山羊の不思議

2006年9月第2週

今週の野菜セット

夕刻になると、カナカナという蝉にかわって秋の虫の声。日没もだんだん早くなってきました。

秋雨前線の影響か、蒸し暑い日が続いていましたが、そろそろ家のまわりも模様替え。葦簀(よしず)や籐いすがかたづけられ、室内の色調も秋めいてきます。畑ではトマトの棚が外され、葉の干からびたズッキーニが燃やされて、冬の準備。大根や蕪の種が蒔かれました。

心の中も模様替え。先週、昏睡状態に陥っていた山羊のユーリが息をひきとり、ぽっかりと大きな空洞ができたようでしたが、ウサギのモモがそれを埋めるように、やたらと足にからみつきます。

柵の中もがらんとして、この一週間で背丈を伸ばした草を刈ると、よけいに広く、その中を駆け回るモモがますます小さく見えるのですが、このウサギ、小さくても存在感はあるのです。ユーリが倒れたときはぴったりと身を寄せて、100キロ近い体重のあった山羊を、2キロにも満たない身体でちゃんと看病していたのですからね。

ユーリを埋葬するときも、ちゃんと立ち会っていましたし...。大きな山羊でしたから、墓を掘るのも遺体を運ぶのも、わたしひとりではどうにもなりません。隣近所の男手に協力してもらったのですが、ふだん、うちの家族以外にはけっして近づかないモモが、そのときは足下に来ていたのです。その日は雨だったのですが、わたしがべエ(ユーリの父親)の墓近くの草を刈りはじめると小雨になり、みんなで穴掘りがはじまるとそれがぴたりと止みました。大きな穴ですからね、ちょっと休憩、とみんなが休むとまた降りはじめ、さあ、日が暮れる前にやってしまおう、と腰を上げると雨が止む。そして遺体を穴におさめ、花を摘み、埋葬が終わったとたん、堰を切ったようにザーッと大粒の雨が降り出したのでした。

ベエのときもそうでした。ベエは屋根のないところでダウンしてしまったので、雨が気がかりだったのですが、半月以上、一滴も降らなかったのです。ユーリとちがって苦痛が長引きそうだったので安楽死という手段を取りましたが、墓を掘って埋葬を終えたとたん、大雨になったのでした。季節は春でしたが、真夏のように雷をともなう激しいスコール。山羊って不思議だねえ、天に通じているようなところがあるね、と娘と話し合い、今回、やっばりユーリも山羊だったね、とうなずき合ったのでした。

先週、12歳を目前に、と書きましたが、よく計算したら13歳を目前にした大往生でした。獣医師も、アンチリコンなしにこれだけ生きていたのは奇跡的。衰弱死とはいえ、これだけ短時間で、たいした苦痛もなく息を引き取るのもまた奇跡的、と話してくれました。アンチリコンというのはフィラリア対策の注射のことで、月に一度これを打っておかないと、生後2~年でフィラリア原虫が脊髄に入って腰が立たなくなる、というのが定説。腰が立たなくなってもすぐに死ぬわけではありませんが、営利目的の場合はその時点で処分されてしまうようです。

日曜日、アラレちやん一家がユーリの花束をたずさえて、お線香を上げに来てくれました。この家もユーリがいないと寂しくなるねえ。柵の中も、畑にでもしないと殺風景だし...。でもね、相変わらず犬の散歩からもどって来ると、ユーリが小屋から出てくる気配があるのです。車で帰宅したときも、斜面の草を食んでいたのが、長い首をもたげてこちらを目で追います。

また遇おうね、とユーリと約束したので、いつかまたオスの子山羊が裏山にでも捨てられて、ふらりとやって来るかもしれません。そのときのために、柵の中には手をつけず、草を刈るだけにしようと思っています。

今週の野菜とレシピ

里芋が入りました。先週が満月でしたから、中秋の名月にはまだ間がありますが、これが食卓に出て来ると夏も終わり。煮っころがしでも、衣かつぎでも、お好きな秋の迎えかたで...。

間引きニンジンも入りました。これだけの大きさになれば、一人前のニンジンになるのももうすぐ。今しばらくお待ちください。

ニンジン葉の佃煮:材料はニンジン葉1束分に対して、ちりめんじやこ30グラム前後と、煎り胡麻。フライパンに胡麻油を熱して、ちりめんじやこを妙めます。カリカリになるぐらいまで妙めたら、きざんだニンジン葉を茎のほうから加え、全体に火が通ったら醤油少々で調味。ちりめんじゃこに塩分があるので、醤油は入れすぎないでくださいね。煎り胡麻をたっぷり加えてできあがり。ふりかけ感覚でお召しあがりください。

小さなカボチャは少人数のご家庭にはびったりサイズ。切りわけるのも簡単で、扱いやすいのも魅力ですね。正確にはぽっちやんカボチャといい、人気のある品種。小さくても実がホクホクしています。

青菜の一番選手は京菜。味噌汁でもスープ仕立てでも、お好みで...。来週はいよいよ小松菜が登場しそうです。