつくしいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ、と王子様に教えたのはヘビだったか、キツネだったか。できればヘビに語らせたい台詞です。

ヘビはこの国だけでなく、世界中で減少傾向。環境の変化についてゆけないからですが、皮肉なことに絶滅寸前になって、ようやくその価値が認められようとしているみたい。生態系の中での役割の重要さ。それに加えて、大地の活性化にも不可欠なのではないか、と・・・。

失ってはじめて価値がわかる。あわてて保護する、というのが人類の常套手段なのですが、ヘビは今なお偏見と誤解の渦中にあって、保護どころか迫害すら受けています。沖縄県、鹿児島県ではハブを捕獲すると奨励金が出るのですが、その理由がじつにくだらない。観光客に危害を加えるといけないから、というのですが、観光客の分際で遠慮も会釈もなく、ずかずかとどこへでも足を踏み入れるような連中は、大地の守り神にガブッとやられたほうがいいんじゃない?

もっと胸くそわるいのはテキサス州のガラガラヘビ祭り。年に一度、ガラガラヘビを狩りまくって、馬鹿面した男どもがにやにやしながらビール片手にそれを殺すという、世にもお粗末な伝統行事。まあ、伝統などあってないような国ですからね。アホなのはしょうがないけど、身を切られるような思いでそれを見守る先住民の末裔たちが気の毒です。

それとは対照的なヘビ祭りもあります。前にも紹介しましたが、お口直しに再登場。イタリアのどこだったか、たぶん南部の地方都市。そこでは年に一度、教会からマリア像が持ち出され、町中をねり歩くのですが、そのマリア像を飾るのが生きたヘビ。御輿の上もヘビだらけ・・・。というわけで、ヘビを忌み嫌うキリスト教圏では異例中の異例。マリア信仰に土着の信仰、アジア的な地母神信仰が捨てきれず、合体させられたのかもしれませんね。

そのおびただしいヘビをどうやって集めるのか。市民の有志が野山に分け入って,捕らえたヘビを本番まで大事に飼育。バスケットに入れて、卵やミルクを与えるそうです。スキンシップが大事、というのでTシャツの中に入れている人もいたりして・・・。正直いってこの祭りのことを知るまで、わたしはヘビがこんなにおとなしい、友好的な生きものだとは知りませんでした。寄せ集められたヘビ同士がいがみあうこともないのです。

そして祭りが終わると、それぞれ自分が捕まえてきたヘビを放すのですが、見つけた場所まで連れ戻すというのが鉄則。また来年、といいながら見送るんだそうです。いい話でしょ。イヤな思いをしたとき、落ちこんだときなどに思い出すと、あたたかいパワーがどこからともなく湧いてきて、元気になれると思いませんか?人間ってなかなかいいヤツだったんだ、ってね。

今週の野菜とレシピ

今週の目玉はタケノコですが、これが全セットに行き渡るかどうか、微妙なところです。といいますのも、気温が上がっても地温が上昇しないことには、タケノコは生育してくれないからです。どうしても間に合わない場合にはウドを使わせていただきますが、そのときはご了承くださいね。

海老原京子さんの竹林ですが、当の本人は腰痛のため堀りだせません。そこで去年まで、妹のアラレちゃんが奮闘していましたが、今年は彼女も不調。諦めてかけていたところ、青山さんが代役をかって出てくれました。わたしもできることなら手伝いたいところですが、タケノコ堀りだけはちょっと・・・。それぐらいハードな力仕事なんですね。

運良くタケノコが入っていましたら、その日のうちに添付の米ヌカといっしょに湯がいてください。竹串がすっと通るようになったら火を止めて、そのまま冷まします。翌日、水を変えてから料理に使います。

まず、穂先の三角の部分はスライスして、ワカメと合わせて若竹汁に・・・。残りは煮物というのはどうでしょう。姫皮ももったいないので、包丁を入れて梅肉で和えて箸休め。姫皮のかき揚げもおいしいですよ。姫皮といっしょに残りもののハム、かまぼこなんかを細く切って、あれば三つ葉なんかも彩りに衣で和え、揚げてみてください。

若々しい京菜は3センチ前後に包丁を入れ、かりかりに油炒めしたちりめんじゃこと醤油で和えてみましょう。ちりめんじゃこに塩分があるので、醤油はひかえめに・・・。サラダと漬け物の中間みたいで、ご飯がよく進みます。あさつき。根元の白いところは生のまま、ラデイッシュといっしょに丸かじり。マヨネーズと味噌を合わせたソースをつけると美味です。残りの青いところはきざんでガラス容器などに保存しておくと、いつでも簡単に薬味が取り出せて便利ですよ。

ひさびさの小松菜は、やっぱりスープか味噌汁がいいでしょうか。あたたかい日が続くかと思うと、また急に寒くなったりしますから、青菜で体調をととのえておきましょうね。