鳥の声

2006年3月第5週

今週の野菜セット

風の強い日が続きました。日差しは春なのに、風はまだ冷たく、冬の名残を残しています。この冬、あれだけ寒波が強く、大雪までもたらしたのに、まだ未練があるんでしょうか。

でも、冬がどんなに居座っていても、じりじりと太陽が活動時間を延ばしながら、それを排除にかかります。夕刻の明るさが風の冷たさを忘れさせ、手もとが見えなくなるまでヨモギやツクシ、セリを摘み、冷えきった身体で風呂場へ直行。明るいからといって、昼間のつもりでいると風邪をひきかねない時期でもあります。みなさんも夜桜見物には、あたたかい服装でお出かけくださいね。

こちら、桜はまだ蕾もかたいままですが、どこもかしこも梅が満開。それにつられるようにウグイスが鳴き出しました。

でも、幼鳥の鳴き方はまだぎこちなく、なかなかうまくホーホケキョとはゆきません。畑で草などむしりながら、今度はうまく鳴けるかなと耳をすまし、やっぱりダメかとずっこける。そんなことの繰り返し。ウグイス笛を持って山に入り、ウグイスに鳴きかたを教えている、ヒマで親切なおじさんをテレビで見たことがありますが、そんなことをしなくても、幼鳥たちは自然とうまくなってゆくみたいです。

毎年、このあたりにやって来るウグイスに、ホーホトトケキョと鳴く個体がいて、わたしたちはわー、訛ってる、訛ってると喜んでいるのですが、もしかしたらあの親切なおじさんに出会っていたら、そんな鳴きかたにはならなかったのかもしれません。でも、たいていのウグイスは二ヶ月もすると、上手に鳴けるようになり、その課程を楽しむのも一興です。もどかしいけど可愛いらしい。訛っているウグイスも、姿が見えなくても、ああ、今年もあのウグイスが来てるな、とわかっていいものですよ。

ウグイスにかぎらず、春は鳥の声がにぎやかです。早朝、キョーンキョーンと鳴きたてるのはオスのキジ。キジは山の中にいるものですが、この事務局の近くの空き地にもいて、ときどき姿を見かけます。ご用とお急ぎのときは、飛ぶより走るほうが早いらしく、つがいがものすごいスピードで自動車道路を駆け抜けてゆくのを見たことがあります。里近くにキジがいる年は米が取れない、という伝承もここでは通用しないみたいです。

キジはハーレムを作るので、オスはとても攻撃的です。うちの犬など、散歩中、何度追いかけられたことやら。わたしが車で通りかかっても、なかなか通してもらえないことがあるぐらい。でも、このあたりは個体数が少ないせいか、わたしが見かけるキジはみんな一夫一婦制で、つつましい暮らしをしているようです。

コジュケイも朝からにぎやか。チョットコイ、チョットコイと山の中を歩いていても、絶えずお誘いの声がかかります。もちろん、犬など連れた人間には近寄ってほしくないんでしょうけどね。

一度、ほんとうに出くわしてしまったことがあって、それも運悪く、傷を負ったコジュケイ。片方の翼をひきずるように移動していて、あわてて犬を制しましたが、時すでに遅しで、犬はそちらに走り寄ります。山の中では歩きにくいのでリードを外しているんですね。犬がまさに襲いかかろうとした瞬間、コジュケイは間一髪のところで飛び立ち、えっ、怪我をしてたんじゃなかったの?

犬もポカンとしていましたが、すぐに気をとりなおしたらしく、今度はあたりを嗅ぎまわりはじめました。ずいぶん熱心だなあと思ってよく見てみたら、すこし離れたところにコジュケイの巣があって、小さな卵が並んでいました。ウズラの卵をひとまわり大きくしたぐらい。これを守るため、親鳥が擬態していたのです。わざと怪我をしているふりをして、外敵の注意を自分に向けて子を守る。噂には聞いていましたが、実際に見るのははじめてでした。。

コジュケイは漢字にすると子授鶏。ヒナの面倒見がとてもいいので、そういう字があてがわれたそうです。初夏になると、子供を連れたコジュケイに出会うことがありますが、ヒナが一列に並んで親鳥が歩いたところを正確になぞるので、人の気配に驚いて逃げるときなど、まるで数珠玉がひきずられて行くよう・・・。ヘビの動きにも似ています。それがまた愛らしいので、コジュケイには遭遇したい。でも、相手の身になったら遇わないないほうがいいんだろうな、などと思いながら、今日も山の中を歩いてきました。

今週の野菜とレシピ

お待たせしました。遅れていた田ゼリが入ります。

一物全食という言葉があります。野菜なら葉っぱも実だけでなく、根っこまで・・・肉や魚の場合、文字通り頭のてっぺんから尻尾の先まで、丸ごと食べるのがよし、という食養の教えです。が、実際にはなかなかむずかしい。益子GEFでも農家の手間を省くため、野菜の根っこは切り落とてしまいます。ましてや市販の野菜となると・・・。

それが実現できるのが、この田ゼリ。根も葉も食べますが、その中間の節目となる部分。そこは泥がつきやすく、口の中でごろごろしますので、取り除くか、大きなものは包丁をいれるかしてください。かき揚げにするのがいちばんですが、衣を少なめにすること。それから油の中に落としたとき、箸で広げてかたまりにならないようにするのが、カリッ、パリッと仕上げるコツです。塩でも、天つゆでも、お好きなほうで・・・。

ちなみにパセリもかき揚げがおいしいんですよ。田ゼリもパセリも水洗い後、きれいに水気をとったつもりでも、油がはねる場合があります。クッキングペーパーで包みこんでから、小麦粉を軽くからめておくと油がはねず、仕上がりもよくなります。パセリも衣はできるだけ少なめに、かろうじてつながるぐらいの量にしてくださいね。

もし手に入ったら、ヨモギやタンポポもいっしょに揚げてみてください。それが無理なら春菊で・・・。そんなに揚げてどうするの?いいんです。たくさん作っておくと、翌日またそれを楽しむことができるからです。天玉丼。天つゆに残ったかき揚げを入れ、煮たってきたら溶き卵でとじるだけなんですけど、これが前日のてんぷらに勝るとも劣らぬおいしさ。ぜひ一度、お試しください。

かき菜が入りました。これはあぶら菜の仲間ですが、丸ごと収穫するのではなく、花芽をつけた茎だけをかき取るところからそういう名前がついています。あぶら菜はとにかく種類が多く、大根もかぶも小松菜も元をただせばアブラナ科。この花は何科?と聞かれて、バラ科と答えておけばだいたいまちがいがないように、野菜の大半があぶら菜の仲間です。瀬戸内海に点在する無人島は多くが種苗会社の採種場になっていますが、まわりが海という孤立した場所でさえ、あぶら菜はいろんなものが混入しやすく、単一種の栽培がむずかしいといわれています。

ま、それだけ力が強く、野菜の王者といってもいいのかもしれません。わたしたちは自家採種していますので、なおさらのこと、京菜のようなのもあれば、小松菜のようなもの、いろんな形の葉っぱが混じります。今回入るかき菜がいちばん、みなさんの頭の中にあるあぶら菜のイメージに近いかもしれませんね。塩と油少々を落として湯がき、少し早めに取り出してまな板に広げてください。そうすると味が逃げにくく、色つやもきれいに上がります。それを芥子醤油和えにしたり、胡麻で和えたり・・・。油炒めもおいしいですよ。