雪の足跡

2006年1月第3週

週末、こちらでも雪が降りました。さいわい、たいした積雪ではありませんでしたが、今回は南のほう、太平洋岸沿いの地方に雪が集中したようです。そのため、このあたりより東京都のほうが大雪になるという、あべこべ現象が見られ、受験生には気の毒でした。

それにしても、共通一次試験というのは、どうしてこうも雪に崇られやすいんでしょう。受験の時期に問題があるのか、それとも受験というシステムそのものに問題があるのかわかりませんけど、振り回される当事者たちはたいへんだったにちがいありません。

それとも入試は総合力ということなのかな?学力だけでなく、雪道を歩く際の運動神経から、試験場までの路線を選ぶ判断力、はたまた当事者の運までを考慮するためだとしたら、これはなかなか奥が深いものだったのかもしれません。だって人生なんて、なにが起きるかわからないものでしよう?それを暗示するために、わざわざ雪の降りそうな時期が選ばれたのかもしれません。

農家も、つねに天候には試されています。種を蒔く時期のみならず、肥料を撒く時期、耕運機を入れる時期、除草から土寄せ、間引きにいたるまで、すべてに適期というものがあるからで、そこでいわゆる勘というものが養われます。なにをするにも勘がわるいと失敗しますが、とくに農業はそれが顕著。もしも農家になる試験などというものが存在するなら、入試の時期は二百十日。台風がもっとも上陸しやすい頃になっていたかもしれませんね。

ともあれ、すこしの雪でもあたふたするのが、太平洋側の住人のかなしいところで、こんな内陸で、毎年かならずといっていいほど雪が降っているところでも、事情はたいして変わりません。道路の雪はすぐに解けても、畑などにはいつまでも残りますし、わたしの住んでいる山間部では、平地より積雪がかなり多くなるのです。私道や庭先の雪かきがけっこうな重労働。

この程度の雪かきでとやかくいっていたら、豪雪地方の人にもうしわけないのですが、毎年これをやるたびに不思議に思うことがあります。それは雪の積もりかたが均一ではないことで、たとえばわが家の西と東側では積雪量がちがうのです。それも微妙な差ではなく、10センチちかくも・・・。条件がさほど変わらないところで、どうしてこんなに雪の量がちがうのか。つまり、雪は均一には降っていないのではないか。雪がそうだとすると、雨の降りかただってムラがあると思うのですが、これは降ってもすぐに流れてしまうので、気がつかないのでは・・・。もっとも、よくよく考えてみれば雲の厚さ自体が均一ではないのだから、そうなるのが当然なのかもしれませんが、なにか大発見でもしたような気分になって、しばし腰の痛みを忘れることができました。

雪のあとって、いろいろ支障が出るけれど、楽しいこともけっこうあります。まず、自分の足跡にびっくりします。なぜかというと、雪の中の足跡は時間がたつと実物よりかなり大きくなるからで、まるで雪男。犬の足跡も大型の猛獣サイズで、これが家のまわりについていると、わかっていてもちょっと不気味。この冬、家のまわりでいちばん多く見られたのはウサギの足跡で、これはいうまでもなくモモちゃんのものですが、それにしてもちょっと多すぎ。もしかしたら野ウサギのものが混じっているのかもしれません。ということは、モモちゃんが野ウサギとカップリングする可能性も大。そのうち、大家族になるのかもしれません。

ウサギは繁殖力が旺盛ですからね、楽しみではありますが、不安もあります。あんまり増えすぎると、うちの畑だけでなく、近所にも迷惑をかけかねません。除草剤を使う農家もいるので、今のうちにモモちゃんを室内の生活にもどしてしまうか、それとも好き放題させておいて、すべての運を天にまかしてしまうか、ただいま思案中です。

今週の野菜とレシピ

厳寒の折、今週からハウス栽培の野菜が仲間に入ります。サラダ菜ニラ。サラダ菜はほのかな苦みがあり、肉料理のつけあわせに使われますが、わたしはレタスよりこちらのほうが生野菜としては好きで、カリカリに揚げた豆腐といっしょにサラダにします。サラダといっても、ドレッシングは使わず、細かくして小麦粉をからめて二度揚げした豆腐に芥子醤油をからめ、ちぎったサラダ菜の上にのせるだけ。サラダというより、火を通さないおひたしみたいな感じになります。お好みで、もみ海苔をたっぷりかけて・・・。

ニラをたっぷり使ったニラ鍋は身体があたたまりますが、今年のニラは異常な高低でも、ありがたいことにニラは少量でも身体があたたまります。お吸い物のニラ玉は醤油味がふつうですが、これを味噌仕立てにすると味も香りもよくなって、身体もよくあたたまります。だまされたと思って試して以来、やみつきという人が多いんですよ。

雪が降っても露地でがんばっているのが、小松菜春菊ほうれん草。春菊など、この寒さの中でよくこんなたおやかな葉でいられる、と感心するほどです。このタフな青菜たちは、煮るなり、妙めるなり、なんなりと・・・。どう料理しても、酸郁とした甘さでわたしたちを寒さから守ってくれそうです。年が明けて、じゃが芋メイクイーンに変わりました。なぜ最初に男爵を使って、後からメイクイーンを持ってくるかというと、メイクイーンのほうが皮が剥きやすく、煮ても焼いても味がしみやすいからです。それに加えて横畠さんのメイクイーンは甘みがとくに強いんです。去年の夏、旭川では雨が多かったらしく、じゃが芋の内部にくさび形の傷が入っているものがあります。それを考慮して、すこし多めに袋詰めしてありますので、万が一の場合はご容赦ください。