夏の過ごしかた

2006年7月第3週

今週の野菜セット

暑くなりました。

いきなり真夏日がやって来ると、毎年体験しているにもかかわらず、去年もこんなに暑かったのかしら、などと思い、そういや毎年そんなことを思っていたことに気がつきます。そして来年こそ、暑くなる前にクーラーを入れるぞ、と決意を新たにするのですが、たぶん来年も本格的な暑さに遭遇するまで、そんなことなど思いもつかない・・・。

そんなことを繰り返して、もう十数年。この健忘症のおかげで、逆に身体は健康でいられるのかもしれません。まあ、夏は暑いものですが、ほんとうの真夏日は一ヶ月前後。熱帯夜も毎晩ではありませんからね。暑いときもきびきび働こう、なんて思うから無理が生じるのであって、暑いときはだらだら、ごろごろしててもいいんじゃないでしょうか。

夏の昼下がり、アスファルトの道を歩かされている盲導犬など見かけると、かわいそうを通り越して、そんな時間帯にうろうろする人に対して腹が立ったりするものですが、よく考えてみたらわたしたちだって、みんなその犬みたいなもの。どんな条件下でも、職務はちゃんと遂行しなければならないのです。

ほとんどの犬は無職ですが、職がないから気楽かというとそうでもなさそうです。木陰のない庭先につながれている犬を見ると、炎天下の路上で交通整理をしている作業員を連想しますし、室内に閉じこめられた犬は地方公務員。うちの犬は室内外を自由に行き来できるといっても、ごく限られた範囲内ですから、これまた準公務員。ときおり土間を掘って縁の下から脱走し、おしおきに鎖をつけられていますから、留置所経験者でもあります。

ほんとにだらだら、ごろごろと暑い夏をやり過ごすことができるのは、うちでは山羊とウサギと猫ぐらいでして、猫のいるところはいちばん涼しいといいますが、山羊とウサギも同様です。とくに山羊のいるところは、風ひとつない暑いときでもそよそよと風が通り、昼寝するときはそこへお邪魔することにしています。冬は冬であたたかく、布団なしでもうたた寝できる。不法侵入者、みたいなイヤーな顔はされますけどね。猫やウサギではスペースに問題があるものですから・・・。

ま、野生に近い状況に置かれていると、人間以外の生き物は上手に暑さ寒さをしのぐことができるようです。このところウサギのモモの姿を見かけないので、もしかしたら青大将にでもやられたか、と案じていたのですが、避暑のため勤務時間を変えてたんですね。もともとウサギは夜行性ですから、日中活動している時期のほうが例外だったのかもしれませんが・・・。

先日、うちの猫が夜中になっても帰ってこないので、探しに出たら畑の中でモモと遊び興じていたのでした。月明かりの下、ウサギと猫がじゃれ合っているなんて、ちょっとシュールな光景でしたけど、かれらの臨機応変といいますか、変幻自在な暮らしぶりがうらやましく、時計もカレンダーも生活っていいなあ、と思ったのでした。

話変わって、スズメは日中でも飛びまわっていますけど、カラスは鳴りをひそめています。身体が大きい上、あの黒いスーツでは炎天下、つらいでしょうからね。木陰に入って、口を開けてハアハアと息をしながら体温を下げているんだと思います。

鶏もどちらかというと暑さには弱く、産卵率が低下します。昔は口をいっぱいに開けて、あえぐように息をしながら、それでも暑さに耐えきれず、熱中症で死んでゆく姿をよく見かけたもので、そういう鶏は羽をむしると肉が変色。湯気まで立てていたものです。かと思うとそのまま放置され、蛆まみれになっていたり・・・。

そんな過酷な養鶏場から一転。寺内さんの鶏舎にはじめて足を踏み入れたときは、その快適な環境にびっくりしたものです。ゆったりしたスペースと、塵ひとつない清潔さ。巨大な換気扇による強制排気で、常に空気が動いている上、天井が高いので熱気もありません。餌と水も循環するシステムになっていますから、強い鶏が餌を独占することもありませんし、ストレスから弱い鶏が突きまわされるようなこともないのです。

だから、これだけ暑くなっても、卵の質など気にせずに出荷できますし、クレームもなくなりました。でも、卵は生き物ですから呼吸をしています。暑くなれば呼吸する回数が増えるので、卵がゆるく感じられることがあるかもしれません。白身に張りがなくなってくると、割ったとき、卵の殻にふれたりして黄身の幕が破られやすくなりますから、気になる方は冷蔵保存してください。とはいっても、裸にして卵用の棚に並べると、呼吸孔がふさがれるため、かえって鮮度が落ちてしまう場合がありますので、紙パックのまま野菜ボックスに入れるようにしてください。

ちなみにこの卵、常温でも腐敗するようなことはありません。試しに放置しておいたところ、3ヶ月もすると卵の内容量が減ってきますが、まだ食べられます。6ヶ月をすぎたらどうなるか。気がついたら1年ちかくたってしまっていたのですが、水分がすっかり抜けてミイラ状態。起きあがり小坊師みたいになっていました。これは卵版・即身仏ではないか、と感動したものですが、ま、みなさんは新鮮なうちに召しあがってくださいね。

今週の野菜とレシピ

先週あたりから夏らしい内容になってきましたが、今週はそれに加えて夏の風物詩・とうもろこしも入りました。

とうもろこしは鮮度が命。届いたら、なるべくその日のうちに調理するのがベストですが、そうは行かない場合もあります。そんなとき、ぜひお勧めしたいのがとうもろこしの炊き込みご飯。とうもろこし2本に対して、米は3合前後。水の量は通常通りで、大さじに軽く1杯塩を入れ、包丁でそぎ落としたとうもろこしを入れるだけ。これは豆ご飯は苦手という男性にも人気がありますし、とうもろこしはさほど好きじゃない、という人もおかわりするぐらい・・・。炊きたてより冷めたぐらいのほうがおいしいので、食欲のない人にもおすすめです。

オクラ、モロヘイヤといった、夏を乗り切るヌルヌルパワーも登場です。モロヘイヤはさっと湯がいて、鰹節と醤油で食べるとクセがありませんが、揚げるとヌルヌル感がなくなるかわり、香りがとてもよくなります。

オクラは湯がくというより、熱湯をまわしかけるぐらいにして小口切り。今年も梅醤油を作った方はそれをかけて・・・。作るのを忘れてしまった方は、酢醤油と鰹節で食べてくださいね。

どじょうインゲンは300グラムに増量してあります。これだけあると煮物にできますから、牛肉や鶏の手羽肉と炒め煮にしてはどうでしょう。茄子とインゲンを素揚げにして、唐辛子少々といっしょに麺つゆに浸けた揚げびたしもおいしいですよ。

トマトも味が乗ってきたようです。来週はとうもろこしと並ぶ夏の定番・枝豆が入りますのでお楽しみに・・・。