畑の友人たち

2006年6月第2週

今週の野菜セット

梅雨の晴れ間。

ようやく太陽が顔を出し、初夏の陽気になりました。先週は溜まりに溜まった洗濯物をかたづけたり、布団を干したり・・・。ひさびさに窓を開け放ち、押入や箪笥まで開け放ち、風を通してカビ臭い空気を一掃。すっきりした気分です。

家の中はすっきりしましたが、庭に出ると草が背丈を伸ばしています。農家も除草に大わらわ。地面が濡れているときに草をむしると、土がごっそりついてきて、草はすぐに復活してしまいます。そのうえ畑の土が奪われますから、これは晴れ間にしかできない仕事なんですね。

ええい面倒、とばかり耕耘機でかきまわすのが福田さん。彼がゆったりと耕耘機を運転していると、その後をカラスがついてまわります。土の中から虫が掘り出されるのを啄んでいるんです。ハーメルンの笛吹男はネズミを従えていましたが、彼はいつも鳥といっしょ。顔なじみのセキレイもいるようで、彼が畑にやって来ると、かならず挨拶に降りてくるそうです。

みんなそれぞれ畑の友がいるようで、好子さんの場合は「麦蒔き」という変わった名前を持つ小鳥。これは麦畑の上を、ピッピッピと小刻みにさえずりながら飛ぶ習性があるので、そういう名前になったんでしょうが、スズメぐらいの大きさなので、姿はよく見えません。ピッピッピという特徴のある声で、ああ近くにいるんだな、とわかるんですね。

近くに麦畑があるわけでもないのに、彼女が茄子の手入れをはじめると、どこからともなくそれが聞こえてくる。姿が見えにくいので、かなり長い間悩んでいたらしいんですけどね。なんだろう、なんだろう、ひょっとして天使か妖精?んなわけないよね、となどと思っていたらあるとき、小さな鳥が目の前の茄子の支柱に止まって、リズミカルに尻尾を振りながらピッピッピ・・・。それはわたしよ、と教えてくれたそうな。

家に帰るなり、子供の本棚から鳥類図鑑を引っ張り出して、はじめて「麦蒔き」という名前に遭遇。以来、その声を耳にすると仕合わせな気分になって、疲れなど吹き飛んでしまうんだそうです。

日曜農家ではありますが、わたしにも畑の友がいます。みなさん、愛らしい友人をお持ちのようですが、わたしの場合はガマガエル。ゲッと思われるかもしれませんが、つきあってみれば小鳥たちに勝るとも劣らぬ可愛らしさ。なかなか魅力的なヤツなんですよ。

なれそめは5~6年前。春先に畑の草取りをしていたとき、土の中でまだうとうとしていたガマガエルをうっかり鎌で傷つけてしまったんです。カエルたちは啓蟄を過ぎると移動して、かなり浅いところまで出てきています。そこへ草刈り鎌などをグサッとやると、怪我をさせてしまうんですね。

背中をざっくり切られたガマガエルは、それでも眠っていましたが、さあどうしよう。血の出ているところに唾をつけて、そっと土をかぶせておいたのですが、後味のわるさが残ります。その前には小さなカエルの足を1本、もぎとってしまったこともあります。あのカエルは生きていても、繁殖に加わることはできなかったでしょう。そんなこんなで注意はしていたつもりなのに、またやってしまったんですからね。

そうはいっても、いつの間にか忘れてしまうのが人間の身勝手さ。夏にはそんなことなどすっかり忘れて、性懲りもなく畑の草をむしっていました。そんなとき、ひょっこりそのガマガエルが姿を見せたのです。背中の傷跡がもっこり盛り上がっているのが動かぬ証拠。あのときは感動しましたね。すっかり忘れていたくせに、気になってろくに眠ってなかったみたいに驚喜。おもわずガマを両手に包みこんでしまいました。

じつはそれまで、どちらかというとカエルは苦手で、素手でさわることなど思いもよらなかったのですが、そのときは気がついたらガマを抱きあげていた。

それによく見たら、ガマの顔ってだれかに似ている。こんな役者いなかったかしら、と思うぐらい男前だったんですね。カエルが王子さまになったというのも、まんざら作り話ではなかったのかも。

挨拶が終わると、ガマはそそくさと積み上げられた雑草の中に入ってゆきました。山になった草の下は、湿り気があるので居心地がいいんでしょうね。格好の避暑地でもあったのです。以来、刈り取った草はすぐに捨てず、山にして残すようになりました。あ、それから春先の草取りも鎌は使わず、鏝のような道具に変えましたからね。

今週の野菜とレシピ

先週にひきつづきキャベツが入ります。やわらかい春キャベツは生食向き。炒めものにするときも、軽く油をからめるぐらいにしたほうがおいしいですよ。

エシャロットは味噌をつけて食べるのが一般的ですが、薬味としてもご利用ください。納豆にきざんだエシャロットを入れると、香りが最高。歯ざわりがよく、ネギよりもおいしくなります。

春菊の旬は、じつは今ごろ。この時期の春菊はサラダがおすすめで、カリカリに炒めたちりめんじゃこ、あるいはベーコンといっしょにどうぞ。

おかのりは葉と茎に分けて使います。葉っぱのほうはかき揚げがおすすめ。茎は湯がくとぬめりが出るので、きざんで納豆と和えたり、ワラビのように鰹節と醤油をかけたり・・・。分けるのが面倒な向きは、全体をおひたしにしてもおいしいですよ。

春大根。ほのかな辛みを利用して大根おろし。辛みが苦手という方は、短冊に切ってサラダというのはどうでしょう。鰹節をのせ、酢醤油をかけるだけでさっぱりした和風サラダになります。

今年から、きゅうりはイボなし。トゲのないつるりとしたタイプになりました。きゅうりのイボというのは、収穫時にはかなり鋭利で痛いものです。それを素手で収穫できるようになった上、味もまろやか。まず、味噌をつけてかじってみてください。

パセリは丈夫な野菜なので、水を入れたコップに挿しておくと長持ちします。料理の脇役だけでなく、キッチンのグリーンとしてもお役立てくださいね。