蚊の生態

2006年7月第4週

今週の野菜セット

活発な梅雨前線のおかげで、いつになく「雨期」が長引いています。河川の氾濫、崖崩れや土石流など、あちこちで被害も出ているようです。今のところ、こちらは事なきを得ていますが、大小の河川が増水していて、大雨になればすぐにでも溢れ出しそうな勢いです。

23年前に大洪水がありましたが、奇しくもそれは益子GEFが結成されてまもなくのことでした。待てど暮らせど野菜が届かない。農家に電話をしても留守。なにがどうなっているんだろう、と車を出してみたら、河川の氾濫で町中の橋が通行不能になっていたのでした。益子が陸の孤島と化したのですが、そのとき、この事務局のあたりも床上浸水したといいますから、長雨は困りものです。

日照不足で夏野菜の生育もおもわしくありません。来週はもう8月。そろそろ梅雨が明けてもいい頃ですよね。

雨期が終わって気温が上昇すると、すさまじい勢いで蚊が湧き出します。田舎では蚊のみならず、ブユやアブ、マダニといった連中も・・・。この夏は、犬猫のノミも大発生しそうな気配があります。

虫の天国。ハエは卵を産みつけると、一夜にしてそれが蛆になりますし、ノミは成虫になるや否や交尾して、卵の用意をしてから分散。ペットにたかるというわけです。それぞれ巧妙な戦略で生き残ってきた猛者ぞろい。中でも蚊は数も種類も多いだけに、強敵みたいです。

全国区で活躍するのがアカイエカ。これは側溝や水たまり、竹の切り株などに発生しますが、田圃も重要な発生源になっています。農薬の空中散布で一時は激減しましたが、やがて耐性をつけて復活。一カ所で耐性のあるものが発生すると、瞬時にそれが全国規模になるというマジックを披露したそうです。

都市型のチカイエカ。これはトイレの浄化槽やビルの地下のたまり水が発生源ですが、低温に強く、冬になってもまだいる、という厄介なヤツ。冬になっても人を刺します。

ヒトスジシマカ、いわゆるヤブカ。これはすばっしこく、あっという間に吸血。逃げ足も早いので、山に入ると知らないうちに刺されていることが多いのです。でも、このヤブカは周囲の植物と通じ合っているらしく、そのあたりのボス、いわゆるマザーウッドと仲良くなると姿を見せなくなるという、不思議なところも持ち合わせています。

蚊はオス・メスとも、ふだんは花の蜜や樹液などを食べていますが、メスは産卵のため、吸血して卵巣を発達させなければなりません。低気圧が接近中の蒸し暑い夕暮れなど、蚊が大集合して「蚊柱」を立てているのを見たことがあるでしょう?あれはオスの集団で、そこにメスが乱入して交尾。数日後に雨が降ったところで産卵するというわけです。この雨を予測するセンサー、巨額の設備投資をしてもいっこうに的中しない気象庁に進呈したいぐらいです。

ちなみにこの蚊柱にむかって、ウィーンというメスの羽音を口真似すると、たちまち移動してきて取り囲まれます。あまり快適ではないかもしれませんが、文字通り渦中の人。たまにやってみると面白いですよ。

なぜ、こうまで蚊に詳しいかというと、アラレちゃんからの入れ知恵で、彼女は今、蚊に夢中なのです。正確にいうと蚊の幼虫・ボウフラなんですけどね。

ことの発端は、犬の水浴び用のプールにカエルが産卵。大量のオタマジャクシが孵ってしまった。オタマジャクシだけならともかく、そこにボウフラまで発生。ま、ボウフラはオタマジャクシの餌になるだろう、と放っておいたら、なんとカエルは蚊を食べるのに、子供はボウフラを食べないのです。そこで彼女はオタマジャクシにイトミミズを与えながら、台所から持ち出したアク掬いでボウフラを除去するという、面倒な仕事に明け暮れることになったのでした。

ところが、このボウフラすくいというのが、意外に面白いんだそうです。毎夕、それに夢中になっていると、親が来てうるさくつきまとう。りんご酢を飲んでいるから、犬の散歩でどんなに蚊の多いところを歩いてもにも刺されないのに、このときだけはやられてしまう。あんな小さな脳みそで、あれが自分の子供だなんてわかるのかしら。ためしに蚊が飛べないような土砂降りのとき、びしょぬれになりながらやっていたら、やっぱり攻撃してきたそうです。

あいつら、わかってたんだ。というわけで、敵を知ろうと思ったわけですね。今や、蚊博士といってもいいぐらい、蚊の生態に詳しくなっています。そして、蚊1匹が産む卵は300個。あの体から出てくるわけですから、水面に浮いていても人の目にはわかりません。ちなみにアラレちゃんがすくえるボウフラは、1回に30匹。うーん、ちょっとむなしいかも・・・。

卵は3・4日でボウフラになり、それから1週間ぐらいの間に4回脱皮して、オニボウフラになります。オニボウフラというのはサナギのことで、身体を丸めていますから、オタマジャクシそっくりの姿形になるそうで、それが網にかかると、おお、かわいそう、なんて水にもどしたりしてたらしいんですね。それが3日もすると成虫となって飛び立つとも知らず・・・。

もうだまされないぞ、と張り切っていますけど、ほかにも水の入ったカメやらバケツがあるのに、どういうわけか蚊はオタマジャクシのいるプールが気に入っているんだとか。オタマジャクシの排泄物がボウフラの餌になっているのかもしれません。オタマジャクシがいなければ、バケツをひっくり返すだけですむのにね、とわたしがいったら、いやいや、蚊はそんな甘いもんじゃあございません。水がなくなると休眠状態に入り、次の雨で復活してくるんだそうです。恐るべき知的生命体なのでありました。

今週の野菜とレシピ

日照不足やら旱魃やら、自然環境に左右されにくいのが有機野菜だなんて、ふだん、偉そうなことをいっていますが、やはり日照不足と低温は夏野菜に大きな負担を強いているようです。ゴーヤは実がなるどころか、蔓も伸ばせないでいるようですし、オクラやモロヘイアといった旱魃には強い野菜も、多雨には弱いんですね。

そんなわけで、枝豆が入りましたが、今年は甘みが乏しいようです。好子さんの枝豆といったら甘さが売りなのですが、今回はご容赦ください。

ニンジンも多雨のため、病気が入っているものがあります。見かけはきれいでも、日がたつにつれて発症。とろけてしまう場合があります。そういうニンジンに遭遇した方は、面倒でもご一報ください。

オクラピーマンも量が安定しないため、抱き合わせになっていますが、意外と好成績なのがトマト茄子。トマトは雨よけハウスがあるので、負担も少なくてすむのですが、雨が降ると泥沼みたいになってしまう畑の茄子。この生命力と強靱さには驚かされます。好子さんがいちばん力を入れている野菜だけのことはありますね。

今週はレシピがありませんが、精いっぱい頑張っている野菜たちをいたわるぐらいのつもりで調理してやってください。野菜をいたわるということは、自分の身体をいたわること。暑さにそなえて、力をつけておいてくださいね。