猫の家出

2005年8月第2週

暑中お見舞い申しあげます。

こちらも連日、30度を超える暑さが続いています。おかげさまで田圃のわきを歩くと、熱気とともに稲の香りが押し寄せてくるようになりました。去年より半月遅れの開花だそうです。

この時期の田圃の除草は、ほんとうにご苦労さまです。頭上の炎暑に加えて、水面からの照り返し。しかも稲は葉先がノコギリ状になっていて、人肌に細かい傷を無数につけるだけでなく、防虫のため、みずから微量の毒素を作り出しています。そのため、傷は目に見えないくらいなのですが、チクチクといつまでも痛く,痒く、ヘタをすると炎症をおこしてしまうのだとか。

農薬が散布されないところでは、植物の自衛意識が強くなるらしく、稲だけでなく、茄子もきゅうりもかぼちゃもみんな、研ぎすまされた鋭いトゲを持つようになります。中でも、好子さんの茄子のトゲは特大で、ほとんど凶器といっていいぐらい。わが家の小さな菜園でも、みんな奮闘しているらしく、なかなか素手では収穫できません。

ところが薬剤を散布されると、気が萎えるのか、安心してしまうのか、そういう武器を捨ててしまう。あっても飾り程度。平和主義といったら聞こえはいいけど、薬漬けではただのジャンキー?こと植物に関しては、自衛権および武器の携帯、収穫や除草に多少難儀したところで、大いにけっこう。その健気さに、逆にこちらが元気づけられそうです。

事務局にまた子猫が参入しました。メスの三毛猫で、なかなかのおてんば娘。米倉のネズミ対策として、将来有望かもしれません。すでに居候の黄トラのオスがいるのですが、これがぐうたら寝てばかり。さっぱり役に立たないので、猫はやっぱりメスでなくっちゃ、といっているのが聞こえたのか、ニューフェースにヤキモチを妬いているのか、そのぐうたら男、ふてくされて家出中です。

ぐうたら男がいなくなったら、ときどきご飯を食べにきて、ついでにケンカをして行くアメリカンショートヘアもどきのオスが、足繁く通ってくるようになりました。ゴロニャン、ゴロニャンと声をかけあっているところを見ると、子猫と相性がいいみたい。わたしたちの知らないところで、あんたみたいな薄汚い黄トラはきらい。わたし、あの人のほうがいい、などと小娘が耳打ちしていたのかもしれません。

話変わって、今度はわが家。やはり隣家にメスの子猫がやって来ました。うちのメスにいじめられなきゃいいんだけどね、などといっていたら、子猫が大きくなるにつれて形勢逆転。逆にうちのメスが追いかけられるようになりました。思えば彼女も10年選手。もう若くはなかったんですね。

その老境にさしかかった猫も、先週から帰ってきていません。夢中で逃げているうちに、帰り道がわからなくなってしまったのかもしれません。家の北側に猫の似顔を書いた紙を貼って(これ、猫がいなくなったときのおまじない)山歩きをするときには名前を呼んでいるんですけどね。帰って来れるか。帰ってきても、今までみたいに安住できるか。

夜、用事があって外に出ると、かならず門番みたいに隣家の子猫がガレージに寝そべっています。オスどもの出入りは気にならないようですが、メスは許せないみたい。いろんなタイプの猫がいて、それによって勢力図がめまぐるしく変わる。メス猫がいなくなったとたん、わが家の庭に堂々とヘビが出没するようになりました。青大将ですが、元からうちにいるのにくらべたらかなり小ぶり。もしかしたら隣家から逃げてきたのかもしれません。

オス猫はほとんど狩りをしませんから、何匹いてもヘビの敵ではありません。この調子で行くと、わが家はヘビ天国になるかもね。そのうちに1匹ぐらい、天井裏に入ってくれるといいんですけど・・・。じつはわたしの寝室、キョロちゃんが来てから猫の出入りが禁止になったため、以来、夜中になると天井裏を走りまわっていたのです。

老境にさしかかった猫は心配。でも、庭先に青大将がくつろいでいるのもなかなか風情があるもので、あちら立てればこちら立たず。でも、ヘビが増えたら増えたで、今度は古参の青大将とヤマカガシが居づらくなるのかもしれません。ま、こういうことに人間が介入してもロクなことはありませんからね。わが家でも事務局でも、成り行きまかせ。気長に猫の帰りを待ちたいと思います。

今週の野菜とレシピ

ひさしぶりにじゃが芋が入ります。夏は意外とじゃが芋の需要が多いようで、ポテトサラダやフライドポテトはもちろん、夏野菜スープも、これがあるとないとでは大ちがい。

また、今が旬のイカを使ったイカじゃが。これもわが家では夏の定番です。スルメイカはまだ少し小ぶりなので、太めの輪切り。足は2~3等分しておきます。油をひいた鍋にイカを入れて炒め、じゃが芋とイカのワタも加えて酒と味醂を入れ、よくなじませたらひたひたまで水を入れ、あとは落としぶたをして煮るだけ。醤油と一味唐辛子、オイスターソース少々で味をつけます。イカもじゃが芋もすぐにやわらかくなりますよ。

ゴーヤもまとまった量が採れるようになりました。これはもうチャンプルーで決まりでしょう。ひと昔前まではなじみのなかったゴーヤも、今ではすっかり定着した感がありますが、それだけ夏が暑くなったということでしょうか。それどころか、沖縄の人がこちらに来ると、あまりの高温多湿にぶっ倒れそうになるんだそうです。

それはそもかく、こちらで出回っているゴーヤは苦みがそれほど強くはないのですが、それでも苦いという向きは輪切りにして、小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣をつけてカツレツにしてみてください。苦みが消えて、しこしこした歯触りが美味。ゴーヤの種を取るとドーナッツ状の穴ができますから、そこにカレー風味の下味をつけた挽肉を詰めると、子供にも人気がありますよ。

つるむらさき。この独特の香りが好き嫌いを左右するようですが、胡麻油を使うとそれがやわらくみたいです。まず、茎から葉を全部落とします。おひたしにするときは茎のほうから鍋に入れ、火が通ったところで葉を入れて、すぐに取り出します。鰹節と醤油、それに胡麻油少々を落としてください。

エビや豚肉といっしょに炒めてもおいしいんですよ。この場合、茎は斜めに包丁を入れ、葉っぱは2等分ぐらい。胡麻油でエビ、または肉を炒め、ついで茎を加えてよく炒めたら、葉っぱを加えて火から下ろします。塩、胡椒、オイスターソース少々で調味。これはご飯がよく進みます。

今週末はお盆。お盆になったら、すこしは涼しい風が吹くようになるでしょうか。夏バテしないよう、しっかり食べてくださいね。