真夏日

2006年8月第2週

今週の野菜セット

暑くなりました。待ちに待った真夏日ですが、今年は今までが涼しかった分、こたえるようです。

犬も猫も床にのぴるとゴム製品みたいで、こんなに身長があったかしら、と思うぐらい長くなって寝ています。人間はそこまで伸縮自在ではありませんが、こう暑いと自分の身体が不必要に大きく感じられたりして...。元気がいいのは庭先のへビぐらいで、もともとあのヒトたちは伸びきっていますものね。おかげさまで夏野菜は本領発揮。ようやく活気づいてきたようです。

梅雨明け以来、一滴も雨が降っていないので、野菜にも負担がかかっているのかもしれませんが、草がびたりと伸びなくなりました。水気がないので発芽もできない。草の管理がとても楽になっています。

夏の朝、いちばんにすることは寝室から眼下の畑を見下ろすこどで、毎朝のことなのについつい見入ってしまいます。手入れの行き届いた庭や畑の鑑賞は、自己満足以外のなにものでもないのですが、足下の猫がご飯の催促をしていても、なかなか目が離せないのはそれだけではなさそうです。

野菜の列と、赤茶けた土とのコントラスト。中でもズッキーニの株が畑に落とす影の濃さが強烈で、夏の光と対照的なんですね。植物が持てるかぎりの生命力を譲歌する夏。その真下に黒々と、来るべき死が横たわっているんですから、惹きつけられないわけがありません。

日が短くなるにつれて、植物の影が伸び、それが山羊の柵に届くころには枯れ落ちるのですが、短くても影が濃い分、生と死のドラマが強烈に感じられるのかもしれません。日が高くなってくると、鳥のさえずりもなくなります。そんな静寂の中の無言劇。焼けつくような陽光の中心にひと粒、氷のように冷たい核があるのを感じるのはそんなときです。

そういうひやりとしたものを、日中、仕事をしながらも感じられたらいいんですけどね。いざ、畑に立って動きはじめると、頭上の陽光より地面から立ち上る幅射熱のほうが強烈で、そんな核など吹っ飛んでしまいそうです。

でもね、暑いのははじめのうちだけなんです。農家って、みんな暑苦しい格好をしてるでしよう?夏の盛りだというのに長袖のシャツを着て、汗取りの下着まで着ています。暑苦しい帽子をかぶって、首にはタオル。わあ、イヤだと思うかもしれませんが、じつはあれ、冷却装置みたいなものなんです。炎天下でそんな格好をしていたら、じっとしていても汗をかきます。ちょっと動くと、着ているものまで汗まみれ。するとそれがじりじり灼かれて蒸発しますから、気化熱が奪われるんですね。草むしりなどしていれば、次から次と汗は噴き出してきますから、そよとでも風が吹けばクーラー顔負けの涼風となるわけです。

これ、究極の避暑法かもしれません。昼下がりなど、素っ裸になっても暑いものですし、クーラーでしのいだところで、それほど心地よいものではありません。農家のような姿になって掃除をする、あるいは車を洗う...。汗で重たくなったシャツを脱いだときの爽快感、シャワーを浴びた後のビールは格別。ただし、水分を十分に取っておかないと熱中症になりますからね。これだけ大量の汗を流すと、水だけでなく塩分も必要なので、農家は水の中に梅酢をたらして飲んでいます。これだと塩分だけでなく、クエン酸も補給されるので炎天下でも疲れにくいんですよ。

炎暑の核には正反対の冷たさがある、というとヘソ曲がりみたいですが、まんざらウソでもなさそうです。それが証拠に、冬より夏のほうが風邪をひきやすい。多湿のおかげでインフルエンザが猛威をふるうことはありませんが、くしゃみ、鼻水程度の風邪は多くなります。

体調を崩すのも、暑さのせいというより、冷やしすぎによるもののほうが多いようですから、冷たいものを飲みすぎない。身体を冷やす夏野菜をあたたかくして食べる、といった工夫で乗り切ってくださいね。

ようやくアブラゼミが鳴きはじめたと思ったら、ツクツクボウシもいっしよに鳴いていますから、今年は夏が短かそうです。今のうちに暑さを満喫しておいたほうがいいかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

茄子トマトピーマンオクラと夏野菜が勢揃いしましたが、今週からきゅうりは好子さんの畑から...。福田さんのイボなしきゆうりほど艶やかではありませんが、昔ながらの品種ですからなつかしい味わいがあります。材料がそろったところで、夏野菜スープを作ってみませんか?真夏にあつあつのスープなんて、と思われるかもしれませんが、不思議とこれは暑ければ暑いほどおいしく感じられるものです。

玉葱じゃが芋を手頃な大きさに切って、ベーコンといっしよに水から煮ます。スープストックを使うより、このスープはなぜか、このほうがおいしいのです。肉類はダメという方はべーコンを入れなくても、野菜からしっかり出しが出ます。ぐつぐつしてきたらトマトもサイコロに切って入れ、じやが芋がやわらかくなってきたらピーマンを加えます。このとき青とうがらしも入れるとピリッとしておいしいのですが、好みがありますので、1本ずっ小口切りにして加え、味を見ながら増やしていってくださいね。

味つけは塩とオイスターソースを少々。ベーコンを使ってない方はナンプラーのような魚醤も加えると、味に深みが出てきます。火を止めてから、小口切りにしたオクラを入れ、ひと混ぜしたらできあがり。ガーリックトーストがあれば理想的ですが、これをご飯にかけてもおいしいですよ。トマトの酸味が食欲増進剤。これで身体をいたわってくださいね。