イナゴとヨハネと山羊のユーリ

2006年9月第1週

今週の野菜セット

さわやかな残暑、という表現は変かもしれませんが、朝夕が涼しくなったので、日中の暑さもさほど気にならなくなりました。空気が乾燥しているので、蒸し暑くないんですね。

赤トンボの姿もちらほら、見かけるようになりました。大きなオニヤンマが虫を追って、家の中にまで入ってくるのもこの季節です。日が暮れて網戸が閉められ、室内に明かりがつくと、網戸に集まる虫を狙って空中静止。羽は休みなく動いているんですけどね。それが夕飯時の室内を覗くような形になります。あ、またオニヤンマが覗いてる。ストーカーだといいながら、わるい気はしないもので、オニヤンマに見られていると、こころなしかみんなお行儀がよくなるみたいです。

稲穂は重たげに頭をたれていますが、今年はイナゴが大発生。稲刈りに備えて畦草を刈っていると、おびただしい数のイナゴが飛び立つそうです。天候のせいもあって、米の収穫量は期待できませんが、この大量のイナゴ。佃煮の作り方といっしょに野菜セットに入れようか、なんて冗談が出るぐらいです。昔はこの季節になると、道路のあちこちに「イナゴ買います」という立て札が出て、大きな虫取り網をつけたバイクが畦道を走りまわっていたものですが、そういう風景も見られなくなりました。買い取られたイナゴは数日飼って糞を落とし、湯がいてから天日に干して売られていて、わたしも何度か買ったことがあります。

バプティスマのヨハネがイナゴと野密を食料にしていた、という記述が聖書にあるもので、ちょっとあこがれていたんですね。イエスも食べていました。ま、当時は中東をはじめ、世界中で食べられていたんでしょうね。今でも東南アジアの人はよく昆虫を食べますが、日本でもつい最近まで貴重な蛋白源だったんですよ。カルシウムをはじめ、ミネラルも豊富です。

フライパンでじっくり煎ってから、砂糖と醤油をまぶすという簡単な調理でしたが、香ばしくてなかなかのものでした。子供のおやつに最適でしたしね。もう長い間作っていませんが、今年あたり、またやってみようかなと思っています。

先週末、この通信欄にもたびたび登場していた山羊のユーリが突然、動かなくなりました。12歳を目前にしていますから、ついに来るべきときが来た、という感じで、覚悟もしていたのですが、それが現実になるとやはりショックで、ついうろたえてしまいました。だって、きのうまで元気に歩きまわっていたんですからね。

数年前から白内障、去年あたりから耳も遠くなり、腰の肉が落ちはじめていましたが、食欲は変わりませんでした。1カ月ぐらい前から腰の位置が低くなり、脚をひきずるようになったので、ビワの微粉末を与えていたところ、痛みが取れたのか、かなり動きやすそうになっていたのです。

この調子なら、もう1年ぐらいなんとかなるかな、と思っていた矢先のこと。それが朝見たら、横になって動かなくなっていたのです。名前を呼ぶと、耳だけ動かすような状態で、首をもたげることもできません。そばへ行くと、ウサギのモモがぴったりユーリの腹部に身を寄せていました。ひと晩中そうしていたんでしょうか、モモの体の下の土があんなわずかな体重で沈み、小さなくぼみになっていました。ユーリが尋常ではないのを察し、添い寝していたんでしょうか。

モモと交代するような形でユーリにつき添いました。体をさすっていると、気持ちがいいのか、うたたねします。ときどき、水をふくませた脱脂綿で口の中をうるおしてやりますが、苦痛がまったく見られない。それが唯一の救いで、これもビワ種のおかげでしょうか。いくら老衰死といっても、死にいたるまでは多少の不調が見られるもので、なかなか眠るように、とは行かないものです。ユーリの昏睡状態は今日で3 日目。あれだけ身体が大きいので、呼吸停止までは今すこし時間がかかるでしょうが、みなさんのお手元にこれが届くころ、お父さんのべエのところへ行っているかもしれません。

*今年のビワ種微粉末は製怯を変え、これまでよりさらに粒子が細かくなっています。したがって塗布しやすく、飲んだときも吸収しやすくなっています。今月中には入荷できると思いますので、今しばらくお待ちください。

今週の野菜とレシピ

今週は高橋梅子さんの梅干しが入る予定でしたが、さつま芋畑の柵をイノシシに壊され、その対応に追われて梅干しをパック詰めにする時間がなかったそうです。もともと芋畑に柵など必要なかったのですが、近年イノシシの数が増え、被害も増大。やむなく柵をめぐらせたら、今度はそれを破られたというわけです。

イノシシは芋畑にかぎらず、収穫を目前にした田圃にも出没するようで、日が暮れるとシシ脅しの空砲が鳴り響き、それが山を越えてわが家のほうまで聞こえてきます。あちこちに仕掛けられているらしく、それが集まると1分間に数発の銃声となり、知らない人は何事かと驚くようです。知っていても、ひと晩中銃声が鳴り響いているという状況は、あまり気持ちのいいものではありません。わが家の周辺のように雑木林が残っていると、イノシシも食料に困るようなことはないんでしょうけどね。

で、今週は梅干しに代わって生落花生。海水ぐらいの濃いめの塩水で殻ごと茹で、そのまま冷ますと中まで味がよくしみます。水切りして冷蔵すると日持ちするので、お酒のつまみに...。茹で落花生が苦手という方は、150度ぐらいの低温のオーブンでおよそ30分。じっくり加熱すると、甘みのある煎り落花生になります。

今週も葉しょうがが入ります。小粒のものは味噌をつけてそのまま。根元のしっかりしたものは薬味として...。焼き茄子がおいしい季節になりましたので、新しょうがをたっぷりかけてどうぞ。

ひさびさのネギがうれしいですね。モロへイアやオクラといった夏野菜がしだいに生彩を欠いてゆく中、着々と秋の味が育っています。小松菜、京菜は半月後、キャベツも今月末にはお目見えできそうです。好子さんの畑では、大根と白菜の種まきが終わったところです。