現金なスズメと律儀なカラス

2006年8月第5週

今週の野菜セット

あちらこちらで集中豪雨。

このあたりでは恵みの雨となりましたが、どうやら雨には二種類あるようです。上空の冷気を運んでくる雨と、蒸し暑く、ひたすら不快指数を上げるだけの雨。前者は人には心地よいのですが、ときとして君をともなったりするので、災害にもなりかねません。蒸し暑くても、しとしと降る雨のほうが農作物には心地がよさそうです。

稲の穂が頭をたれ、一面あざやかな緑だった田圃がすこしずつ黄ばんできました。暑いのなんのとボヤいていても、季節は確実に動いでいるんですね。

それと同時に、ついこの間まで事務局にむらがっていたスズメたちが、ぴたりと姿を見せなくなりました。福田さんが提供してくれる割れ米や、アラレちゃんのパンを目当てに、カラスとともにおびただしいスズメがやって来て、春先から初夏にかけて、ヒナの生育にともなってすさまじい食欲を見せ、夏の盛り、カラスが姿を見せないような暑い日でも元気いっばい。旺盛な食欲を見せていたのが、影も形もありません。

そろそろ稲に実が入ってきたんでしよう。実が入ったといっても、コシヒカリなどはまだミルクのような液体で'かたくなるのはもうすこし先。でも、品種によっては米粒ができあがっています。今ごろ田圃に群がりながら、やっば新米はうまいねえ、日本人(?)に生まれてよかったねえ、なんていっているのかもしれません。実際、田圃のわきを車で通ると、おびただしい数のスズメが飛び立ちますから、だれよりも早く新米の味見をしているというわけ。スズメって、現金だよねえ。ついこの間まで、パンだ米だと騒いでいたのが、今、パンを投げても知らんふり。パンだの古米だの、アホらしくて食えるかって顔なんだよね、とアラレちゃんはむっとした表情。パン代だってバカにならないのに...。

その点、カラスは律儀でかわいい、といいます。雨にも負けず、風にも負けず、夏の暑い日には陽が陰るのを待って、かならず姿を見せ、こちらがそれに気づくのをじっと待っている。新米だって、人の上前をはねたりせず、刈り入れが終わるのを待って、落ち穂を拾うぐらいなんだから...。

たしかにたわわに実った田圃からカラスが飛び立つことはなく、稲刈りが終わるのを待っでいるみたい。コンバインの後をついて歩き、飛び出してくるイナゴやバッタを啄んでいるのもカラス。ミレーの絵画さながら、落ち穂拾いをしている姿もよく見かけます。人間がこれをやらなくなりましたからねえ。

でも、スズメのほうにもいい分がありそうです。スズメが田圃に群がるのは、たしかにこの時期がいちばん目につきますが、それ以前にも訪れて虫を捕っているんです。今は農薬を散布するところがほとんどなので、初夏の田圃でスズメを見ることがなくなりましたが、福田さんや青山さんの田圃にはいつもかれらの姿があり、かれらが虫を捕ってくれなかったら収穫量はかなり減っているはず。青い米を啄むぐらい、大目に見てあげなくっちやね。

その昔、中国の大躍進時代、毛沢東が米を盗み食いするスズメをプチブル呼ばわりし、駆除を命じたことがありました。奨励金目当てにスズメが捕らえられ、農村から姿を消したと思ったら、虫が大発生して収穫量が激減。そのときの餓死者は2千万にも達したそうです。当時の中国は厚いべールに包まれていましたから、最近までだれも知らなかったわけですが、いくら人口が多いといってもねえ。一面だけを見て、物事を判断するのがいかにおそろしいか。革命家が身をもって教えてくれたというわけです。

田圃に群がるスズメを見たら、追い払うのではなく、ご苦労さん、ぐらいはいってやらなくっちゃね。

今週の野菜とレシピ

箱を開けると、葉ショウガのさわやかな香りが立ったはずです。食欲をそそる香りですね。小ぶりのショウガはそのまま味噌をつけてかじってください。大ぶりのものは薬味でどうぞ。葉っばのほうは食べられませんが、きれいに洗って魚料理の敷きものなどに使うと、料理が映えます。消毒効果だけでなく、消臭効果もありますので、輪ゴムで束ねて冷蔵庫に入れておくという手もあります。

素揚げにした茄子に、たっぷりのおろしショウガと醤油をかけて...。これはあつあつでも、冷めてからでもご飯がよく進みます。ゴーヤも素揚げにしてショウガ醤油をかけると苦みが消え、またちがった味わいになりますよ。モロへイアも湯がいておひたしにすると、ほとんど匂いがありませんが、てんぷらにするとお茶のような香りになります。香りが出るかわり、ぬめりが消えてしまうのでモロへイアのヌルヌルが苦手、という方にもおすすめ。オクラのてんぶらもおいしいものです。わが家ではオクラを1センチ弱に切り、小エビといっしょにかき揚げにしたのが人気。そのとき、オクラや茄子のへタの部分も,小ぶりのサイコロに切ってかき揚げ。本体よりもへタのほうがおいしいぐらいで、これはだれにも上げられません。ひとり分ぐらいしかできないので、これは料理人の特権。このへタ天でお茶漬けなんかすると、もう最高ですよ。

今年は雨続きで土用干しができなかったので、梅干しが遅れていましたが、ようやく新物ができてきました。来週はそれが入りますのでお楽しみに...。