ミュータント・メッセージ

2005年10月第2週

ぱっとしないお天気が続きます。肌寒いかと思うと、妙に蒸し暑い日もあったりして、今日はなにを着ていこうか、と思案するような毎日です。

秋の長雨。例年なら9月あたりの秋雨前線が、今年は10月にやって来たわけで、この調子でゆくと来月に入ったころ、小春日和が続くのかもしれません。冬野菜が一気に生育して値崩れ。肝心の冬には野菜がなくて価格が高騰、なんてことにならなければいいんですけどね。

夜が長くなってきました。そろそろ燈火親しむ候になり、例年ならここらでお奨め本の紹介などするのですが、今年はさっぱり。頭の中はからっぽで、夕飯が終わるとひとしきりウサギのお相手。それが終わったら、犬と山羊にブラシをかけて、むず痒い草の実を取り除くという生活が続いているからです。ちなみに猫は家人の担当。といってもオス猫どもはほとんど遠出をしないので、滅多と草の実などつけることはないんですけどね。

頭の中をからっぽにしたまま、栗の皮を剥く。赤くなった山椒の実を掃除して種を取る。ジャム用のリンゴを切る。野菜をきざむ・・・。こういう延々と続く単純労働が、なぜか妙に心地よく、ついつい夜更かしをしてしまう。そんな季節なのかもしれません。

もうすこし秋が深まると、ストーブで鍋がぐつぐついうのを聞きながら、今度はセーターを編むようになるんでしょう。しみじみ、そういうことができるのを、ありがたいと思います。このあたりまえのように季節ごとに繰り返される営みが、どれだけ微妙な自然界、人間界のバランスの上に成り立っているか。それを思うと,日々の雑用でさえありがたく、毎日、今日のおかずはなんにしよう、などと悩むのだって、ものすごく贅沢なことに思われてくるんですね。。

人はパンのみで生きるにあらず、といいますが、わたしはそうでなく、人はほとんど食べるために生きているといっても過言ではないと思うんです。だって人は古来、食べるために狩りや農耕をしてきたのですから・・・。食べるということを中心に、魚を釣り、木の実を採取し、それを調理する薪を集める生活は、わたしたちの想像以上に豊かなのではないでしょうか。

それじゃまるで動物みたい。わたしたちの精神性はどうなるの、と思われるかもしれませんが、たしかに博学にはなれないかわり、情報や金銭などにまどわされることのない知恵が身につく。自然から学ぶわけですから、ほんとうの知性を手に入れることができる、ということを教えてくれたのがマルロ・モーガン著「ミュータント・メッセージ」(角川書店)でした。

鍼灸師のアメリカ女性が仕事で訪れたオーストラリアで、アボリジニーの一族と運命的な出会いをする。そしてかれらと数ヶ月をともにしたレポートなのですが、食べるものを得るために毎日歩きまわるだけの生活。衣類らしい衣類もなく、獲物にした生きものの膀胱が水筒がわり。わずかな手荷物だけで裸足の旅が続きます。しかし、そこに奥深い精神生活があったのです。

ミュータントとは、わたしたち文明人のこと。つまり、へその緒が大地からも天空からも切り離されてしまった奇形児という意味で、なにも持たず生まれ、なにも持たず死んでゆく、その中間地点でものを持ちすぎ、身動きならなくなってしまった囚人という意味にも取れます。なにも持たないということがこんなに豊かで、人にはこんなすばらしい能力があったのか、と友人の薦めでこれを読んだとき、目から鱗。というより、なにか大きなもので頭をガーンとやられたような衝撃がありました。

ずっと前にも紹介したことがありますが、まだ読まれていない方はぜひ・・・。人生が変わるほどのショックを受けても、悲しいかな、時間がたてば薄れてしまうので、わたしは数年ごとに再読することにしてるんです。かれらとおなじ生活はできないものの、食を生活の中心にすえ、心血をそそぐぐらいの気持ちでいると、そこから見えてくるものだってあるはずですから。

今週の野菜とレシピ

気温の変動はあっても、やっぱり秋ですねえ。馬田さんの椎茸が出てきました。これがなぜシルク椎茸なのかというと、菌床にシルク・プロテインを使っているから・・・。だから肉質のきめが細かく、菌床栽培にもかかわらず、これだけ香りがいいんですね。結城紬で有名なところならではのアイデアです。

そろそろ牡蠣が出まわりますが、わが家では牡蠣といっしょにこの椎茸も小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣をつけてフライにします。レモン汁と塩でいただきますが、牡蠣より先に椎茸が売れてしまうぐらい美味。アルミホイルで包み焼きにしてもおいしいですよ。

小松菜と椎茸のスープ。小松菜は和洋中、いずれのタイプでもおいしいスープになります。たっぷりのミネラルが汁の中に溶け出すので、炒めものにするときも片栗粉でとろみをつけて、それが無駄にならないようにしてくださいね。

神奈川県座間市にお住まいのOさんからいただいた京菜のレシピです。醤油仕立ての鍋に油揚げと京菜をたっぷり入れて、あつあつを食べるハリハリ鍋のヘルシー版。昆布と鰹節で濃いめの出しを取り、酒、味醂、醤油で調味してみたら、ほんとにさっぱり、でもとても満足感のある鍋でした。京菜は煮すぎないのがコツ。食べるときに各自、七味唐辛子をふって・・・。

もともと甘みのある茄子が、今月に入ってさらに甘くなっています。焼き茄子が最高。ちょっと寒い日には、茄子のグラタンなんかもいいですね。わが家ではミートソースが残ると、油炒めした茄子にからめ、パルメザンチーズをふってオーブンに放りこみます。ガーリックトーストにのせるとうまいんだなあ、これが・・・。シンプルなきゅうりのサラダもいっしょにどうぞ。

来週は待望のほうれん草が入ります。大根ももう少しお待ちくださいね。

*Bセットには天然舞茸が入ります。香りがすばらしいので、てんぷら、舞茸ご飯などでお楽しみください。舞茸ご飯は炊きこみより、油炒めして醤油で調味したものをご飯に混ぜたほうが美味。少しかけらを残しておいて、お吸い物にもご利用ください。

ほんとうは全セットに入れたかったのですが、天然ものなので数量に限りがあってかないませんでした。申しわけありません。

お知らせ

新米の季節ですが、去年の米の在庫があるため、先週から注文を承っています。原価割れの価格でお分けしていますので、ご利用いただければさいわいです。古米ではありますが、低温倉庫で保管しているので劣化の心配はありません。

玄米10kg:3800円、白米10kg:4000円(税別)にてお分けしていますが、在庫がなくなりしだい終了させていただきますので、お早めにお求めください。