ネコとカラスの扶養家族

2005年10月第4週

朝夕、冷えこむようになったとはいえ、秋はなかなか深まらず、夏の名残が居座っているところもあるようです。こちらの紅葉もまだまだで、ようやく色づきはじめたところでも、今ひとつ色が冴えないみたい。燃えたつような鮮やかな紅葉は、今年は望めないのかもしれません。

例外もありまして、事務局わきのホウキ草。灌木に先だって、今月に入ったあたりから色づきはじめ、淡いピンクからショッキングピンク、さらにそれが真っ赤になって、今、臙脂色に燃え立っているところです。きれいですよ。

そのホウキ草の茂みを寝床にしている猫がいます。これがなんで野良猫なんだろう、と首をかしげたくなるようなゴージャスな長毛種。バーミーズかヒマラヤン・・・。正確なところはわかりませんが、ホウキ草のない時期は下水溝の中で寝起きしています。ご飯は食べにくるのですが、なかなか近づくことができません。

呼び名はフワフワ。あんなフワフワの長い毛が、だれもブラッシングなどしていないのに、なんで団子にもならず、サラサラしてるんだろう、というのが謎で、とくに尻尾が見事です。後ろ姿が自慢ですが、顔を見るとプッと吹き出したくなるような寄り目。ピントがずれているので、お世辞にもハンサムとはいいがたく、そのため野良になってしまったのかもしれません。

フワフワのほかに、アメリカンショートヘアの大ちゃん、真っ黒のイモ助がここの常連。イモ助というのは子供のころ、いつもサツマイモの葉っぱの陰に隠れていて、ご飯を食べに来ると葉っぱがそよぐので、そんな名前になったのですが、今では撫でられるまでになっています。もっとも、だっこが許されるのはアラレちゃんだけですが、この調子でいくと、フワフワもそのうち慣れてくれるでしょう。

続々とオス猫が押し寄せてくるのは、ひとつにはココナッツ・通称ナッちゃんが少女期を脱しはじめたから・・・。同居している黄トラのおじさんは、去勢手術を受けているので心配ありませんが、いちばんあやしいのが大ちゃん。こいつはご飯をほとんど食べないので、たぶん飼い猫で、ナッちゃんの登場と同時に出現し、黄トラのおじさんを目の敵にしています。

一方、黄トラのおじさんはナッちゃんが現れたとき、ふてくされて家出をしましたが、数日後、深手を負って帰ってきました。以来、大ちゃんを見ると怯えるので、おそらく犯人はヤツ。数日の入院を経て帰ってきてから、心を入れ替えたのか、それとも選択の余地がなかったのか、ナッちゃんのよき遊び相手となり、ほとんど外にも出なくなりました。

ある日突然、ふらりとやって来て、あたりまえのように居座ってしまった猫ですが、うるさい黄トラなのでウルキーという名前がついていました。それがうるさくつきまとって仕事の邪魔をすることもなく、人の脚で爪を研いだり、噛みついたりすることもなくなって、ただただ穏やかなおじさんになったのです。よほど家出がこたえたんでしょうね。

これ以上、猫が増えては困るので、ナッちゃんは近日中に避妊手術を受ける予定。そうなったら、ここの猫模様も変わりそう。少なくとも大ちゃんは姿を見せなくなるでしょうね。問題児なので、そうなってほしいものです。

わたしたちの扶養家族は猫だけでなく、カラスも毎日やって来ますが、夏の間に子供が巣立ち、カンちゃんとランちゃん夫婦、水入らずになったと思ったら、いつの間にか脚のわるい坊やが帰ってきていました。3年前の子供ですが、わたしたちが見た中でいちばん活発で、よく動きまわっていた子供です。それが災いしたのか、気がついたときには片足がねじ曲がり、後ろ向きになっていたのです。

その年は再三親から促され、しぶしぶ巣立ちはしたものの、やはり自立はむずかしいのか、しょっちゅう舞い戻っては叱られていたものです。去年も子育て中は遠慮していましたが、新しい子供が巣立つとすぐにやって来て、追いまわされながらもねばり続け、ついに親もあきらめて受け入れました。カラスが怒ると頭部の羽がふくらんで、ものすごく頭でっかちになるんです。そんなユーモラスな恰好で歩きまわる。でも、今年はそんな諍いもなく、すんなり合流できたようです。

わが家にやって来るカラスのフアミリーも、夏以降だいぶ構成が変わりましたが、気がかりなのはキョロちゃんです。巣から落ちて負傷していたカラスの子を拾い、無事に巣立ちができたのですが、家人の話では、ほかのカラスがいない時間帯、庭木にひとりぽつんとしているカラスがいるというのです。あれは、もしかしたらキョロちゃんじゃないかしら?

その時間帯は仕事中なのでわかりませんが、その可能性は大。常連のフアミリーと合流し、うまくやっていると思っていましたが、巣立ちのとき、若者集団に入れなかったのか。それとも、みずから出てきてしまったか・・・。まあ、単独行動をとるカラスもけっこういますから、案ずることはないのかもしれませんが、寂しそうにぽつんとしている、などと感情移入されると、心穏やかではいられなくなってきます。

ひとり毅然としているカラスがいる、といわれれば、そうか、キョロちゃん頑張っているんだな、となるんですけどね。キョロちゃんの食卓がわりだった箪笥の上に、毎日、好物を用意しているのですが、減り方はまちまちで、それに頼っているという風はなく、ま、おやつ程度。だから生活に不自由はしていないと思うんです。キョロちゃんは毅然としているのか、それとも寂しげなのか・・・。

人間が野生を見るとき、ついつい野暮な感情移入をしてしまうのですが、その愚から、わたしもなかなか自由にはなれないようです。

今週の野菜とレシピ

先週のほうれん草。こちらで雨が続いていたことや、気温が高かったため徒長気味であったことなど、いろんな原因が重なって、輸送中に傷みが出るケースが続出しました。そんなわけで、霜が降りるまでほうれん草は出荷を止め、今週、通常より野菜を多く入れさせていただきました。申しわけありません。

大根はまだ小ぶりですが、ほうれん草の代品としてかり出されました。にんじん大根ごぼう里芋とそろえば豚汁、けんちん汁、ぬっぺい汁など、地方によって呼び方はさまざまですが、後は豆腐とこんにゃくを用意するだけで、具だくさんの汁ものが楽しめます。ネギは最後、火を止めてから入れてくださいね。

異彩を放っているのがイタリア生まれのルッコラですが、胡麻の香りがしているので、和食に加えても違和感はありません。でも、おひたしには不向き。これはやはりサラダにするか、肉料理や魚のムニエルなどのつけ合わせにお使いください。薬味がわりにスープに浮かべてもおいしいですよ。

ルッコラが登場したので、小松菜もイタリア風にパスタソースにしてみましょうか。小松菜は湯がいてからフードプロセッサーにかけ、どろどろにします。フライパンにオリーブ油を入れ、低温でみじん切りにしたニンニクを炒め、どろどろの小松菜を加えて塩、胡椒で調味。かために茹でたパスタも加えて、ソースをからませます。おろしたてのパルミジャーノをたっぷりかけてどうぞ。なければ市販の粉チーズでもOK。とてもさっぱりしておいしいですよ。

来週は大根が大きくなっていると思います。そろそろおでんが恋しくなる季節。大鍋を出しておいてくださいね。