緑が減ると子供も...

2006年9月第3週

今週の野菜セット

先週末は晴天に恵まれて、あちらでもこちらでも運動会。この事務局わきの小学校もにぎやかでした。

益子では、これが最後の運動会というところが二校もあり、OBがたくさん駆けつけたという話です。うちの子供たちが通っていた分校もそのひとつ。これも少子化の影響でしようね。今年いっぱいで廃校になり、町中の小学校と併合されるんです。

子供がどんどんいなくなる。さびしい話ですが、それだけではありません。先行きを考えると怖いことです。

その昔、わたしが20代のころは東西の冷戦時代。女友達のほとんどが、こんな時代に子供を産もうなんて気にはなれない、という意見で、わたしもそんな風に思っていたのです。ミサイルの心配はともかくとして、公害はひどくなる一方。受験戦争などというのも、依然として続いていましたしね。ところが、それから間もなく妊娠。こんな時代に、と思いつつ、お腹はどんどん大きくなります。ええい、案ずるより産むがやすし、というわけで長男が誕生したのですが、赤ん坊を抱いたとたん、母親というのは楽天家になるんですね。矢でも鉄砲でももって来い、わたしがついてる、みたいな...。でも、そんな根拠のない自信は不安と裏腹だったらしく、変な夢ばかり見ていました。子供を抱いて買い物中にデパートが爆破され、エレベーターが動かない。階段も途中で寸断されているところに火が迫っているとか、スーパーで夕飯の買い物をしてもどってきたら、なぜか戒厳令が発令されていて、機動隊が道の両側にずらり。家はすぐそこにあって、子供の泣き声が聞こえているのに近づけないとか、今にして思えば、妄想癖にちかいものがある。育児ノイローゼになりかけていたのかもしれません。

そんなあるとき子供を寝かしつけ、ほっとしたとたん、家が揺れはじめました。家の前を、巨大なものが通過しているのです。とっさに戦車を思い浮かべましたが、出てみたら工事用のアスファルト・ミキサー。それでもしばらくドキドキしていて、ドキドキしながら、ああ、母親というのは有史以来、みんなよりによってこんな時代に、と思いながら妊娠し、子供を育ててきたんだな、と思ったのです。そう思ったとたん、わだかまっていたものがすーっと抜けたんですね。

時はベトナム戦争時代。今、世界が当時よりよくなっているかといえば、みなさんもご存じのとおり。国内情勢もよろしくありません。公害がいくらかましになったとはいえ、犯罪は増加していて、ただでさえ少ない子供が殺される。虐待も報じられる。今のお母さんは当時よりもっと不安にさらされているのかもしれません。

でもね、過敏になることはないのです。子供を育てるのになんの不安もない理想的な環境など、これまで存在したことがなかったし、これからも存在しないだろうからです。すくなくとも外的な環境に関しては...。問題は内的環境で、親しだいで家庭はいかようにも変えられます。とくに幼児にとっては母親が世界みたいなものですから、お母さんの気の持ちかたですべてが変わる。子供を創造したように、あなたが環境を創造できるのです。

わたしもあのまま、こんな時代に、こんな環境でなどと思いながらハラハラ、ドキドキ子育てを続けていたら、かなり神経質な子供になっていたでしようね。親子してタガが外れてしまったおかげで、バカかと思うほど鷹揚なオトナになってくれましたけど...。

マスコミもあまり信じないことです。ショッキングで残忍なニュースほど注目されて視聴率が上がるので、こぞってそういう面ばかり強調されているフシがあるからです。保険屋とセキュリティ関係の会社には好都合だから、経済効果もありますしね。そのくせスポンサーや政権に不利なニュースは流さない。そんなものにこちらの気分を左右されたくありませんものね。

というわけで安心して子育てしてください。子供をかわいいと思う気持ちさえあれば、あなたは母親として百点満点。子育ては親を育てることでもありますから、あなた自身に成長する意思があれば、子供もちゃんと成長します。子供をまるごと、欠点もふくめて認めてやることができたら、自分自身が無意識に封印してしまった認めたくない自分。自分が大嫌いな人に投影している自分自身の影の部分をも、すこしずつ受け入れることができるようになり、大きくなってゆけるのです。

これができるのは自分の子供だけ。凡人にはなかなか、他人のいやな部分を自分自身と認めることはできませんからね。子供のそれをヒステリックに拒否してしまったら、親もまた、そこで成長を止めてしまいます。そういう意味では、昨今増えている子供を愛せない親たちはかわいそう。かれらは自分自身を愛せないばかりか、憎んでさえいるのですから。しかも自分自身と和解する唯一のチャンスまで投げてしまっている...。

子供の減少と、世界的な緑の減少はどこか、わたしたちの根っこの部分で繋がっているような気がします。子供を殺す母親も、他人事のように眉をひそめていますけど、わたしたちの無意識の闇にひそむ妖怪のひとりなのかもしれません。そんな妖怪こそ責め立てるのでなく、慰撫し、理解に努めてあげないと、抑圧された妖怪たちはますます跳雇する。それを無害化できるのは、わたしたちの包容力しかないと思うのですが、どうでしよう。

今週の野菜とレシピ

今週は好子さんの小松菜が入りますが、これは8月中旬に種を蒔いたものなので、数量が十分ではありません。大半が虫に食われてしまうからです。来週の分からは8月後半に蒔いたものなので、問題はありません。たった1週間ぐらいのちがいで、虫に食われたり食われなかったり、不思議な感じもするのですが、大根など、早く収穫したからといって早く種を蒔くと、結局虫に食われて蒔きなおすことになるのです。今回の早蒔きも、みなさんに少しでも早く小松菜を届けたいという気持ちがあったからですが、適期の番人、虫たちの目はごまかせなかったというわけです。

というわけで、小松菜が足りないところはオクラで補う形になりました。小松菜も葉に穴があるかもしれませんが、ひさびさの青菜の味噌汁。秋の香りをお楽しみください。

さつま芋も登場しました。ようやくイノシシ騒ぎがおさまったようですが、さつまの蔓というのは切られたところから発根しますから、イノシシに掘りかえされても、また蔓が伸び、覆われてしまうので、なかなか被害に気づかないことが多いそうです。掘ってみて、はじめてイモがなくなっているのがわかる。農家泣かせなんだそうです。

堀りたてのさつま芋は水分が多く、甘みがわかりにくいので、てんぷらがおすすめ。スティックに切って素揚げ。二度揚げしてカリッとしたところに塩をふって、おやつにするという手もあります。

今年の梅干しもようやくパック詰めされて来ました。夏の疲れはこれで癒してくださいね。

四国からはスダチが届いています。今が旬のサンマにしぼりかけて...。キノコ類もそろそろおいしくなってきますから、スダチで味と香りをひき立ててください。袋のまま、冷蔵庫の野菜ボックスに入れておくと長持ちします。間引きニンジン。再来週あたりにはこれが大きくなって再登場します。来週は新ごぼう。とくに天候に問題がなければ、好子さんのキャベツも入る予定です。