器用な鳥・不器用な鳥

2006年5月第3週

今週の野菜セット

初夏の太陽が容赦なく照りつける5月。田圃の稲苗が背丈を伸ばし、水面に落ちる影が日に日に濃くなってゆく・・・。そんな記憶がウソのような肌寒い日が続いています。雨が降っても降らなくても、空は厚い雲に覆われ、まばゆいばかりの新緑とも今年は無縁です。

遅霜の心配はさすがになくなりましたが、畑に定植されたナスやトマトも心細い感じですし、夏野菜どころか、ほんとうなら今が盛りのエンドウ豆も花をつけたまま結実できず、ときおり降る雨に濡れそぼっています。

この調子で行くと、春野菜よりハウスの夏野菜のほうが早くなるんじゃないか、なんて冗談も飛び出しますが、だれも笑えず、いった本人もとまどい気味。今年ばかりは、ほんとうにそんなことにもなりかねませんからね。

生まれてはじめて日焼け止めクリームを買ったのに、いつになったら使えるのかしら、なんて声も聞かれます。紫外線ですら、こんな年には待ち望まれる。暑くなったらなったで、うんざりすることになるんでしょうけどね。

話変わって、毎年うちの軒下に巣を作るツバメのつがいが、今年もまた巣を落としてしまいました。わたしも気にはしていたんですけどね。巣の下に板きれでも打ちつけて、補強してやったほうがいいんじゃないかって・・・。でも、営巣中にそんなことをするのも、なんとなく気がひけて、そのままにしていたら案の定、落ちてしまったというわけです。

今朝、小ぶりの落としぶたがあったので、おろおろ飛び回るツバメを尻目に、それを固定してきたんですけどね。アラレちゃんいわく、人間にも器用、不器用、いろんな人がいるけど、ツバメの世界もそうなんだろうね。とくにお宅は、デキのわるいのが行くようになってるんじゃない?

アラレちゃんのお宅に営巣なさっているツバメたちは、たいへんデキがおよろしいんだそうです。うちのツバメたち、たしかにデキはよくなさそうですが、めげないタイプ。去年も二度目の営巣で、ちゃんとヒナを育てあげていますから、今年もやってくれるでしょうが、できることならわたしが寄進した落としぶた。あれを生かしてほしいものです。だって、金槌で血豆まで作ったんですからね。あ、不器用なのはツバメだけじゃないって、たった今、気がついたりして・・・。類は友を呼ぶ、だったのかもしれません。

落ちた巣の中に、さいわい卵は見あたらなかったのですが、地元の野鳥たちはもうヒナが孵っているらしく、スズメもカラスも食欲が旺盛です。とくにこの時期、動物性タンパク質を必要とするスズメたちは、パンやご飯粒など見向きもせず、カラスのご飯にまっしぐら。カラスに脅されても、うるさがられても、隙を見ては餌を啄み、持ち去ります。ときには自分の頭ぐらいの肉片をくわえて飛んで行くこともあり、ヒヨドリやムクドリが姿を消した今、もっとも果敢で活動的。

畑にスズメが群がっても、この時期は虫を食べているのがわかっているので、農家もイヤな顔はしないようです。

雨の夜といったら、運転手がいちばんいやがる状況ですが、わが家の周辺ではそんなとき道路にカエルがあふれかえるので、とくにそれが顕著になります。どんなにスピードを落としても、カエルを轢かずに通れない。たとえそれを免れたとしても、前の車に轢かれたカエルの血がヘッドライトに浮かび上がる。それが異様に赤いのです。

犬や猫、このあたりではタヌキなどもしばしば交通事故に遭いますが、そういうものに出会っても、血が浮かび上がるようなことはありません。カエルだけ、まるで蛍光塗料のように血が光る。両生類の血には、なにか特殊な成分でも含まれているんでしょうか。

そのカエルを捕食しているヘビも光りそうなものですが、これもよく交通事故に遭っていますが、夜間には見えません。カエルだけが異様に光る。だからあんなに体が小さくても目立つのです。

濡れた路上に累々と横たわる発光体。それが翌朝にはウソのようになくなるのは、早朝、カラスがかたづけてしまうから。カラスは清掃者でもあったんですね。以前は路上に横たわった犬、猫、ヘビはうちに持ち帰り、庭先に葬っていましたが、一度、それをやろうしたらカラスの一群がいっせいに抗議。肉を横取りするなといわれ、考え方が変わりました。鳥葬という手があったのです。

途絶えた生命を土に帰すもよし、焼いて空に放つもよし、川に流して海へ帰すというのもありましたっけ。でも、鳥葬や獣葬が許されるなら、わたしもそれがいいな、とそのとき思ったものでした。でも実際に鳥葬となると、鳥が食べやすいように頭蓋骨などは割らなくてはなりませんから、ネパールやチベットの僧たちはけっこうエグい仕事もしなければならない、と聞いて、また変わりましたけどね。

ともあれ、この梅雨のような天気、なんとかなってほしいものです。

今週の野菜とレシピ

春大根の生育が遅れています。そこで好子さんのミニ大根。ふつうの大根の半分ほどの大きさで、大根おろしに最適です。ちなみに大根のよしあしを見分けるには、おろしてみるのが一番。できのわるい大根はおろしたとたん、水分と繊維が分離してしまいます。反対に元気なものは水分が流れない。繊維がぼってりと水気を含んでいるのです。この大根がまさにそれ。半透明に盛り上がる大根おろしに、じゃこをのせて・・・。醤油をかけると水分が出てきますが、それは塩分のなせるわざで、大根のせいではありませんので念のため。

早生ニンニクもミニサイズ。これはやわらかいので、ふつうのニンニクみたいに皮をむく必要がありません。丸ごときざんでご利用ください。茎の部分も肉や野菜と炒めてどうぞ。

間引き玉葱は油炒め。かぶは一夜漬け、またはスープで・・・。京菜、小松菜も涼しい日にはスープ仕立て。暑くなってきたらおひたしや炒めものでお召しあがりください。

オカヒジキはしゃりしゃりした食感が身上。それを失わないように、さっと加熱するのがおいしく食べる秘訣です。さっと湯がいて芥子醤油和え。お好みでマヨネーズを添えてください。

うちでよく作るのが、豚バラ肉と春雨を加えた炒めもので、春雨はお湯でもどして包丁を入れておきます。1センチぐらいに切った豚バラ肉をまず炒め、濃いめに塩、胡椒。オイスターソースも少量からめます。そこにオカヒジキを加え、しんなりしてきたら春雨を入れて全体をよくなじませます。味を見て、塩分の足りないところを醤油で補い、胡麻油少々で照りをつけると中華風。醤油のかわりにナンプラーを使い、レモンオイルを少量たらすとエスニック風になり、どちらもご飯によく合います。

ほんとうは今週、岩手の山菜が入る予定でしたが、まだ山の中に雪が残っているいるそうなので、来週に先延ばし。絹さやも通信にあるように、もう3週間も花のまま大きくなれないでいます。春野菜よりハウスの夏野菜のほうが先、という冗談が冗談でなくなって、来週は絹さやより早くハウスきゅうりが登場するかもしれません。