米文化を守らなくっちゃ

2005年5月第2週

右を見ても、左を向いても、田植え風景が目に入ります。はた目には活気があるようですが、よく見ると半数以上が高齢者。どう見ても70歳以上と思われる夫婦が多いのです。お年寄りが元気なのはいいけれど、かれらがいなくなったら、いったいだれが田植えをするんだろう、と毎年、一抹の不安をおぼえます。一反ぐらいの小さな田圃は、どんどん減っていますしね。

どんな小さな田圃でも、整然と稲苗が並んだとたん、あたりの風景が一変します。空気中に生気が満ちあふれ、路上の雑草まで輝きはじめるからです。いや、慈愛に満ちあふれるといったほうがいいでしょうか。田圃のわきを歩いていると、思わず涙ぐんでしまうほどの幸福感に包まれるのです。

棚田が世界遺産になっていますが、すべての田圃にその価値がある。ヒトの建造物中、もっとも美しく、もっとも自然界と調和しているのが田圃ではないか、と最近、しみじみ思います。農地改良などという暴挙に遭っても、これだけ輝いているのです。これを残さないで、いったいなにを残すんだ、っていいたくなるでしょう。

田圃が減れば、それだけ夏の気温も上昇するし、空気中の炭素率も高くなる。連作障害もなく、千年も二千年もおなじところで作れる作物なんて、そうそうあるもんじゃないでしょうしね。米文化ばんざい。この伝承をひとり農家の肩に押しつけるのではなく、みんなで支えてゆきたいものです。国産の米を使っていない外食産業はボイコットするとか、ね。こと農産物に関しては、わたし国粋主義者みたいです。

日本の米は高いといわれるけど、安い米を食べて、その分クーラーはフル回転。高い電気料を払っていたんじゃ、それこそバカみたい。茶碗いっぱいのご飯が百円しようが二百円しようが、ショートケーキの値段に比べてごらんなさい。デパ地下で高いお総菜は買うけれど、ほうれん草が一束二百円もしたら買えないみたいな奇妙な感覚。自分で自分の首をしめるような生活が、農家の生活にも影響してきます。

でも、これって世界的な傾向みたいですね。ヨーロッパでも子供たちが野菜ばかりか、果物まで食べなくなってしまっているそうで、学校の授業に野菜や果物を味わう時間が導入されているんだとか。子供がそうだということは、親の食生活が崩壊しかかっているってことでしょう。世界中がファーストフードに毒されていたというわけで・・・。伝統食にもどれ。これが21世紀の最重要課題だとしたら、お寒い話です。

他方、南半球では慢性的な飢餓。内戦や侵略がそれに拍車をかけているようです。それを本気で憂慮しない大国も、当事国も、どちらも栄養失調という共通の病に冒されているというのが皮肉。神は公平だったのです。滅びるときはみんないっしょ。自分だけ、自国だけの繁栄などという空疎な夢は、もう捨ててしまわなくっちゃね。

景気回復などというのも同様。これだけモノがあふれてしまったら、不景気になるのが当然だし、不景気といったところで、餓死者が出るわけじゃない。みんな、好きなものを食べているのです。このうえ景気の向上を願うというのは、暗に破壊と殺戮を願っているということでしょう。この国の戦後復興が朝鮮戦争に支えられ、飛躍的な経済成長がベトナム戦争に支えられてきたことを思うと、そんな恐ろしいことは望めません。

他国の人の血を吸って太るのではなく、自国の米をおいしく食べる。今世紀を生き残る術は、それに尽きるのではないでしょうか。

今週の野菜とレシピ

青山さんのフキが入ります。フキは湯がいてから皮をむくと、指が黒くなりません。お湯は捨てずに、火は止めたまま葉っぱのほうを入れ、しんなりしたら取り出します。フキは煮ふくめて・・・。細いところは葉っぱといっしょに佃煮にしてみませんか。

フキの葉は縦横に包丁を入れてかたくしぼり、茎の細いところは1センチぐらいに切っておきます。それを鍋に入れ、同量の酒と醤油で煮ます。煮汁が少ないので、ときどきかきまぜながら・・・。鍋底の煮汁が見えなくなってきたら火を止めて、鰹節をたっぷり加えます。適当にほろ苦く、どういうわけか甘みもあって、キャラブキよりもおいしいぐらい。冷蔵すれば1ケ月ぐらい保存できます。

間引きニンジン。ひさびさのニンジンもさることながら、やわらかい葉っぱがうれしいですね。これは湯がいて胡麻和えにしてもいいですし、かき揚げも美味。ハンバーグに刻みこんでも香りがよくて、栄養満点。いろいろ遊んでみてください。

大根のサラダ。短冊に切った大根に鰹節をかけ、ポン酢をかけるだけでもおいしいのですが、エスニック風サラダもなかなかでした。大根は細く、千六本に切っておきます。葉っぱのほうもやわらかいところを刻んでおきます。フライパンに胡麻油を熱し、サクラエビをかりっとなるまでよく炒め、火を止めたところで大根葉を入れて余熱調理。そこへ砂糖と酢を少々、醤油、お好みでナンプラーを加えて調味したものを大根にかけ、よく混ぜていただきます。

このサクラエビのソース、京菜に混ぜてもおいしいですよ。ただし、京菜に使うときは大根葉は不要。湯がいた小松菜チンゲン菜にかけてもよさそうです。でも、みんなおなじソースというのでは芸がないので、チンゲン菜はもっと簡単な方法でホットサラダにしてみます。チンゲン菜を湯がいたらお湯を切って、あつあつのところにバターを入れて、塩、胡椒、醤油少々を加えて混ぜます。バターがダメのいう方は胡麻油で・・・。

かぶをこの方法で調理しても簡単、美味ですが、生食も捨てがたいもの。味噌とマヨネーズを合わせたソースで丸かじりすると、かぶの甘みが生きてきます。果物かと思うぐらい・・・。

胡麻の香りのルッコラは、とりたててサラダにしなくても、生け花みたいにガラスの容器に挿し、テーブルに置いておくといつの間にか消えてゆきます。肉料理によく合いますし、朝食のスクランブルエッグや目玉焼きとも相性がいいからです。炒めご飯を包んで食べてもおいしいですよ。

来週は福田さんのハウスきゅうり絹さやが登場。もうそんな季節になったんですね。