薪ストーブ

2006年2月第3週

ぽかぽかと日差しのあたたかい日が続いたからでしょうか。冬枯れの庭先で、オオイヌノフグリが小さな青い花をつけているのを発見。あらためてあたりを見まわすと、畑の隅でもホトケノザが紫色の花の苦を持っていました。

にんにくの芽もこころなしか青みをまして、つんつんと小さな剣を天に向け、あぶら菜はしだいに広がり、畑の土を隠してゆきます。ときおり柵の中から山羊がそれを凝視して、早く大きくなれといっているみたい。ついこの間まで青い粒々だったクローバーが、かろうじて三つ葉の体をなしてきたのを、ウサギのモモが食べています。食料が乏しいときは、毎朝、裏口でわたしが出てくるのを待っていたのに、ここ数日姿を見かけないと思ったら、そういうことだったんですね。現金なやつ。

ちなみにモモの大好物はさつま芋。ニンジンとりんごとさつま芋を並べておくと、いちばんになくなるのが芋で、次がりんご。ニンジンだけが手つかずのまま、干からびていくのです。だれだ、ウサギはニンジンが好きだなんてデマを流すのは・・・。馬もそうみたいですよ。馬がニンジン好きだと思っているのは、イギリス人と日本人だけ、という話は聞いたことがありますが、ウサギもそうだったとはね。山羊のユーリだけ、ニンジンも葉っばも大好きです。

この冬は寒さが厳しく、薪の減りが早かったとみえて、ガレージの内側に日が差すのが例年より早くなりました。秋口に山積みになっていた薪がしだいに減って、だんだん駐車スペースが広く、明るくなってくる。この日時計の進み具合だと、もう3月の下旬ちかくになるのですが、まだまだストーブのお世話になる日が続きそう。来年の薪は山のようにありますが、すぐに使える乾燥した薪がなく、あたふたしているところです。薪ストーブを使うようになって10年ぐらいになりますが、本格的に薪に頼るようになったのは7年前。そのときストーブを運んできたおじさんが、笑いながらこういいました。薪ストーブを使っていると、薪が趣味になるんだよね。薪にうんちくを傾けるようになるだけでなく、やれ薪割りだ、薪集めだと、すべてが薪中心になってくる。へえーっと笑いながら他人事のように聞いていましたが、ほんとにその通り。薪中心の生活になりました。薪が山と積まれていると、リッチな気分になる反面、乏しくなると身も心も寒くなって、もし泥棒が入ってきても薪を取られるのがいちばんショックみたいな状況ですから、はた目には滑稽に映るかもしれません。

でもね、考えようによってはこれが季節時計のようなもので、ふわふわと漂いがちな生活の重りにもなるのです。秋が深まり、山羊の食糧が不足しはじめると、タイミングよく植木屋さんが常緑樹の勢定をはじめ、樵(きこり)も山の中だけでなく、庭先や道路ぎわをふさいでいる大木を切り倒しにかかる。そうするとこちらはお茶菓子か一升瓶を片手に出向き、山羊の食糧と翌年の薪をセットでいただいてくるという寸法。薪になるのは堅木ですから、針葉樹よりはるかに重いのに、建材は運べなくてもそれは運べるという、不思議な現象も生じます。

春になると乾燥中の薪のすきまに、冬眠から目ざめたへビが入りこんで、雨よけのトタン板の下で暖をとり、梅雨どきにはまたその安全地帯にもどってきて、今度は脱皮。秋が深まり、冬眠が近くなっても、へビはそこに帰ってきますから、加工前の薪の山はなくてはならないものになっています。へビが姿を消したところで、山を崩して薪作り。そうしてガレージに積み上げられた薪の山に、今度はカメムシなど、越冬中の昆虫が住みつきますから、これはもう生態系の一部といってもいいでしょう。

だから春になる前に薪がなくなるということは、暖房に支障が出るという個人的な問題にとどまらず、生態系の破壊にもつながりかねないんですね。これはなんとかしなくては・・・。というわけで、7年目にしてはじめて薪を購入。電話帳で業者を探しまわることになりました。いるんですよ。田舎には薪屋という職業の人が・・・。とくに益子は焼き物の町ですから、薪窯に使う赤松から雑木まで、さまざまな薪をあつかっています。ところが時期がわるかったんですね。春も近くなってくると、ストープ用の薪は次の冬の準備をしていて、すぐに使えるものは残りわずかになっていたんです。わずかの薪で細々と春を待つ。でもね、薪ストーブのいいところは、もちろんそれ自体のあたたかさもありますが、木の運搬から薪割りまで、準備の段階から全身運動で体がぼかぽかあたたまるという点です。それに合わせて体調を整えますから、元気の源にもなっているのかもしれませんね。

今週の野菜とレシピ

今週はサニーレタスが入ります。これはドレッシングをかけると、ペタッとして食感がわるくなるので、サラダにするときは春雨と合わせるのがコツ。薄焼き卵とワカメを春雨といっしょに中華風ドレッシングで和え、細かくちぎったサニーレタスを加えます。春雨が出てきたついでにもう一品。ほぐしたシメジを胡麻油で妙め、そこにお湯でもどした春雨を加えて妙め、塩と胡根で調味します。最後にサニーレタスを入れて、香りづけに醤油をたらします。ご飯のおかずにするときは醤油を多めに、あたたかいサラダ感覚ならレモン半個を絞りかけて・・・。レモンをたらすと、シメジがぐーんとおいしくなります。

シメジを少し残しておいてバターで妙め、塩、胡根で濃いめに調味。それを刻んだ春菊といっしょにとき卵に混ぜ、オムレツを作るとひと足早い春の香りが楽しめます。また、受験シーズンでもありますから、夜食に春菊のお好み焼きというのはどうでしょう。キャべツのかわりに春菊を使うのですが、春菊には頭をすっきりさせる働きがあるうえ、

お腹にももたれません。もちろん、受験生以外の人が食べてもOK。わが家ではもう定番になっていまして、お好み焼きといったら春菊以外になにがある?といった感じになっています。

来週は大根が入る予定ですが、それも今週の気温しだい。あたたかい日が続いてくれるといいですね。