カラスの難民

2006年4月第3週

菜種梅雨というんでしょうか。とにかくよく雨が降るので、今年は田植えの時期になっても、水不足は心配なさそう。そのせいか、例年より田圃に水が入るのが早いようです。

田圃に水が入ると、とたんにカエルが鳴きはじめ、夜はにぎやかになるのですが、そちらのほうは今ひとつ。鳴き声は聞こえますが、大合唱にはほど遠く、いくら水が豊富でも気温がこう低くては、恋歌など歌う気分になれないのかもしれません。

昨年末、うちの中に冬眠しそこねたドジなカエルがいたもんで、モミガラを詰めた植木鉢に入れておきました。玄関で越冬させていたのですが、4月に入り、外に出しておいたところ、いつの間にか空っぽになっていましたので、無事に這い出すことができたようです。

カエルが出てくると、ヘビも動きだす。まだ姿は見かけませんが、うちの青大将とヤマカガシも起きだしているはずです。どちらも今ではかなり大物。猫にやられる心配はなくなりましたが、今度は逆に、ウサギのモモは食べちゃダメ、っていい聞かせておかないと、テリトリーがダブッているだけにちょっと不安。ま、生態系の豊かさというのは、こういうスリリングなドラマにも満ち満ちているんでしょうけどね。

ツバメの営巣もはじまりました。うちは怠惰でデブで動きのにぶいオス猫しかいないので、ツバメもさほど気にかけていませんが、アラレちゃんのところがたいへんみたいです。なにしろ18匹もの老若男女が、たえず軒下をウロウロしているわけですから・・・。居候の野良猫も入れたら20匹?

遠路はるばる、それも海岸線からこんなに奥まったところまで足をのばしてくださったツバメたちです。不祥事があっては申しわけない。いや、それ以前に敬遠され、二度と来なくなってしまったら家が廃るとばかり、猫を遠ざける作戦に明け暮れているんだとか。猫の世話だけでもたいへんでしょうにねえ。

それにしてもツバメというのは幸運な鳥ですね。白鳥もたいせつにされていますが、ごく一部の地方に渡来するだけ。全国区で歓待されるのはツバメぐらいで、渡りの最中、カモのように狩猟の対象になることもないのです。

小さな身体ですばやく飛びまわり、虫を捕る。しかも普段着が燕尾服。軒下に糞を落としたところで、だれも文句などいいません。この時期、スズメもおなじぐらい虫を食べているのですが、雑食の悲しさで秋には米など啄みますから、だれも褒めてくれないのです。頭に来るぜ、というわけでよそ者のツバメの巣など落としにかかったりするから、ますます人に嫌われるという悪循環。カラスも同様で、スズメより身体が大きい分、目につきやすく、声も大きくなるから嫌われかたもダントツですが、スズメが減少傾向なのに対して、こちらは繁殖に成功しています。ただし、増えているのはいわゆるハシブト。都会派のカラスたちで、もともと山野にいたハシボソは、ここへ来て急激に生息範囲を狭められているようです。

この事務局でもわが家の周辺でも、去年あたりからハシブトを見かけるようになりました。以前、この欄で「ひとり、ぽつんと」電柱にとまっているカラス。あれはうちから巣立ったキョロちゃんではないか、と家人が心配していた話をしましたが、よく見たらハシブトで「ぽつんと」どころか、堂々とハシボソのテリトリーに侵入していたのでした。

この冬あたりから、ゴハンを食べにやって来るのがハシブトのグループになり、もとのフアミリーはどこへ行ってしまったのか。キョロちゃんだけは隙を見て、古巣に帰って来ているらしく、わたしの寝室のわきにある箪笥の上のゴハンがちゃんと啄まれています。が、それもいつまで続くのか。滅びゆく一族に属してしまったキョロちゃんの将来は、けっして明るいものではなさそうです。

ここ事務局でも先月から、カンちゃんとランちゃん夫婦、それに足のわるい坊やがさっぱり姿を見せなくなって、代わりにハシブトがゴハンをねだるようになりました。だれがおまえらにゴハンなどやるか、と思っていましたが、ハシブトは人なつっこいのが特徴で、目つきもハジボソのように鋭くありません。どことなく愛嬌があるのです。カンちゃんランちゃんはどうしているんだろう、と思いながら、催促されればついゴハンをあげてしまう。ここでも坊やだけは残っていて、よそ者にもゴハンをあげないと、坊やがゴハンを食べられないという事情があるんです。

東京でカラスが撃退されると、そのカラスが周辺に流れ出す。埼玉県からはみ出したカラスがさらに北上して栃木県入り。身体の大きさも知能も勝ったハシブトが、ハシボソのテリトリーを次々と占領。ついにこんな山の中まで来てしまった、というのが今、カラスの世界で起こっていることなのだと思います。

石原のオッサンよお、うちのキョロちゃんはじめ、ハシボソのフアミリーが行き場をなくしているなんて、単細胞のおまえさんにはわかるまいが、この理不尽、巡り巡っておまえさんのところにも押し寄せてゆきますぜ。この恨み、晴らさでおくものか、とハシブトもハシボソも毎日のように鳴いております。

今週の野菜とレシピ

タケノコが入りました。海老原京子さんの竹林ですが、去年から青山さんが堀り出してくれています。それまでは京子さんとアラレちゃんが協力して掘っていましたが、タケノコは地面から顔を出してしまうと商品にはなりません。大きなものを掘り出すとなると、それはそれは重労働。そこで女手では気の毒というわけで、青山さんががんばってくれることになりました。

タケノコは届いたらその日のうちに添付のヌカ、唐辛子といっしょに湯がいてください。箸がすっと通るぐらいになったらそのまま冷まし、あとはきれいな水に浸けてください。タケノコご飯、若竹汁、含め煮などなど、お好きなように・・・。

姫皮は梅肉和えにするのが一般的ですが、かき揚げにしてもおいしいですよ。ミスマッチみたいですが、細切りにしたハムと姫皮のかき揚げが意外なおいしさ。なんといいますか、お菓子でいうなら駄菓子みたいで、ジャンクなところが魅力的。パセリと竹輪のかき揚げもそんな感じです。

アートグリーンはあぶら菜の一種。かき菜同様、炒めもの、おひたし、おつゆの実にご利用ください。小松菜も若返って再登場。まだ小ぶりなので、スープか味噌汁で・・・。

来週は山ウドが入ります。好子さんのかぶも大きくなってくれるといいですね。