季節の節目

2006年2月第4週

急に4月下旬の気候になったかと思うと、寒のもどりがあったりして、身体が不調を来たしやすい時期。この冬、インフルエンザの魔の手を逃れることができた人も、案外、今ごろになって風邪をひいたりするものです。寒い日より、逆にあたたかい日のほうが要注意。冬支度のまま動いていると汗ばんできますからね。わたしもそれで何度か、ミニ風邪をひいています。

でも、気の早い山羊はもう冬毛を落としはじめました。ブラシをかけると、土埃で汚れた下毛が面白いほど抜け落ちます。そしてピカピカの白い山羊になる。ウサギのモモはブラシをいやがるので、ときどき尻尾のあたりで抜け毛がふわふわと塊になっているのですが、犬や猫にくらべて草食動物の衣替えが格段に早いのは、それだけ春を待つ気持ちが強いからかもしれません。わたしも眠たさだけはもう春なんですけどね。

室内に雛人形が出てくると、かすかに樟脳が匂い立ち、これもまた春の香りといえなくもありません。桃の枝を今から室内に入れておくと、ちょうどそのころ、蕾が開きはじめます。

見かけによらず、節句をきちんと祝い、豆まきも欠かさずやっているのがアラレちゃんの家。わたしもそれを倣って、節分にヒイラギとイワシの頭を飾ったり、押入れに眠っていたお雛さまを出してきたり・・・。季節の節目ごとにそれを祝うのは、ちょっと手はかかるかもしれないけど、自分の中にも節目ができて、順調に新しい季節を迎えられるのかもしれない、と思うようになりました。

めぐる季節を漫然とやり過ごすのと、ささやかな支度をしてお迎えするのとでは、大ちがいですからね。やれ天候不順だの、季節感がなくなっただのいわれていますけど、人の側にも問題があったのかもしれません。新暦で節句を祝っても、形骸化した祭りにすぎないではないか、という意見もあって、それはそれでごもっともなのですが、ならば両方祝えばいいじゃないか。というわけで、わが家では初詣は2回、元旦と立春に出向いていますし、お雛さまも関西流。4月3日にかたづけることにしています。

あまり有名ではありませんが、栃木県の郷土料理「しもつかれ」は初午に作られます。正月に残った塩引きの頭をやわらかくなるまでことこと煮て、そこへ鬼おろしと呼ばれる竹製のおろし金でおろした大根とにんじんを大量に加えます。これは冬の食料として埋めておいたものですが、立春を過ぎると傷みやすくなる。それで一気に処分するわけです。そのほかに節分の残りのいり豆、油揚げ、酒かすが入りますが、残りものでないものといえば油揚げだけ。生活の知恵といいますか、みごとに無駄のないヘルシーな郷土料理です。

これを昔はお赤飯といっしょに神社に奉納し、豊作を祈願したそうですが、今でも午の日にはこれを作る家庭が多く、わたしたちも農家のみなさんから「しもつかれ」とお赤飯をいただきます。家庭によってみんな味がちがいますが、歯にしみるように冷たくなった「しもつかれ」を、あたたかいお赤飯にのせて食べるのが本式なのだそうで、7軒分の「しもつかれ」を食べると、1年間無病息災ともいわれています。

問題は見てくれがわるいこと。終電車の床の上で見たことがあるとか、いやいや駅の自販機のわきだとか、まあ、いってることはおなじなのですが、そういう外見なので、わたしもはじめて見たときは食指が動かなかったのです。でも、最近では心待ちに・・・。地元でも、若い人には人気がないようですが、どういうわけか40を過ぎるとこれがおいしくなるといいます。栃木県人でないわたしが好きになるぐらいですから、日本人のDNAが記憶している味なのかもしれません。

そういう郷土料理がほかにもたくさんあるはずで、そういうものを味わってみたいという願望が年々強くなる。これは年をとったということなんでしょうかねえ。

今週の野菜とレシピ

お待ちかね、大根が入ります。露地の大根が今年の寒さで、地面にちかいところが凍りつき、冷凍と解凍が繰り返されるうち、中がスカスカになってしまったので、福田さんが急遽、ハウスに種を蒔いてくれました。それがようやく大きくなって、出荷ができるようになったのですが、露地大根にくらべてやわらかいので、煮物だけでなく、短冊や千六本に切ってサラダでも召しあがれます。

身体が芯からあたたまるネギ味噌を2種。まず、簡単なほうはネギを小口切りにして、生のまま味噌で和えるだけ。簡単ですが、時間がたつとネギの水分が出てべとべとになりますので、少量ずつ作ってください。

もう一方もネギは小口切り。こちらのほうは多めに用意してくださいね。生姜ひとかけとひき肉も用意します。フライパンに胡麻油を熱し、みじん切りにした生姜とひき肉をよく炒め、豆板醤も加えて香りを出します。最後にネギを加えたら火を弱め、味噌も加えて混ぜ合わせ、火を止めてから胡麻油少々をたらしたら出来上がり。ネギは火を通しすぎると甘くなるので、半生ぐらいにしておくのがコツ。どちらも身体がぽかぽかしてきます。

春はもうすぐ、とはいえしばらく寒さも続きそうです。風邪などお召しになりませんように・・・。