無駄な努力はなぜ無駄なのか

2006年6月第4週

今週の野菜セット

つかの間の梅雨の晴れ間。

人も動物も活動的になりますが、湿度が高いので、ちょっと動いただけでもう汗だく。犬も猫もウサギも山羊も、木陰で四肢を伸ばしきって寝ています。どんなに暑くても、疲れても動き続けているのは人間だけ。

つくづく、人って勤勉な生きものなんだなあ、と思います。これだけ働いているんだから、すこしぐらい大きな顔をしてもいいんじゃないか、とも・・・。でも、よくよく考えてみると、人間の労働には無駄というか、できればこんなことはしてほしくない、というようなことも多く、業が深い分、働かざるを得ないようになっているのかもしれません。

その点、土にかかわる仕事というのはわかりやすくて便利です。おなじように動いていても、体力の消耗のしかたに差があるからです。

はじめのうち、それは気温や湿度といった外的要因のせいにしていたのですが、どうもそれだけではないみたい。それでは、こちらの体調のせいかというと、それもちがうようなんです。

疲労困憊しながら、それでもなにかをやり遂げる。それをわたしたちは「努力」と呼びますが、そういう努力というのは人間界はともかく、自然界には受け入れられないみたいです。つまり無理をしてやったことは、かならず裏目に出る。こんなことならやるんじゃなかった、ということがよくあるんです。

反対に努力などせず、楽々とやってのけたことはたいてい正解で、花も実もある結果を生み出す。そこであるとき、はたと気がついたのですね。体力の消耗度というのは、周囲がそれを容認しているかどうか。その受け入れかたに比例するのではないだろうか、と・・・。周囲というのは、庭木や花々、畑なら作物のことですが、ほんとうはもっと深く、土中のミミズや微生物の意思も働いているのかもしれません。

ともあれ、かれらに歓迎されれば、どんな重労働もスムーズにこなせますし、逆になんか今日は気乗りがしない、というときはなにをやってもダメ。そういうときはさっさと気持ちを切り替えて、散歩でもしたほうがいいみたいです。散歩からもどっておなじことをやろうとすると、今度はうまく行ったりすることがありますから、こちらの心の持ちかたにも問題がありそうです。

動植物と波長が合うか合わないかで、仕事の内容がちがってくるので、その結果、こちらの消耗度も左右されるのかもしれません。周囲と一体化していれば、ミスをすることがありませんから、よけいな労働もしなくてすむからです。不思議と、そういうときは時間も長く感じられ、短時間で大仕事をこなしていたりするんですね。

犬の散歩が重荷になるかならないか、家事が楽しいか楽しくないか、家庭も職場も学校も、わたしたちの世界というのはみんなこういう原理で動いているんじゃないか。なおかつ、その起点となるのはわたしたち自身の波動、すなわち心が起こすさざ波ではないのか、と思ったしだいです。日ごろ、わたしたちが時間を短く感じがちなのも、じつはどこかで空回りしているせいなのかもしれませんね。

だから、まちがっても努力などはしないこと。努力して受験勉強などしても、なんの役にも立たなかったことを、わたしたちは思い出すべきです。真に必要な知識は、真に必要とされる時期が来れば、努力などしなくても体得できるものなのですから。

卑近な例を挙げると、わたしがまだ若いころ、「般若心経」ぐらい、ま、教養のひとつとしておぼえておいてもわるくはないかな、といった思いあがった動機で暗唱しようとしたら、これがさっぱりで、ひと月たってもおぼえられず、断念したことがありました。それが10年ぐらい前、わけもなく急に思い立って再挑戦したら、なぜか3日もしないうちにそれが暗唱できるようになっていたのです。

海綿が水を吸うように、なんの苦もなく、短いとはいえひとつの教典が頭に入ってしまったのですから、自分でもびっくりしました。びっくりしているうちに、なぜそれがこうも易々と身についたのか、わかるような出来事に遭遇して納得。そのとき、努力などというのは意味がないどころか、やってはいけないことをやっているときに使う言葉ではないか、と疑うようになったんですね。

流れに棹ささず、風の流れに身をまかせ、努力もせず、あせらず、なんでもあるがままを受け入れる。宮沢賢治流にいうと、そういう人にわたしはなりたい、と思うのですが、これが簡単そうでなかなかできない。つくづく、人が動植物のように生きるのってむずかしいんだなあ、と思います。

今週の野菜とレシピ

日照はともかく、気温はだいぶ高くなってきて、夏野菜もぼちぼちできはじめました。が、まだ量が安定しないので、今週は好子さんの茄子ズッキーニ、どちらか一方が入ります。

幸子さんのきゅうりは安定してきたようで、今週は5本ずつ入ります。梅雨どきのうっとうしい気候には、きゅうりのさわやかな香りと食感が清涼剤。大根ときゅうりを薄切りにして、ニンニクひとかけもスライス。いっしょにボウルに入れ、醤油をまわしかけるだけで、とってもさわやかな即席漬けになります。醤油をかけたら、すぐに食べてくださいね。長く置きすぎると、しょっぱくなり、きゅうりと大根の食感もわるくなりますから・・・。ニンニクの香りが意外なくらい、さわやかですよ。

キャベツも今週は幸子さんの畑から。先週までのキャベツとは品種がちがい、身がしまり、小さいながらもずっしり重たいタイプです。好子さんのキャベツが生食用だったのに対し、こちらは加熱向き。丸ごと八等分して、ベーコンを敷きつめた鍋に並べ、ひたひたまで水を入れてコトコト煮ます。あえて調味はせず、ポトフのように粒マスタードをつけながら食べると、あつあつでもさほど暑さを感じません。残ったスープは翌朝、利用してくださいね。

玉葱はまだ小ぶりですが、かき揚げにしてもサラダでも甘みが濃厚。新玉はみずみずしい分、きざむと目にしみますが、それが苦手という方は冷蔵庫で冷たくしてから調理すると涙が出ません。

来週はいよいよ新じゃがが登場します。