米文化を見直そう

2006年5月第2週

今週の野菜セット

5月に入ると、こちらも初夏の気候になりました。でも、風はまだまだ冷たいみたい。夕刻には昼間の暑さがウソのように肌寒くなり、ゴールデンウイークを過ぎても遅霜の懸念が残っています。

そんなわけで夏野菜の苗が育っても、なかなか畑に定植できない。それでも草は育つので、なにもない畑に耕耘機を入れる作業が続いているようです。今月は日照時間が長く、気温が高くなっても地温が上がりにくいため、地上部の発育がよくても根が張りにくいといいます。根が弱いということは、基礎体力がないということですから、今年の夏野菜は前途多難。

でも、今までだって数々の困難をものともせず、好成績を上げてくれた野菜たちですから、今年もうまく乗り切ってくれるはず。むしろわたしたちのほうが、体調不良に気をつけたほうがよさそうですね。

田圃はその点、水が入るので地温の心配がありません。夜になって急激に気温が下がっても、水温はそう簡単には下がりませんから、しっかり根を保護してくれるのです。しかも、この水の存在が千年にも及ぶ連作を可能にしてくれているんですね。

この水がわき水や雪解け水であるという点も重要です。もしこれが地下水だとそうはゆきません。塩害で10年もたたないうちに、草も生えない土地になってしまうからです。アメリカを旅行してきた知人によると、カルフォルニア州には東京ドームに匹敵するような不毛の地が点在しているそうで、これは長さが数百メートルもあるスプリンクラーを時計のように動かしながら、乾燥地帯で無理矢理野菜を栽培してきた跡地。地下水に含まれている塩分が蓄積し、廃墟と化した農場です。

そんな円形脱毛症みたいな巨大な廃墟がごろごろしているのを見ると、農業大国といっても名前だけ。実体はお粗末なものだと思ったそうです。いくら国土が広いといってもねえ。将来性のない農業なんて、環境破壊以外のなにものでもないのですから・・・。

そんなところからも、田圃というシステムのすばらしさが見えてきます。農法として永遠性があるだけでなく、この水が環境に与える影響も大きく、夏の暑さをやわらげる働きは大。都会の夏の気温が上がり、クーラーが不可欠になったのは、温暖化の影響というよりも、周辺から田圃が姿を消してしまったせいだという人もいます。田畑を潰して住宅地にすると、それまで都市をぐるりと取り囲んでいた湖沼地帯が消えることになる。当然、気温も上がるというわけです。

日本の米は高いといわれてきましたが、日本の田圃をどんどん潰して、その分高い電気代を払いながら、室外機から熱風を吹き出しているのが現状です。それに加えて減反政策。余剰米が出たところで、赤字額などたかが知れているのに、こういうことはおおげさに騒がれるんですね。では、20年ちかい減反政策でこの国の赤字がどれだけ減ったかというと、とんでもない、膨大な数字にふくれあがっているのは周知の通りです。

この時期、田植え風景、それに田植えが終わったばかりの田圃に、整然と苗が並んだ風景を見るのはいいものです。でも、一抹の不安もわき起こってきます。田圃の管理をしているのは、大半が高齢者。いくら農地に永遠性があっても、それにたずさわる人が途絶えてしまったのでは、なんの意味もありません。

ここらで米文化というものを、いろんな角度から見直しておきたいものだと思いました。

今週の野菜とレシピ

日中は気温が上がっても、夜間は肌寒いという日がつづいています。そのため、予定されていた絹さやは花をつけたまま、なかなか大きくなれないでいます。それに代わって中里さんのソラマメが登場。これはハウス栽培です。ただし、こちらも量が安定しないため、足りないところは青山さんのアスパラガスで補わせていただきます。

好子さんの間引き玉葱。これは小さな玉葱だけでなく、茎も葉も食べられます。このあたりでは油炒めして、味醂と味噌をからめるのが主流ですが、ベーコンなどといっしょに炒め、塩、胡椒しても美味。ふつうの葱より甘みが強いので、ポロ葱の代用としてスープなどにも使えます。

おかのりはフキに似た丸い葉を持ち、この葉っぱを火でさっと炙ると海苔のような香りがします。醤油をつけてご飯にのせて・・・。茎のほうにはぬめりがあって、おひたしにすると山菜のような野趣のある味がします。

京菜はサラダにもスープにもなりますが、細かくきざんで一夜漬け。それを納豆や葱トロ用のマグロに混ぜるとおいしいですよ。とくにマグロとの組み合わせは絶品で、味つけはなし。一夜漬けの塩分だけでよく、オリーブ油をすこしたらすとカルパッチョ風になります。

小松菜はスープか味噌汁で・・・。パセリも適当にちぎったものに醤油をかけ、しんなりしたところにもみ海苔をかけると一風変わった即席漬けになり、ご飯によく合います。

来週は青山さんが岩手県・安比に出張。タラの芽などの山菜を採集してくれますのでお楽しみに・・・。