春の草

2006年4月第1週

今週の野菜セット

寒のもどり。

先週は霜柱が立ち、薄氷が張る寒さが復活しました。この冬最後の寒波だとか。それでも日差しは春なので、桜の蕾がふくらんできましたが、それが冷たい北風にさらされている。見ているこちらが震えあがるような光景でした。

でも、週末にはあたたかくなって、今週あたり桜が満開。レンギョウもこぼれんばかりに黄色い花をつけ、その根元ではタンポポが咲きはじめました。牧草も背丈を伸ばしているらしく、山羊のユーリも、ウサギのモモも忙しそうにしています。ようやく、かれらのゴハンの心配をしなくてもいい季節になったみたいです。

ほっと肩の荷を下ろしたと思ったら、今度は抜け毛でボロをまとったようになった犬の世話。これからしばらく、犬猫の抜け毛と格闘する日々が続きます。それが終わるころ、夏野菜の準備がはじまり、植物たちと向かいあう日々。

あたたかい春の日差しなんて、ほんのつかの間。すぐにそれが強烈な光になって、うだるような暑さがやって来ます。でも、わたしはその暑さとは対照的な、植物たちが地面に落とす影の濃さが大好きなんです。すでに影は短くなった分濃縮されて、畑を黒々と彩るようになっています。

畑に吹きつける北風と、地面に落ちた黒い影。春の中を冬が駆け抜けてゆきますが、その足元にしっかり夏が根を下ろしている。春というのはじつに不思議な季節です。生命の不思議さがそのまま体現されているのかもしれませんね。

そんな風に考えると、春の空の変わりやすさも、なんとなくわかるような気がしてきます。生命の移ろいやすさ。儚いかと思えば力強く、図太いかと思えば繊細だったりして・・・。夏の間、あれだけ繁茂していた雑草も、火が消えたみたいに姿を消してしまいますからね。

その草も今は芽を吹き、背丈を伸ばしはじめています。畑の中に作物が黒々とした影を落とすには、その草が邪魔になる。野菜のためというより、わたしの場合、自分の美学のために草取りをしているようなものでして・・・。とてつもなく大株になるズッキーニ。それが地面に落とす影が、食用としてのズッキーニより好きなので、そこはとくに力が入ります。

それ以外のところに関しては寛大で、ほどほどに草が生えていたほうが、じつは畑のためにもいいのです。雑草の中には根を深く張りめぐらすものがあり、作物の根が届かないミネラルを地上近くまで持ち上げてくれることもあるからです。

とくにスギナ。これは地下に一大帝国を築くぐらいの勢いで根を張っていて、どんどん増えるものですから農家の嫌われもの。スギナ専用の除草剤があるぐらいです。でも、これは土地改良剤だったんですね。酸性土壌のところに多いのはpHを調整し、土壌を中性に近づけるため。地中のミネラルをカルシウムに変換させているんだそうです。地形が大きく変化しても発生するところを見ると、pHだけでなく土壌全体のバランスを持つ働きをしているようです。

わが家は山の中にあるので酸性土壌。庭も畑もスギナだらけになりますが、これだけはよほど目障りにならないかぎり、放置しています。山羊の食糧にもなりますしね。土壌のみならず、ヒトの体内環境も改善するらしく、スギナを陰干しにしたお茶は昔から万病に効くといわれています。最近ではツクシの薬効まで取り沙汰されるようになりましたが、こんなありがたーい草を邪魔もの扱いしてはいけませんよね。

今週の野菜とレシピ

今週は里芋が入りました。いっしょに塩漬けキノコも入りましたが、これはボリといって、東北地方では里芋といっしょに煮たり、味噌汁にするのですが、季節はもう春。里芋は里芋で湯がいて、木の芽和えというのはどうでしょう。木の芽はすり鉢ですり、そこに味噌と砂糖を加え、湯がいて皮をむいた里芋にからめます。ここで注意。料亭などで供される木の芽和えはうっすら緑色ですが、山椒だけであの色を出そうとすると、口がしびれて食べられなくなってしまいます。だから木の芽はほんの少々。お店では湯がいた小松菜、あぶら菜などをいっしょにすり鉢に入れて色づけしているのです。木の芽が手に入らないようなら、胡麻和えで・・・。

塩漬けキノコのほうは、なめこ汁感覚で豆腐といっしょに味噌汁というのはどうでしょう。ツルツル、コリコリ、なめこより食感がよくておいしいぐらいです。キノコは丸一昼夜、水に浸けて塩抜きしてからお使いください。発酵臭があるかもしれませんが、調理しているうちに消えてしまいますのでご心配なく。

セリのてんぷらはいかがでしたか?衣を極力ひかえ、かろうじてまとまるぐらいにしておくのと、高めの温度で揚げる。この二点を守っていれば、カリカリ、サクサクおいしいかき揚げができたと思います。今回、アサツキが入りますが、これもかき揚げにするとおいしいですよ。

香ばしい胡麻の香りのルッコラはサラダ用。わが家ではアボカドといっしょにフレンチドレッシングで和えるのが人気。べつにサラダにしなくても、クレソンみたいに肉料理に添えでもいいですし、ルッコラの上に白身魚の刺身を並べ、カルパッチョ風に食べるという手もあります。

来週は好子さんのカブが入ります。