雑草という知的生命体

2006年7月第1週

先週は梅雨の中休み。でも、それが一週間も続くと地面がカラカラになり、いいかげんうんざりしていた雨も「恵みの雨」に取ってかわります。

畑であえいでいた野菜たちが、急に元気になってくるのが、目に見えてわかります。こちらも元気のおすそわけをもらっている感じ。急に気温が高くなってあえいでいたのは、じつは人間のほうだったのかもしれません。

身勝手なものですが、雨の音で目をさましていたころは、ああ、今日もまた雨か、ともうひと眠り。犬の散歩、なんとかパスできないものか、などとものぐさなことを考えているのですが、ひさびさの雨となるとちがいます。おっ雨だ、といそいそ起き出して、こう暑くなってくると犬の散歩も雨が降っているぐらいでなくっちゃ・・・。

人の心の七変化。空模様と気温の組み合わせぐらいで、こうもやすやすと変わるところが風に揺れる草のようで、所詮人も自然の一部。動植物同様、地球の末端神経みたいなもので、専売特許の理性や感性などというのも、適温・適湿でなければ作動しないのではパソコンとおなじじゃないか、なんて思ったりしてね。知的生命体といったところで、知的でない生命体などこの世に存在しないんじゃない?

雑草だって、相当に知的です。発芽する場所を選んでいますし、天敵である人の目を欺く術までちゃんと心得ているんですから・・・。毎年、感心させられるのですが、見つかれば引き抜かれることを承知しているかれらは、野菜やハーブ、あるいは観賞用などいった植物のそっくりさんとして生き残り、子孫を残すという戦略で対抗しています。

たとえばシソが生えていたところには、シソそっくりの葉を持つ草が、ほんものよりひと足早く出てきます。かなり大きくなるまで農家でも見分けがつかないぐらいで、あやしいな、と思いながらもそのままにされ、ほんもののシソが芽を出して、ちがいがわかってくるころには、もう花をつけているという寸法。毎年、だまされそうになりますが、花をつけてしまったものには「あんたの勝ち」と脱帽するしかありません。

シソは栽培の歴史が長いので、そっくりさんも2~3種います。その昔、まちがって食べてしまったことがあるぐらい・・・。歴史の浅いものでも、タイムの茂みにはそっくりの葉の草が、バジルやデイルの中にもどさくさにまぎれたようなのが混じっていますから、その対応の早さには驚かされます。それもほかの場所には見あたらず、ちゃんと狙いを定めているんですから、これってまちがいなく知的生命体でしょう?わたしたちはいろんな動植物を知ったつもりになっていますが、じつは知らないことのほうが多いようです。たとえば山羊や羊は頭がわるいといわれていて、わたしもそう思いこんでいたのですが、実際に生活を共にしてみると大ちがい。山羊との出会いがなかったら今のわたしはなかったかもしれない、と思うほど多くのことを教わりました。

ウサギも同様。去年、ウサギの子をもらうまでは、犬や猫ほど頭がよくない、と勝手に思いこんでいたのですが、これがまたじつに知的な生命体で、目からウロコが何枚はがれたことかわかりません。家族や友人には、いつもバカだ、バカだといってるくせに、飼ったとたん、なんでも「お利口」「すばらしい」になってしまう、と笑われるのですが、よく考えてみたら、そんなバカな生きものが何千年も生き延びて来られるわけがありませんものね。

ま、これでわたしもひとつ賢くなったわけです。要するに「バカ」というのは自分の無知を指すもので、バカ、バカというヤツほどなにも知らないバカだったんです。地球の末端神経は、どれひとつとっても精巧な完成品。しかも、刻々と変化する環境に対応できたものだけが生き残っている。ハエや蚊もそうかと思うと、ちょっと叩きにくくなりますけどね。

今週の野菜とレシピ

お天気が今ひとつはっきりしないので、茄子の生育がよくありません。晴天が何日も続くようになると、どんどん大きくなってくれるんですけどね。そんなわけで申しわけありませんが、今週もズッキーニと抱き合わせという形になりました。

きゅうりもちょっと息切れ状態。今週はまた3本ずつになりました。

ニンジンはそろそろ葉がかたくなってきたので、葉っぱを落としてお送りします。

青山さんのどじょうインゲン。てんぷらにすると甘く、香りも濃厚です。胡麻よごし、芥子醤油和えなどもさっぱりしてますし、茄子やズッキーニといっしょに素揚げにし、麺つゆに浸けた揚げびたしもおいしいですよ。

葉ものが2種。先週は葉ものがなかったのですが、青菜のない野菜セットというのは、なんか殺風景な感じでした。

お馴染みのおかのりは茎にぬめりがあるので、好き嫌いがあるようですが、さっと湯がいて、ニンニクのスライスをかりっと揚げたものをのせ、胡麻油のドレッシングで食べると、エスニック・サラダ風。おかのりの味噌汁も、急に気温が高くなったときなど、妙においしく感じられます。

もう一方のオカヒジキ。これはシャリシャリとした食感が涼しげで、冷蔵庫1などなかった江戸時代には今以上にポピュラーで、庶民に人気があったそうです。さっと湯がいて芥子醤油かワサビ醤油和え。焼きそばに入れてもおいしいものです。

オカヒジキ中華麺

フライパンに油を熱し、スライスしたニンニクを炒め、香りが出てきたら豚バラ肉を入れ、それがこんがりしてきたところで多めに塩と一味唐辛子、オイスターソース少々で調味。オカヒジキを加え、最後に麺を入れてからめるように炒めます。

オカヒジキ蕎麦

乾麺でいいですから蕎麦を湯がいて水にさらし、油を少々からめておきます。フライパンに油を熱して細かく切った鶏もも肉とオカヒジキを炒め、蕎麦も加えて火が通ったら蕎麦つゆをジュワーッと音を立てながら入れ、七味唐辛子をふる。から煎りした松の実を散らすと香りがよくなります。