衣替え

2006年11月第1週

今週の野菜セット

朝晩、ストーブに火が入るようになって、家の中はすっかり冬仕様。残るは戸外の冬支度ばかりとなりました。

寒さに弱い植物は堀り上げて鉢に移し、堀り上げられないほど大きくなってしまったものにはカバーをします。霜よけの敷きワラも、そろそろ用意しておかなくてはなりません。虫にやられやすい樹木には、幹に筵を巻きつけますが、これは虫の越冬用。そこに卵が産みつけられることも多く、春先に筵をはがして燃やすのですが、この位置を決めるのがむずかしい。

金沢の兼六公園で有名な、この樹木の冬装束は、だいたい地面から1~2メートルぐらいのところに巻かれますが、決まりがあるわけではありません。地中からの波動によって、年々その位置が変わるからです。それが完璧に把握できたら、筵の幅は30センチもあれば十分なのでしょうが、今じゃプロの植木屋でもわからないので、1メートル近い幅の筵が必要なのだそうです。

プロの植木屋にもわからないことが、わたしにわかるわけもなく、かといってめくらめっぽうというわけにもゆきません。そこで参考になるのがカマキリの卵の位置で、カマキリ先生のいう通りにしておけば、だいたい間違いない。というわけで、今年は低め。地面から60センチぐらいのところから筵を巻いてみようかと思っています。

ウサギのモモも冬支度に入ったらしく、この間、稲ワラをくわえて物置小屋に跳びこんでゆく姿を見かけました。今は物置小屋ですが、かつては隣人が彫刻をする作業場にしていたところなので、床があります。その床下に穴を掘って暮らしているようです。

雨が続くようなときなど、小屋の入り口にさつま芋やにんじんの葉を並べておくと、きれいになくなっていますしね。稲ワラと枯れ草を敷いた穴の中は、さぞかしあたたかく、居心地がいいんでしょう。鼻の頭が土で白く汚れているときは、巣穴の増築中。それをせかせかと前脚でぬぐっているところを見ると、秘密基地でも作っているんでしょうか。一度、モグラぐらいの大きさになって、モモの巣穴に行ってみたい、というのが家族の夢ですが、わたしも同感。ひと晩ぐらい、同衾してみたいものです。

衣替えも進行しているようで、夏の間、赤茶けてみすぼらしくなっていたモモの毛が、ふたたび黒々と、つややかになってきました。それを見るにつけ、わたしもそろそろ夏の衣類をかたづけなくては、と思うのですが、戸外の仕事が山積みで、なかなかそっちまで手がまわらないのが現状です。

衣替えといえば、アラレちゃんのそれは大胆で向こう見ず。夏が近くなって冬物衣料をかたづけるときには、こんな暑苦しいもの見たくもない、というわけで惜しげもなくセーター類を捨ててしまう。昨年は毛布まで捨ててしまったらしく、今ごろになって毛布がないと騒いでいたものです。

逆にこの時期になると、ノースリーブの衣類など、見ているだけで寒いといって捨てかねない人なんですね。でも、よくしたもので、お母さんがこっそり管理してくれているようで、全部が全部、ゴミ箱行きとはならないようです。そのくせ、思い入れのあるTシャツなどは伸びきって、穴があいていても捨てずに着ている・・・。なにが基準になるかわからないところが面白く、けっこう奥が深いのです。おかげでこちらは退屈知らず。

農家はこの忙しい時期に、いつどうやって衣替えをするんだろう、というのが長年の疑問でしたが、よくよく考えてみたら、好子さんには衣替えの必要などなかったのかもしれません。長袖のTシャツにジャージのパンツ、それにエプロンというのが彼女の基本スタイルで、真冬はそれに薄手のジャンパーが加わるだけ。セーターやコートを着ている姿など、もう20年もつきあっていますが、一度も見たことがありません。

そんな格好で寒くないの?寒いけど、冬ってこんなもんでしょう。逆に真夏は暑苦しそうなのですが、本人は涼しげな顔で、夏は暑いのがあたりまえだから・・・。そのかわり皮下脂肪で体温調整をしているらしく、冬には3キロぐらい、自然と体重が増えるんだそうです。理想的な身体で、しょっちゅう風邪をひいているわたしなど、うらやましいかぎり。

ただし、家族はちょっと迷惑しているみたいです。なにしろ本人が寒くないので、暖房など入れてくれない。お婆ちゃんはご飯がすむと、そそくさと自室にもどって行くし、ご主人はしかたがないのでアルコールで暖を取るんだとか。昔ながらの農家の家屋は、夏向きにできているので、冬はとても寒いのですが、暖房は囲炉裏ひとつで、しかもお嫁さんはなかなか囲炉裏のそばには座れなかったといいますから、みんな否応なしに好子さんみたいな身体になっていたんでしょう。軟弱な現代人がたまたま、当時の生き残りのような女性に出会って目を丸くしている。そんなところなのかもしれませんが、やっぱりちょっと尊敬します。衣替えがめんどうなどといっていられなくなりますね。

今週の野菜とレシピ

今週は青山さんのブロッコリーが入りました。これはもう、レシピなど不要ですね。さっと塩茹でして、お好きなようにお使いください。

好子さんのルッコラ。これはもうサラダで決まりですが、肉料理などのつけあわせにも重宝します。春菊も同様。どちらもオーブントースターでカリカリに焼いた油揚げといっしょに、醤油を加えたドレッシングで食べるとおいしいですよ。

小かぶは葉っぱのほうが立派ですが、かぶの葉には亜鉛が含まれているので無駄にしないでくださいね。セックスミネラルの異名をとる亜鉛ですが、目にもいいんです。そのままかぶといっしょに味噌汁の青みにしてもいいですし、さっと湯がいて胡麻和えにしても美味。小松菜に負けていません。

寒いときには大根のおろし鍋。濃いめにとった出しに揚げ豆腐、椎茸、葱に加えて大根おろしをたっぷり加え、味醂と醤油で味つけします。それに七味とうがらしなどかけて食べると、身体がぽかぽかして汗ばんでくるぐらい。風邪をひいたときにもおすすめです。

もう風邪が流行っているようです。わが家では週に一度、父親の往診に来る医師がよからぬものを運んでくるらしく、風邪の発生元はたいてい看護役の母親から・・・。その風邪をわたしももらって、先週半ばに熱を出してしまいましたが、熱が出たときはなにも食べずにさっさと寝ること。朝になると熱は下がっていますから、ふつうに仕事をして、帰りに岩盤浴に立ち寄ってたっぷり汗をかき、仕上げにこの大根のおろし鍋で追い打ちをかける、というのが最近の対処法です。

北海道のじゃが芋の便が遅れています。どうやら先々週の大雨の影響で、収穫が遅れていたようです。来週にはお届けできると思いますので、よろしくお願いします。

*野菜たっぷりセットの方にはからし菜が入っています。葉先がちぢれているのがそれ。からし菜は即席漬けに適していますが、そのまま塩漬けしたのでは特有のからみが出ないので、水洗いの後、さっと熱湯をかけてからお使いください。